20カ月が6週間 ワクチン“スピード開発”にAI活用[2021/07/02 23:30]

コロナ禍において、様々な場所でAI技術が役立っているといます。開発から製造まで驚異的なスピードで行われたモデルナのワクチン誕生の裏にもAIの活躍がありました。

AIの開発や企業支援を行う企業『パロアルトインサイト』CEO・石角友愛さんに聞きます。

(Q.AIはワクチン開発にどのように役立ちましたか?)
石角友愛さん:「モデルナのワクチン開発では、去年1月に中国政府が遺伝子の配列情報をWEBサイトに出して、その2日後にワクチン候補の設計図を完成させ、8週間後にはフェイズ1のワクチン開発と出荷まで終えました。今までで一番早くできたSARSのワクチン開発が20カ月かかっていて、約90%の時間短縮に成功したと言われています」

(Q.時間短縮のポイントの1つ目『データの一元化』とは、どういうことですか?)
石角友愛さん:「データを一つの場所にまとめて、色んな人が使いやすくするということです。料理に例えると、まな板の上に色々な料理の材料をまとめて置いておくと、効率的に行うことができます。反対に、材料がバラバラな所にあると、その準備に時間がかかってしまいます。同じことがデータにも言えて、一つの場所にデータをまとめておくことで、円滑にAI導入の準備が行えると同時に、色んな部署にいる人が一つのデータを見てコミュニケーションを取ることができるようになります」

(Q.2つ目の『AIと自動化型生産ロボットの活用』とは、どういうことですか?)
石角友愛さん:「モデルナは、クラウドに一元化したデータを活用して、薬の開発のあらゆる所でAIを活用しています。例えば、ワクチン開発では遺伝子配列の組み合わせを考える必要がありますが、今までは人がエクセルにデータを手で入力して考えていました。AIを使うこと、何万通りもの組み合わせを自動的に作ることができます。非常に効率的で、少人化にもつながりますし、その結果、90%の時間短縮にもなったと言われています。もう一つ、ワクチンの品質検査も、これまでは人間が目視でやっていたところを、AIの画像認識技術などを使うことで、自動化・少人化できたと言われています」


こうしたなか、日本企業もAI技術を導入し始めています。

石角さんの会社がAI導入の支援をした、仙台の住宅設備などの部材を扱う会社『ベストパーツ』では、これまで取引先からの発注書を従業員が手入力していたため、人的ミスが起きていました。

導入されたAIに、データ化された発注書を読み込ませると、取引先や注文内容、在庫の確認をほんの数秒で判別します。発注書の書式が違っても、ほぼ正確に読み取ることができます。

また、この作業は、テレワークでもできるようになります。

『ベストパーツ』業務部・高島秀樹課長:「将来的には、蓄積したデータにAIを活用して、需要予測がもうできる。新しいものを作っていきたい」

(Q.AIがミスをすることはありませんか?)
石角友愛さん:「そうとは言い切れません。AIが学習するデータは人間がそろえるので、学習データの質が低いと、AIが出力する値も制度が下がってしまいます。大事なのは、人間が活用するという姿勢を持ったうえで、AIに学習させることが大事です」

(Q.AIを導入する企業は、日本で増えていますか?)
石角友愛さん:「今、すごく増えています。例えば、コロナ過で消費者の意識が大きく変わってしまいました。それが一番顕著なのが飲食業界です。コロナ対応型、緊急事態対応型の需要予測のAIモデルを作ってほしいという会社も増えています。とはいっても、日本はまだまだ、AI導入率が4.2%と言われていて、これから国がDX(デジタルトランスフォーメーション)を推進していく必要があります。今後はDX、AIなどを活用し、デジタル化した情報で組織や社会をよくすることがキーワードになってきます。経済産業省は『2025年の崖』ということで、2025年までにDXが進まなければ、最大で年間12兆円の経済損失が生じる可能性があるとしています。私たちがDXを推進することが必要不可欠になっていると言えます」

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