【金融トップに聞いてみた】みずほフィナンシャルグループ木原社長[2023/01/05 21:11]

■定着させ継承させること、当事者を繋ぎ媒介者になっていく
 (Q.トップ就任からもうすぐ1年、今年の抱負は?)
 去年、業務改善計画を出してシステム障害に関して再発防止策を出している。ほぼやり切ったが定着していくことが重要。定着させ継承していく一年になるだろう。対応力が上がってできている部分も多いと思うが、気を抜かないでやっていかないといけない。政府が出している資産倍増計画、そのなかでNISAの拡大と恒久化は大きな話だと思う。ここに対して我々としてもしっかりと貢献していく。仕組み作りや商品提供、私共自身のレベルアップ。それから我が国における金融教育、こういったものに手を打っていく。それが今年はすごく重要な一年になる。もう一点だけいうと、この2、3年色々な動きがでているが、カーボンニュートラルやサステナビリティに対する実証実験・技術の実装などが、ますます加速する、そういう年になると思う。そこに対して、色々な当事者をつなげていく、媒介者になっていくこと。自分達としてもしっかりリスクマネーを出していく。それが非常に重要な一年になるんじゃないかと思っている。

■激変する金融環境下ではショックが起こりうる可能性が十分ある
 (Q.金融環境が激変しているが?)
 1つは、去年12月に(日銀による)イールドカーブコントロールの水準(長期金利の変動幅)が変わった点はやっぱり皆さん驚きがあったと思う。今後どうなっていくかは分からないが、マーケットが動くことが可能になってきているということ。(マーケットには)色々な思惑があるので、そこに対して我々も注視してマーケット環境をしっかり見ていくことが重要。去年起こったことを少し振り返ってみると、年初にはアメリカの政策金利は0%だった。それが4%台になっている。これはかなり大きなこと。大抵は金融緩和の後の金融引き締めというのはマーケットで何か起きているわけで、そのショックが起こりうる可能性が十分あると思うので、そこに対する備えをしっかりとやっておく。これも極めて重要だと思う。

 (Q.例えば?)
 自分たちの貸し出しのポートフォリオ(組合せや配分)をよくみて、そのなかで、脆弱な部分がないかしっかりと検証し、あれば先手を打って対応するということ。

 (Q.住宅ローンはどう見ればいい?)
 住宅ローンについていうと、固定金利は今回のYCCの水準変更で、10年金利は20から25bps(0.2〜0.25%)上がったわけですよね、ほぼそれに連動して固定金利の住宅ローンも上げているというのが実態。これまではどちらかというと変動金利で皆さんやっていたが、少しずつ固定金利の関心が高まっているのが今の実態かなと思う。変動がいいのか固定がいいのか、店頭でよく受ける質問だが、しっかりとお客様の将来の人生設計を伺いながら、アドバイス・コンサルティングしていくのが非常に重要な状況になっている。今までは(金利が)とにかく動かなったというか、ずっと同じだったわけだから。変わってきているから、コンサルティングが非常に重要になる。

 (Q.こうした変化は日本経済にとって良いことなのか?)
 動きがあるということは活力が出てくるということ。経済の状況に応じて金利が動くということは、機動性・自律的な調整作用が起きてくる、そういうことですから。そういう意味では活力が出てくるということなので経済全体にとってもいい話だと思う。

 ■物価高と賃上げは連動している
 (Q.物価高はいつまで続くのか、賃上げの機運がこれまでにないぐらい高まっているが?)
 2つの質問は連動していて、物価高が続くかどうかは両側面あると思う。1つは、原材料高で食料品の価格高騰などをみてると必ずしも一過性ではない、といった感じはする。一方で、本質的な意味での日本経済の需給ギャップはまだ解消していないということと、この辺が賃金と結びつくのだろうが、日本全体として物価高を上回る賃金上昇を達成できるかということ。この両方の要素で、物価高が続くかどうかが決まるんじゃないか。どちらが勝つかというのは私もよく分からない。当然、短期的には今の流れがあるから、当面の間(物価高は)続くと思う。ただ海外では財(モノ)の価格はかなり落ちている。海外のインフレはどちらかというと労働需給が逼迫(ひっぱく)しているなかで、サービス業での賃金上昇によってかなり粘着性の高いインフレが起きている。これが海外の状況。日本の場合は原材料高というのは物から来ている。物がだんだん海外から(価格が)落ちてきているので両方あり得る。(物価高が)続くかどうかは分からない。すっとではないだろうが、それが1年、2年後も同じように2%上がってくかというと、分からない。

 (Q.給料体系について。来年にはいわゆる年功序列型を変えていく(みずほFG主要5社で個人の能力がより反映される統一した人事制度に移行)が?)
 役割給の作り方についてはこれから考えていく。賃上げは当然前向きに考えていくし、人的資本投資、人材投資、これは極めて重要。少なくとも今の状況は、実質賃金は下がっているということなので、前向きに検討していくことは正しいと思っている。

 (Q.経営トップの間でも意識が変わっているのか?)
 新聞などであれだけ色々(話題が)出てくるとそういうことになるだろう。(賃上げが)今、最もホットな話題であることも事実。

■眠っているものを発掘し、海外に出していくことが日本経済の再浮上に
 (Q.どうしたら日本経済の再浮上できるのか?)
 (岸田)総理の話にもあったと思うが、持続的な物価高を上回る賃金上昇を実現できるかどうか、そのためには国内への投資を呼び込めるかどうかということだと思う。私がすごく思うのは、日本の中で眠っている海外でも通用する技術や商品を外に向かって打ち出していけるかどうかということ。やっぱりこの10年20年、全体で見れば日本人は内向きだったと思う。外に向かって売れるものがないかどうか、そういうものを作っていくこと。今それがあって、もしかして埋もれていないか。そういうものをしっかりと発掘していって外に出ていくお手伝いを官民あげてやっていく。日本はまだまだ外に向かって売れるのだが、まだ出て行っていないものは結構たくさんあると思う。そういう動きをしていくと、だいぶ変わっていく。

 (Q.途中で言っていたつなげていくということか?)
 まさにあると思う。色々な主体をつなげていって、技術などを外に売り込んでいく、そういうこともあると思う。

■日銀にはマーケットとの対話を求めたい
 (Q.日銀総裁が変わる。どういう金融政策がいいのか?)
 金利というものは経済状況に合わせて動いてく状況を作ることが非常に重要だと思う。今回、イールドカーブコントロール(長短金利操作)がまだあるが、レンジを広げたことは凄くポジティブに受け止めるべきだと私は思う。ここから先、どうしていくかについては、物価の状況等をにらみながら考えていくことだと思うが、やはり予見可能性の高いフォワードガイダンス、マーケットとのコミュニケーションですよね。そこの対話を双方でやっていくということがすごく重要な事だと思う。それがないと逆にオーバーシュート(行き過ぎた変動)するといったこともありうるので、そういった意味での対話・コミュニケーションがすごく重要だ。

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