世界初 「子宮移植」でサル妊娠 実験に独占密着(2018/08/09 21:00)

 体外受精をはじめとする不妊治療や代理出産などの技術が進むなか、実験段階のある最新の技術に注目しました。それは「子宮移植」です。今年5月、世界で初めて日本人医師ら研究グループが子宮移植を受けたサルの妊娠に成功しました。アベマニュースのカメラはその実験に独占密着しました。

 26歳のAさんは今から10年ほど前、自分の体の異変に気が付きました。
 ロキタンスキー症候群・Aさん:「中学生の時に生理がなくて、子宮がない状態だと分かったのは17歳の時に病院受診した時に分かりました」
 17歳のAさんに宣告されたのは生まれつき子宮がないという事実でした。病名はロキタンスキー症候群。先天的に子宮とちつの全部、もしくは一部が欠けた状態で生まれてくる疾患で女児の4000人から5000人に一人の割合で起きるといわれています。
 ロキタンスキー症候群・Aさん:「診断名として聞くと、頭は真っ白になっちゃうんですけど、自分よりも母親の顔見るのがつらかったかな。ごめんなさい」
 「子宮がない」、娘の病気を知った母親は涙を流してごめんねと謝ったといいます。日本に子宮を原因とする不妊患者は20代から30代だけでも約6万人から7万人いるといわれています。代理出産が認められていない日本では、Aさんは自分の子どもを持てないのが現状です。そんななか、驚くべき研究が。子宮が原因で妊娠することができない人に大きな可能性を秘めている動物実験が行われています。それが子宮移植です。今、サルからサルに子宮を移植する手術が行われています。慶応大学の木須伊織医師が率いる研究グループは、2009年から子宮移植の動物実験を開始しました。実験の目的は人への応用。人で行う子宮移植を想定して手術が進められていきます。2匹のサルへの手術は同時進行で行われています。まず、ドナーとなるサルから子宮が摘出され、レシピエントとなるサルへと子宮が移植されます。サルの体重は3キロ前後。成人女性の20分の1ほどしかありません。その分、子宮も小さく、手術は人の場合よりも難しいと考えられています。摘出された子宮は速やかに移植されます。動物での子宮移植の技術は世界でも群を抜いていて、手術の様子を見ようと各国から医師が見学に訪れていました。
 韓国、ソウ・ミンジョン医師:「韓国でもいずれ、人での子宮移植をやりたいと思っています。この動物実験にとても深い感銘を受けています」
 中国・劉宇医師:「手術手技はとても繊細で出血もほとんどなく、学ぶことが多いです」
 実験を始めて9年が経った今年5月、ついにその時がやってきました。医師たちから上がる歓声。世界で初めて子宮移植を受けたサルが妊娠しました。サルの場合も人間と同じようにエコーを使い、妊娠の検査を行います。近い将来、人で子宮移植を行うことはできるのでしょうか。子宮移植のプロセスは、事前に卵子を摘出してその受精卵を凍結保存しておきます。そして、ドナーからレシピエントに子宮を移植、子宮が定着して生理が再開された後、受精卵を子宮に戻します。妊娠し、無事に出産した後は再び子宮を摘出します。
 慶応義塾大学・産婦人科、木須伊織医師:「子宮移植が他の臓器移植と異なるのは、妊娠出産の目的が達成されたら子宮を摘出することも含まれています。免疫抑制剤を飲まなくていいと」
 子宮移植の対象となるのは子宮頸(けい)がんなどの病気で子宮を摘出した人、そしてAさんのような先天的に子宮を持たないロキタンスキー症候群の患者です。もし、子宮移植が可能になれば妊娠のチャンスがやってきます。
 ロキタンスキー症候群・Aさん:「子どもを持つという選択肢がそもそもない状態にいるから、実際にその治療を選択するかしないかは個人の価値観になると思うんですけど、選択できるっていうことがあるだけで、だいぶ精神的には救いになるかな」
 子宮移植の分野で世界に先駆ける国があります。スウェーデンです。すでに人で13件の子宮移植が行われ、6人から8例の出産が報告されています。
 慶応義塾大学・産婦人科、木須伊織医師:「基礎研究では我々日本とスウェーデンが国際的にもリードしてきた。我々も実験を行ってきたなかで彼らと同じような技術の提供ができるのではないかと。一部の患者さんからは早くしてくれませんか、年齢も限られてきていますという方もいらっしゃって、我々としてはもちろんなるべく早く、臨床研究として日本でも実施したいと思っています」
 日本でも子宮移植の技術はすでに蓄積されたといいます。しかし、課題はまだまだ残されています。

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