ビジネスの「業態転換」求める補助金を新設[2021/02/02 21:46]

先月28日に成立した第3次補正予算。19兆円超が計上され、新型コロナウイルス感染拡大への対応として、ワクチン接種の体制整備やGoToトラベルの予算上積みなどが行われたが、実は企業向けの新たな補助金創設も盛り込まれている。

小売店がインターネット販売を始めた場合など、別の業態への「転換」に対する「事業再構築補助金」だ。

一体、どういう条件になっているのか。
そして注目される持続化給付金の第二弾はあるのか?
中小企業への対策を中心に取材した。

●新たな補助金が創設…条件は「業態転換」

「ウィズコロナの時代が続くことを考えると、従来のビジネスモデルを単に維持していくことは難しく、むしろ積極的に構造改革を起こす必要がある(成長戦略・実行計画より)」

そんな掛け声のもと、3次補正に盛り込まれたのが、1兆円余りが計上された「事業再構築補助金」だ。コロナで影響を受けた中小・中堅企業に対し、最大1億円を補助する制度だが、採択を受けるには、ある条件が定められている。「業態転換・新分野展開」だ。

小売店がインターネット販売を始めたり、航空機部品メーカーが医療器具の部品を新たに作ることなどが想定されていて、コロナ前に比べて売り上げが10%以上減っている(申請直前6か月のうち、任意の3か月の平均)と、中小企業は最大6000万円、中堅企業は最大8000万円、かかった経費について補助を受けられる。

確かに、コロナの感染拡大が収まらない中、企業の構造改革は欠かせない要素になっている。帝国データバンクが全国の企業を対象に実施した調査によると、新型コロナにより、業態転換を行う「予定がある」と回答したのは20.3%に上り、そのうち2.1%は「経営戦略として、すでに転換している」と回答している。

キッチンカーの出店支援を行う「SHOP STOP」では、去年12月の登録店舗数が前の年の同じ月に比べ、4割増えたという。飲食業におけるテイクアウトやデリバリーをはじめ、多角的な経営を試みる動きが広がっている。

●「卒業枠」「グローバルV字回復枠」〜透けてみえる菅カラー

しかし、「業態展開」では1億円の補助にはつながらない。この補助金には「資本金などを拡充して中堅企業になり、中小企業を卒業する『卒業枠』」、そして「中堅企業の海外展開を支援する『グローバルV字回復枠』」という、最大1億円を補助する別枠が設けられているのだ。これには、菅総理のブレーンとされる、デービット・アトキンソン氏の主張が反映されているようにみてとれる。

アトキンソン氏は、かねてから、日本全体の生産性を上げるためには、企業の中でも多くの割合を占める中小企業の生産性を上げ、規模を拡大することの重要性を訴えていて、去年11月の成長戦略会議でも、「十分な企業規模まで成長を促進する政策に切り替えていくべき」と発言している。

政府関係者は、こう解説する。
「コロナ禍において、巣ごもり需要などにより、大きく飛躍する企業も出てきている。そういう所は、今こそチャレンジする好機ではないか。困っている人をサポートするのは勿論だが、規模拡大を進める企業も応援していくべきだと捉えている」。

●持続化給付金“2回目”には慎重な政府

ただ、年明けの緊急事態宣言再発令、そして延長により、企業からは直接的な支援を求める声もあがっているのが実情だ。

全国約412万件・5兆4000億円と、数多くの企業に支給された「持続化給付金」については、野党などが”2回目”を求めている。しかし、経産省幹部は「今回の緊急事態宣言は、対象が全国ではなく、営業自粛要請も限られた業種なので、持続化の2回目ということにはならない」と説明する。

財務省幹部も、こう語る。
「再支給は、コロナの打撃と関係ない人たちにも配ることになる。飲食店はもともと廃業率が高いとも言われていて、減収だけを要件にすると、新陳代謝が働かなくなってしまうのでは」。
財政への影響を懸念する声も上がり続け、政府が慎重な姿勢は変わっていない。

こうした中、打ち出されたのが、飲食店への1日6万円の協力金と、納入業者や外出自粛の影響を受けた企業に最大60万円を支給する「一時金」だ。

「一時金」は、1月か2月の売り上げが前年に比べ半減しているという条件を満たせば、業種を絞らず幅広く支援する。緊急事態宣言が延長されたことにより、当初の最大40万円からは増額されたが、迅速さを追求した結果、企業の規模に応じた対応はかなわず、これでは足りないとの声も聞かれる。

●一時金の申請開始は「3月上旬」〜融資の活用広がるも

政府は一時金の申請を「3月上旬にも始めたい」として、体制構築を急ぐが、今すぐは手元に届かない。そのため、強調されているのが、政府系金融機関や民間による、「実質無利子・無担保の融資」の存在だ。

3次補正で、民間の無利子融資は3月末まで継続されることとなった。
実際、1月25日時点で、政策金融公庫が74万件(12.5兆円)、商工中金が3万件(2.3兆円)、民間の無利子融資が100万件(17兆)で、総額31.8兆円とかなりの金額が動いていることが分かる。ただ、いくら「最大5年猶予」「無利子」といっても、いつかは返済の時期が来る。

「どこも満足するような話は、なかなか出来ない」。
梶山経産大臣は、先月29日の会見でこのように語った。
万全な対策を立てることは難しいが、必要な支援策のあり方について、今後も常にアップデートしていくことが求められそうだ。

経済部 中村 友美

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