国内初“飲む中絶薬”承認申請 80カ国以上で承認[2021/12/22 23:30]

イギリスの製薬会社『ラインファーマ』は22日、人工妊娠中絶に使う飲み薬の製造販売について、厚生労働省に承認申請しました。承認されれば、国内で初めての中絶の飲み薬となります。

申請した飲み薬は2種類。1つ目の妊娠を維持するホルモンの働きを抑える錠剤『ミフェプリストン』を服用。36時間〜48時間後に、2つ目の子宮を収縮させる働きがある錠剤『ミソプロストール』を摂取することで中絶します。

中絶の飲み薬の承認には、1年ほどかかる見通しです。

国内での治験に参加 東京大学・大須賀穣教授:「非常に安全な薬として、WHO(世界保健機関)にも推奨されています。日本の治験でも問題となるような有害事象は発生しませんでした」

一方で、懸念の声もあります。

日本産婦人科医会・前田津紀夫副会長:「結構な出血をするのと、止まらなくなる場合がある。おなかの痛みも伴う。陣痛のような痛みがくるので、どのように対応していくのかが課題」

様々な議論はありますが、飲み薬は日本にとって新たな選択肢です。これまで中絶の手術で広く使われていたのは『掻爬(そうは)法』という、金属の棒を使って子宮の内容物をかき出すという手術です。

大学生の新橋みゆさん(20)は、高校3年生の時に妊娠し、中絶しました。

新橋みゆさん:「性教育の授業があるのが、高校2年生の春だけ。2人のうち、性教育を受けたのが、私だけという状態。なかなか避妊が大切だとか、セックスしたら妊娠するというのが、なかなか伝わらなくて、結果、妊娠という…」

新橋みゆさんも、体に負担がかかる掻爬法で手術を受けた一人です。

新橋みゆさん:「3日後くらいに、かき出しきれなかった子宮内の残っているものが出てきた時は、ひたすら痛くて、寝返りがうてない。トイレ行ったら『塊流れてきた』『これ出てきたの』って、さすがに自分でもびっくりした。かき出して、私は自分の子どもを死なせてしまったんだと、1年以上、2年くらい考え続けていた時期があった」

現在は自身の経験から性教育の大切さを訴える活動をしています。

新橋みゆさん:「なんでもっと体に負担が少ない方法を選べなかったんだろう。これから中絶する人は、掻把法は避けられるような状態になってほしい」

海外では30年前から使われていて、現在、80を超える国と地域で“中絶薬”は承認されています。

そもそも、中絶に対する考え方が、日本と世界では違い、それは費用面に現われています。

日本の中絶には約10万円かかりますが、イギリスなどでは公的なサポートがあり、中絶に関わる費用が無料になります。

女性ライフクリニック・対馬ルリ子医師:「避妊も中絶も公的サポートがあるべき。相談できず産んだ赤ちゃんを見捨てるしかないのは、一番悲惨なこと。それを防ぐためにも、早く気づいて中絶という医学的なレスキューもある。自分が産みたい時に産める自分になる、そういう希望が一番大事」

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