要衝「南シナ海」…領有権争いと緊張の歴史[2015/10/28 15:22]

 南沙諸島、英語名でスプラトリー諸島の領有権問題です。南沙諸島がある南シナ海は1938年に日本が領有を宣言しましたが、第2次世界大戦後の1947年、中国政府は南シナ海の島が中国の領域だとする地図を作成。1953年には、この領域を新たに9つの点線で示した地図を作ったことから「九段線」、またベトナムなどでは、その見た目から中国の「赤い舌」とも呼ばれています。現在は中国とフィリピン、ベトナムなどが領有権を争っていますが、きっかけとなったのが1970年代に発見された海底油田でした。以来、資源や漁業権の確保を巡って周辺各国が対立。2012年には、中国が南沙諸島などを市に格上げして実効支配を強化。去年5月には、中国船がベトナム船と激しく衝突するなど、その行動はエスカレートしています。
 一方、アメリカが南シナ海の問題に強い関心を示す理由の一つが、この地域が重要なシーレーン(海上輸送路)だからです。中東の石油やガスなどのエネルギー資源をはじめ、世界の貿易の3割の貨物が南シナ海を通過しているといわれています。さらに、この地域は軍事的にも極めて重要で、アメリカは警戒を強めています。
 では、なぜ中国は、あえて緊張を高めるような行動に出ているのでしょうか。アジア情勢に詳しい富坂聰さんは「フィリピンなどに比べ、油田開発が遅れているとした国内世論向けのアピールという側面とアジアで影響力を保持しようとするアメリカへの牽制(けんせい)がある」と指摘。また、今後、アメリカ艦艇の航行が常態化すれば最悪の事態も懸念されるとしています。
 拓殖大学・富坂聰教授:「民意という移ろいやすいものが要素として入ってくるとおかしなことに。一番最悪なのは、ああいうやり方が常態化してハプニングが起きること。最前線で戦力を付き合わせるわけですから」

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