「電気・ガス代」高騰の影響“ゼロの街”…安さ秘密は“太古の海水”“太陽光パネル”[2022/12/08 16:45]

今、私たちの暮らしを圧迫している「電気・ガス」料金の高騰。来年からさらなる値上げが予定されるなか、値上げの影響を全く受けない街がありました。

千葉県内の川に湧く“謎の泡”。これがガス代全国平均の半額につながるといいます。

さらに、埼玉県内の住宅街では、電気代の値上げの影響ゼロ!その取り組みは、アメリカのバイデン政権の担当者が視察に来るなど、世界的な注目を集めています。

なぜ影響を受けないのか。その秘密を追跡しました。

■「電気・ガス」料金↑のなか…“影響ゼロ”の街

70代女性:「(Q.電気代、ガス代の値上がりは実感ある?)実感は…ある!」

60代女性:「皆、値上げしてるから仕方がない…」

今、暮らしを圧迫している「電気・ガス」料金の高騰。家計の中で最も節約したい費用の第1位という調査結果もあります。

しかも、電気もガスも来年、さらなる値上げが予定されています。そんななか、ガスの値上げがない街があります。

横田直樹さん(42):「『ガス』に関しては、以前に比べて金額は大して変わってない。うれしい限り」

さらに、電気の値上げがない街もありました。

山田佳成さん(31):「(値上げの影響は)ないです。この街、独自の電力プラン」

なんと、電気・ガスの値上げの影響を受けないという街があったのです。一体、どんなカラクリがあるのでしょうか?調査に向かいました。

水面に湧き出る“謎の泡”の正体とは?燃料高騰の影響ゼロ!その秘密を追跡しました。

■「ガス代変わらない」安さの秘密は“天然ガス”

やって来たのは、千葉県です。

街の人:「(Q.こちらのガス代は上がってる?)値段一切変わらない。安い!」「(Q.ガス代が上がった実感は?)今のところはない!」

「ガス代が上がっていない」という声が次々と聞かれました。

千葉市に住む横田さん一家のご自宅にお邪魔しました。

直樹さん:「(Q.ガス代は月にいくら?)2000円前後ぐらいです」

戸建て住宅に3人で暮らす横田さん。全国の3人世帯のガス代平均4930円と比べると、半額以下の料金です。

妻・明香さん(40):「(Q.コロナ禍で料理する機会が増えた?)前よりは外食が減った。お風呂も毎日入るし、ご飯もコンロを3つ同時に使ったり」

直樹さん:「以前に比べて金額は大して変わってない。うれしい限り」

なぜ、ガス代が安いのでしょうか?その秘密を探るべく向かったのは、のどかな田園風景が広がる千葉県睦沢町です。

すると、川の水面に“無数の泡”が湧いています。実はこれは、この地域で湧き出ている「天然ガス」なのです。水中をのぞいて見ると、川底から絶え間なくガスが出ています。

千葉県は、天然ガスの生産量、全国2位を誇るのです。この天然ガスを供給しているのが「大多喜ガス」です。

大多喜ガス・木村和彦さん:「この千葉県を中心として、茨城県・埼玉県・東京都・神奈川県の下に広がる、南関東ガス田というガス田がありまして」

千葉県を中心とする南関東一帯には、ガス田が広がり、そこから天然ガスを採取。現在、この会社では千葉市や市原市、茂原市などの17万戸にガスを供給しています。

■国産資源“太古の海水”により“安定した値段”に

格安で供給しているという天然ガスを採取する現場を見せてもらいました。

関東天然瓦斯開発・千代秀樹さん:「天然ガスの成分が溶け込んだ、かん水をくみ上げるための井戸」

深さ1400メートルまでおろされた井戸から地下水をくみ上げ、天然ガスを抽出していました。この地下水は、実は…。

千代さん:「いわゆる“太古の海水”と言われているもの。200万年ぐらい前ですかね」

はるか昔の海水に眠る、貴重な国産資源です。なぜ、安定した値段で供給できるのでしょうか?

木村さん:「都市ガス会社の多くは、輸入天然ガスの価格の影響を受ける。当社の場合は県産ガスを主体として供給しているので、輸入価格の変動の調整をしていない」

都内の大手ガス会社の平均的な料金は、今年に入りおよそ32%値上がりしていますが、大多喜ガスでは一切、料金が変わっていません。

しかし、使い続けていると、いずれ枯渇してしまいそうですが…。

木村さん:「可採埋蔵量というんですけれども、約800年分(ある)と言われている」

■“地盤沈下”の可能性も「“千産千消”といった形」

一方で、課題もあると言います。

千代さん:「地下から、かん水をくみ上げると、それが多少なりとも地盤沈下の原因になると言われている部分もあるので、(地下水の)一部を地下に戻している」

一度に大量の地下水をくみ上げてしまうと、地盤沈下が起こる可能性があるといいます。そのため、急激な増産はできないといいます。

木村さん:「千葉県の天然ガスがあるといっても、(首都圏のガス)全部を賄えるほどの量までにはならない。地産地消を千葉県の『千』と置き換えて“千産千消”といった形で。千葉県の地域の皆様に、なるべく消費して頂きたい」

■電気代高騰の影響受けず…秘密は“太陽光パネル”

次に向かったのは、電気代高騰の影響を受けていないという、さいたま市の住宅街です。

都心から電車でおよそ1時間。51戸で形成された住宅街です。

今年1月に、この地区に越してきた山田さん一家。新天地での生活のなかで、注意しているのは「電気を使用する時間帯」だと言います。

妻・山田彩さん(30):「(Q.洗濯機はいつも何時くらいに回す?)日によるけど、昼間のほうが電気代が安いので」

山田佳成さん(31):「時間帯で単価が違ってるんですけど、20円の時になるべく家事を済ませてしまえば、電気代もっと安くできるんだろうなって」

多くの電力会社では、夜間に電気代が安くなるプランが用意されていますが、昼間に電気代が安いとは、どういうことなのか。その秘密は「屋根」にありました。

上から見てみると、51戸で形成された住宅街、すべての家に太陽光パネルが設置されています。この住宅街では、屋根の上で作った電気を、街の一角にある蓄電池と電気自動車2台に集約し、それぞれの家に配電しています。日中に電気をためているため、夜も使えるのです。

さらに、発電量の予測を基に、電気料金の単価は20円、25円、30円と変動。発電量が多い昼の時間帯に、価格が安くなるという仕組みです。

彩さん:「結構、助かっています、エコだし。(電気代が)ちょっとでも安くなったら、ラッキーかなぐらい」

■不足分は購入も…住民は燃料高騰分“負担なし”

電力会社「Looop」 GX推進部・町田みのりさん:「自然の力を使って発電をするので、そもそも燃料の費用がかからない」

電気代の値上げの原因となっているのは、石炭や石油といった燃料価格の高騰。「調整額」として電気料金に転嫁され、値上げが続いています。

しかし、この街では、太陽光で発電しているため、燃料の高騰は影響せず。また、足りない分は電力会社が街の外から購入していますが、住民には燃料高騰分の負担はないといいます。

この51戸の住宅は、さいたま市が進める「スマートシティさいたまモデル」の一環。太陽光発電による環境負荷の軽減、そして災害に強い街づくりを目指す取り組みです。

さいたま市 都市戦略本部・神田修主査:「街区内で発電しているので、条件が良ければ相当長い時間、電力が継続される。ある程度、災害が起きても、ライフラインが復旧するまで持ちこたえられる人が増えていけば、必要な人に支援ができるようになる」

■目標は“100%地産地消”…課題は「蓄電池」

9月にはアメリカ・バイデン政権の環境保護庁長官が視察するなど、海外からも注目されています。

今後の目標は、電気の“100%地産地消”。そこには、課題もあります。

町田さん:「蓄電池を、すごく大きい容量のものを入れれば再エネ100%。ここで発電したものを、すべて皆さんに使って頂くことは可能になる。一方で、蓄電池の金額がすごく高い。何割かは補助金を頂いているが、採算性というところに課題がある」

多くの期待や課題を背負い、街は消費電力が一番多くなる本格的な冬を迎えます。

(「スーパーJチャンネル」2022年12月7日放送分より)

こちらも読まれています