元五輪実況アナ×「軽」EV工場&最新技術〜EV普及のゲームチェンジャーになるのか[2022/05/21 20:00]

■過去、五輪やサッカーW杯などを実況してきた元アナウンサーが経済部記者の世界に飛び込んで9カ月。新しい発信の形を模索する中でチャレンジ

■脱炭素の流れの中で急加速する世界の車の電動化。今年は日本もEV投入ラッシュを迎え、ついに「軽」の電気自動車も登場する。いよいよ「EV普及元年」が日本に訪れるのか。「軽」にも続々と搭載される自動運転支援技術にも注目して欲しい

軽自動車サイズのEVが新たに販売されるのは2009年以来、実に13年振り。13年前は三菱自動車工業が「世界初となる量産電気自動車アイ・ミーブ」を発売、未来の車の生産開始時には多くの報道陣が三菱自動車の水島製作所に駆け付けた。しかし、発売時は100万円を超える補助金込みでも300万円台という価格、航続距離の短さ(120または160キロ)、充電設備の少なさ、バッテリーの耐久年数への不安などから期待した普及はもたらせず、21年3月に生産終了。累計販売台数は国内外で約2万4000台にとどまった。(18.4〜サイズ変更で登録車に)その三菱自動車と同じく世界に先駆けて量産EVを開発、投入した歴史を持つ日産(リーフ=2010.12〜グローバル販売59万台)が共同開発、タッグを組んで市場に投入する軽EVがどこまでユーザーに普及するのか。この夏の発売に向けて5月20日から本格生産(3月から試験生産)。同日から注文も受け付ける。

新車販売に占めるEV比率が1%に届かない日本で、新車販売の約4割を占める「軽自動車」サイズのEVが選択肢に加わる意味は大きい。「1回の充電で走れる距離は180キロ」と、他のEVと比べると短いが、これは「コストがかかる電池の量を減らして販売価格を抑える」狙い。通勤や買い物の日常生活を想定すると十分な距離。2社の調べでは大半のユーザーは2日間以上充電せずに十分走行できる距離だという。国からの補助金55万円、各自治体の補助金も加えると「実質負担額が200万円を切るどころか、地域によっては150万円を切る」モデルも用意された。両社ともに関係者などの試乗を通して「起爆剤になる」と手ごたえを得ており、日産の内田誠社長は「EV普及へのゲームチェンジャーになる」と期待を込める

三菱自は今回の軽EV生産にあたり水島製作所に80億を投じ、電池パック製造設備や生産ラインなどを整備。月約850台、年間1万台を販売目標に掲げる。日産と合わせると年間5万台超を目指している。他メーカーもホンダが2024年にまずは商業用の軽EV、ダイハツとスズキは25年までに投入する方針を明らかにするなど、軽EVの開発競争はますます激しくなるばかりで、先陣を切って「軽」市場にEVを投入した2社のシェアがどのように変化していくかは非常に気になるところ。少なくとも、他社の投入までの間はいわゆる「ブルーオーシャン」であり、注視したい。

また、発表の夜(5月20日)には日産が国内自動車メーカーとしては史上初めて「メタバース(VR)上での新車発表会&試乗会」を開催した(日中はリアル発表会開催)。世界の名だたる企業が続々と参入する「メタバース」という新たな世界を、日産はどうビジネスに結び付けていくのか。三菱自動車は全国の系列販売会社に加えて「楽天市場店」で販売もするという。定額制やシェアリングなど様々な販売手法が広がっているが、車のPR法や販売ロードマップも、ますます激変する予感がある。

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