被災地の非行少年が再び増加 更生支援に新たな課題[2017/04/29 16:22]

東日本大震災の被災地で、非行少年の立ち直りを支援してきた国の施設が廃止され、新たに民間主体の施設がオープンした。復興が進む一方で課題も見えてきている。

宮城県・石巻市。津波により甚大な被害を受けた町で、この春、静かにその役目を終えた施設がある。
震災後、国が臨時で設置した更生保護拠点は、被災地での非行少年らの立ち直りを支える活動において、中心的な役割を果たしてきた。

片付けのため、段ボールが積まれた部屋で感慨深げに語る男性。保護司の村上優治さん。震災前から、地域のボランティアである保護司として、非行少年らの立ち直りをサポートしてきた。
しかし、あの日の津波は、村上さんら“立ち直りを支える側の人たち”にも容赦なく襲い、その活動は窮地に立たされた。村上さんが親から継いだ布団店は、近くの自宅とともに津波で流された。店の周りだけでも、20人近くが犠牲になったという。
自らの生活すら困難な状況の中でも、これまで、途絶えることなく保護司活動を続けてきた。村上さんの強い思いを環境面で支えたのが、国の臨時施設だった。

非行少年らと定期的に会い、生活の指導などを行う“面接”は、保護司にとって重要な活動の一つで、震災までは主に自宅で行われていた。自宅を失った保護司も多い中、更生保護拠点は“面接”の場所として活用されるなど、その活動を支えてきた。
しかし、もともと仮の施設であるため、年度末となる先月いっぱいで廃止となった。今後、活動の拠点は、新たに設けられた民間主体のサポートセンターに移ることになる。

震災から6年が経ち、被災地が日常の姿を取り戻しつつある一方で、課題も見えてきている。
人口の減少などにより、少年事件の数は一時期、半分以下になっていたが、再び震災前と同じ水準まで増加した年もある。地域のコミュニティーが崩壊し、多くの学校が統廃合されたことなどが、ストレスや、精神面での不安定さにつながっているとみられている。
「震災で色々な地域の人が来ていただいた。それで物凄く助けてもらった。物資面でも、精神面でも。自分も助けられているんだなと、震災で特に思った。だから私はこの仕事はできる限り続けていきたい」と語り、村上さんはこの先も保護司として、少年らに寄り添っていくことを決めている。

こちらも読まれています