「GoTo2.0に課題ある」星野リゾート代表に聞く[2021/11/08 23:30]

緊急事態宣言の解除から約1カ月。にぎわいを取り戻しつつある観光地もあれば、一向に風向きが変わらない場所もあります。

千葉県館山市にあるホテル。6日の宿泊数は約90人で、コロナ前の半分以下です。
館山リゾートホテル・飯田貴支配人:「11月に少しずつ入ってきたが、いま、(平日で)一日10名ほど切っちゃうときがある」

コロナ禍でのニーズに対応しようとホテルのリニューアルを行い、宿泊客を取り戻すことも考えましたが、なかなか踏み切れないといいます。
館山リゾートホテル・飯田貴支配人:「お客さまが少ないので資金が厳しい。コロナが、どれだけ続くかわからない」

頼みの綱は『GoToトラベル』の再開です。
館山リゾートホテル・飯田貴支配人:「去年、GoToをやった途端、客足が戻ってきて、今まで旅行に行かなかった方が、旅行に行くことが増えたので、一日でも早くやっていただいて、長期的に1年、2年というスパンでやってもらって、お客さんがだんだん戻ってくる。その辺を望んでいる」

◆国内外で52施設を運営する星野リゾート代表取締役・星野佳路さんに、観光業界の現状と近未来について聞きます。

(Q.感染者数は全国的に減少していますが、観光客は戻ってきていると感じていますか)
少し戻ってきていますが、地域によって格差があるというのが現状です。首都圏、関西圏の周辺の観光地・温泉地は比較的、好調になってきていると思います。しかし、飛行機を利用しないといけない沖縄や、インバウンド比率が高かった北海道など、まだまだ戻ってきていません。いま、海外から人が来られないので、どうしても首都圏、関西圏に依存するしかないのですが、まだまだ飛行機に乗るということに制限がかかっています。もし、熱が出ると帰れないのではないかなどの心配があったりすることが、遠いところの観光が戻ってきていない一つの理由になっていると思います。

厳しい観光業に対する支援策として、政府は『GoTo2.0』を検討しています。ワクチン・検査パッケージの活用や、平日の利用促進、中小企業を優遇するなどの案が出ています。

(Q.この政府案をどう見ますか)
全体的に、まだまだ課題があると思います。ほとんどの予約がスマートフォンやPCです。そのシステム変更は非常に煩雑、複雑で、短期的なキャンペーンには向いていないと思っています。前回のGoToの反省から、いかにシステムをシンプルにして、中断せずに長く継続できるかがテーマで、その観点からいくと、お客さまにもわかりやすく、業界にとっても処理しやすく、事務局にとってもわかりやすい。シンプルな制度設計にすることが大事だと思っています。

(Q.前回のGoToでは高級旅館などが好調だった半面、中小は悲鳴を上げていたということで、政府は、中小を優遇しようという考えもわかるのですがどうでしょうか)
気持ち的にはわかりますが、実態の把握が間違っていると思います。大都市周辺の観光地・温泉地は、中小も高級もGoToの恩恵を受けています。去年のGoToの平均単価は1万3000円ですから、決して、高級なところだけが潤ったわけではありません。前回、インバウンド比率の高い、都会のビジネスホテルや、飛行機に乗らないといけない沖縄や北海道は、GoToの恩恵を受けにくかったという現状があります。今回、GoTo期間中の公平性を保つということであれば、GoTo期間中の公平性よりも、今年、緊急事態宣言で、一番、ダメージを受けた観光地に対して、GoToで援助を高める。私のなかでは、それが公平性なのではないかと思っています。シンプルな制度設計とは逆行しますが、土日と平日を分けるよりも、沖縄に1週間行くなら、どーんと下げるなど、煩雑にならない方法を考えるということができると思います。もう一つ、地域別で分ける方法として、宿泊料の割引は、どこでも同じでもいいと思いますが、“地域クーポン券”で差をつけるという方法もあります。これだと、そんなに煩雑にならないと思います。中小のほうがシステム改修は不利になりますので。

GoToキャンペーンで盛り上げすぎて、感染が広がるのではないかと、疑いを持たれることがマイナスです。継続ということを考えたら、割引率を下げるということが正しいと思います。盛り上げるのではなく、下支えする。継続できる制度にすることが大事だと思います。

(Q.“旅の未来”をどう考えますか)
この1年半、経営のなかで大事にしてきたのが“マイクロツーリズム”です。地元の方、近県の方に旅行してもらい、ここまで支えられてきました。
改めて、近県から来るマイクロツーリズム市場の大事さ、大切さ。そういった方々にリピートもしていただきました。ウィズコロナ、アフターコロナになっても、地元のお客さまを大事にすることによって、次の危機が来た時も、それを乗り越えるだけの力をつける。観光の力を、コロナ禍を終えてパワーアップする。そのような回復をしていければいいなと思っています。

(Q.大分県の平均稼働率が2019年に比べて落ちていませんが、これはどういうことでしょうか)
大分県がよかったのはマイクロツーリズムです。感染が拡大しているときは、大分県のなか、もしくは福岡など近県から来ているお客さんで、需要が確保できました。九州内には1200万人の人口、大きなマーケットがあり、その方々は、関西にも関東に旅行が行けなかった。海外にも行けなかった。この機会に九州内を旅行しようと。こういうマーケットをしっかりとらえたということが、大分がよかった一つの要因です。

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