「賃上げ」企業語る“DXの必要性”人手不足に直面する介護や建設現場のデジタル技術[2023/03/19 23:30]

大手を中心に満額回答が相次いだ今年の春闘。
この賃上げの波は中小企業にも及ぶのか引き続き注目が集まります。
番組は最新のデジタル技術を駆使し、「賃上げ」を実現した企業を取材しました。

▽「賃上げ春闘」“満額回答”相次ぐも…
(連合芳野友子会長)「多くの所で満額、もしくは満額以上引き出したと」
今年の春闘、大企業では「満額回答」が相次いでいます。連合がおととい発表した定期昇給とベースアップ分を合わせた平均の賃上げ率は3.8%。昨年に比べ、1.66ポイント上昇しました。
(連合芳野友子会長)「ここから中小(企業)の交渉が本格化していきますので、この流れを止めないようにしていきたい」
中小企業の中には“利益が出ていなくても賃上げを行う”ところがあるといいます。
(給与アップ研究所高橋恭介社長)「中小企業の最大の賃上げの必要性は優秀人材の離職です。今いる社員をどうつなぎとめていくのか」
経営者の大半が「離職を防ぎたい」「人材を確保する」など、会社を維持するため、賃上げを行いたいと答えているのです。
その一方で、建設や介護のいわゆる“3K”のイメージがある業種では、最新のテクノロジーを活用することで“積極的な賃上げ”を実現したところもあります。

▽“無人ショベルカー&ドローン測量”で「賃上げ」実現
工事現場で作業中のショベルカー。一見、普通の光景に見えますが…中を見てみると、誰も乗っていません。実はこちら、遠隔で操縦することができる“無人重機”。ゲームコントローラーのように操作することができます。
宮崎県にあるこの建設会社は、7年前にデジタル技術を導入し、毎年4%程度の賃上げを行っています。60歳以上の労働者がおよそ3割を占め、高齢化が進む建設業界。この会社で力を入れているのが、若い世代の人材獲得です。
「新人社員なんですけど、今日やってもらうことになってます」
行っていたのは…ドローンを使った測量の研修です。今年1月、食品業界から転職した寺原さん。
(寺原さん)「正面はどうやって向けるんですか?」
(先輩社員)「左のレバーを右に切る。そのまま平行に」
ドローン初心者の寺原さん。基本操作を習得するまで時間はかからなかったといいます。
(2カ月前に入社寺原幸真さん(27))「意外に簡単でした。使いやすいです」
現場で連続撮影された画像は、この後…
(旭建設河野義博土木部長)「このソフトの良いところは立体的に見えるようになってますので、3D化できて地形の形を把握できるようになる」
立体的にすると構造物の形なども細部まで解析できるため、より地形に合わせた図面を作成できるといいます。
(旭建設河野義博土木部長)「1品ごとにこういった設計図を起こしていくと。昔は技術がある人間しかわからなかったんですね。今は経験がなくても技術がある人間に近い形で仕事ができていく」
この会社では、作業効率が上がったことで受注できる仕事が増加。結果、これが賃上げにつながったというのです。
(旭建設黒木繋人社長)「良いことやって、『ありがとう』だけでは伝わらない時があって、そこは給与や手当で表現していく」

▽“介護ロボ”と“便利アプリ2”で「残業時間3割減」
徳島県を中心に特別養護老人ホームなど全国に70の施設を運営する「健祥会グループ」。
(健祥会グループ中村晃子常務理事)「今年度9000円のベースアップを行いました。パートも含めて全職員3000人です」
どのようにして大幅な賃上げが実現できたのでしょうか?こちらは、利用者の移動をサポートする“介護ロボット”の「HUG」。これまでベッドから車いすへ移動する際、2名の介護士で対応していたのが…このロボットだと1人で行うことができます。その間、もう一人は別の仕事を行うことができ、業務の効率化につながりました。さらに…
「すごいな!全くこれ、力を入れていないんですけど、勝手に動けるんですね」
力を入れず持ち上げることができるため、介護士の負担も軽減されたといいます。また、1日4回行う体温や血圧などの測定でも…
「熱計るわね!36.8℃です」
体温が即座にタブレットにあるアプリに反映されます。
「バイタル異常なく過ごされています」
「こういった形で今の状態をすぐに入力できます」
アプリの導入で1人あたり3分半、作業時間を短縮。入居者40名に換算すると、1回でおよそ2時間半も削減でき、これにより残業が3割減ったということです。
6年前からデジタル化を進めてきたこちらのグループ。背景にはこんな事情が…。厚労省の集計によると、2025年に必要とされる介護職員の数は、およそ243万人。それに対し、実際に供給可能な人材は、およそ211万人。実に32万人もの人材が不足すると予測されています。
(健祥会グループ中村晃子常務理事)「やはり先を見据えた時に、デジタルトランスフォーメーション化(デジタル化)を介護全般でしていくのは、これはもう本当に必須事項だと。できる限り職員に対して(賃金で)還元できる、そんな法人としてずっと成長していきたい」


3月19日『サンデーステーション』より

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