解決至らぬ“点滴殺人” 元看護師からの手紙[2017/04/08 17:39]
「思い出すと精神を抉られる思い」。
「事件が解決してほしいという気持ちは強くあります」。
これは、大口病院に勤めていた看護師の女性が、記者に宛てた手紙だ。
点滴による殺人事件の発覚以前に、院内で起こっていた“トラブル”が書かれている。
「エプロン切り裂き」。「放っておくとエスカレートするのでは」。
ここで看護師の女性は、自身が巻き込まれたことへの恐怖、病院に対する疑問、そして、より大きなトラブルになることを心配していた。
去年9月、横浜市の大口病院で、入院患者である西川惣蔵さんと八巻信雄さんが点滴に異物を混入され殺害された。2人が入院していたのは、病院の4階だった。
その4階では、事件が発覚する前に異常ともいえる事態が起きていた。7月から9月にかけ48人の入院患者が亡くなっていることが分かったのだ。
実は4階では、それ以前にもトラブルが起きていた。
当時、病院で働いていた看護師は、そうしたトラブルに巻き込まれたという。
病院で初めにトラブルが確認されたのは去年4月。4階のナースステーションに掛けてあった複数の看護師のエプロンが切り裂かれているのが見つかった。その後も、6月にはカルテの一部が抜き取れられ、8月には看護師のペットボトルに異物が混入されていたという。
これらのトラブルは全て病院の4階で起こっていた。
看護師は、トラブルがこれ以上に大きくなることを心配していた。病院からは『患者さんの安全第一で動く』という答えが返ってきたというが、エプロン切り裂きなど一連のトラブルの犯人が未だに分からないままであるため、病院の対応には疑問を感じていたという。
「私が聞き取りを受けた時には、『疑っているわけじゃないけど、1人の空白時間があったのはあなたくらいしか思い当たらないんだよね』と言われ、被害を受けたことだけでもショックなのに、犯人扱いまでされるのかと理不尽だと感じました。」「その後の説明も注意喚起もなく時間だけが経過してなあなあのままに終わりました。」
9月には横浜市からも、これらのトラブルについて警察に相談するよう大口病院側に話をしたという。
しかし、病院側の認識は違った。「去年9月に市の立入検査があり、その結果の通知が文書でありましたが、警察に相談するようにとの指摘事項の記載はなく、それ以外の機会にも市からそのような指摘を受けたことはないと認識しております」とコメント。
さらに、エプロンが切り裂かれた後の院内の対応については、「犯人は正直に名乗り出るようにと伝え、職員からの聴き取りを実施しました。また、これまでナースステーションにかけていたエプロンを各人のカギのかかるロッカーにて管理するよう指導しました」と。
結局、これらのトラブルが、病院から警察に相談されることはなかった。その後、点滴による殺人事件が起きた。
この看護師の女性は、西川さんや八巻さんが亡くなった時には既に辞める手続きをして実家に戻っていたという。
ペットボトルの異物混入など、数々のトラブルと殺人事件の関連は分かっておらず、警察は、点滴に異物を混入した人物の捜査を進めているが犯人の逮捕には至っていない。