話題の高架下物件 入居希望者が殺到 鉄道・建物に工夫で進化「電車気にならず快適」[2023/09/02 17:00]

お店の横と真上を通る電車。テレビでも度々紹介されている、老舗洋食店がある場所は「高架下」です。

今、高架下にオシャレな商業施設やホテルなどが建つ「高架下物件」が注目を浴びています。

そんな話題の高架下物件で暮らす人々の生活ぶりを追跡しました。

■高架下で暮らす女性「何にも気にならない」

実は、高架下には長年住んでいるという人もいます。高架下で60年以上暮らす荒川利津子さん(84)です。

荒川さん:「電車ね、そんなにうるさい?」

振動で網戸がガタガタと音をたてます。2階にお邪魔すると…。

荒川さん:「頭ぶつかってる。皆、ここぶつかるのよ。これも慣れ。何にも気にならない、気にしない」

■入居希望者が殺到…大阪の高架下物件

今、そんな高架下の生活も大きく様変わりしています。大阪には、入居希望者が殺到しているという高架下物件があります。

最寄り駅から徒歩4分の好立地。人気の高架下物件は黒色を基調とした、賃貸ガレージハウス。去年3月に完成し、全12戸がすでに満室。中に入ると、まず目を引くのがガレージです。

森山彰さん(54):「車が白で周りが黒で引き立つので、カッコよく見える」

1階のガレージ内は、車やバイク、オシャレな雑貨など、まさに趣味の空間。黒色の鉄骨をむき出しにしたデザインが特徴です。

高架下物件のメリットは、周囲に音を気にすることなく、車やバイクの整備、DIYなどの趣味が楽しめることだといいます。

2階の居室には、ガレージ奥の階段で向かいます。

森山さん:「家のリビングのような感じに。こう座ってテレビを見たり」

広さおよそ56平米のワンルーム。ガレージ付きで、賃料は14万5000円。自宅は東大阪市内にあり、妻と息子3人で暮らしているという森山さん。セカンドハウスとして利用しているといいます。

しかし、気になるのは…。

森山さん:「今、(電車が)通ってますけど、全然気にならない。快適です」

電車が通過するときの音を測定すると、50デシベル台。「静かな事務所」のレベルでした。

高架と建物が接していないことで、音や振動が伝わりにくく、建物の壁や天井には遮音性の高い素材を使用して、防音性を高めているといいます。

実は、秘密は鉄道自体にもあるといいます。

近鉄不動産 プロジェクト企画部 湯谷里恵課長:「こちらがロングレールです。ロングレールは、レールとレールの継ぎ目が200メートル間隔なので、ガタンガタンという騒音や振動がとても少ない」

この200メートルのロングレールにより、継ぎ目が少なくなり、高架自体も鉄筋コンクリート造りで対策が向上。さらに、鉄道各社では車両の軽量化なども進み、騒音や振動は年々軽減しているといいます。

■JR中央線にも!東京の高架下物件

一方、東京では、高架下からの街づくりという試みが行われていました。その一つが、JR中央線の高架下にある、話題の賃貸物件です。

その物件は、JR中央線・東小金井駅から歩くこと7分の所にあります。

シンプルでオシャレな建物で、屋根を見てみると、高架下にすっぽりとはまってます。

3年前までは駐車場でしたが、学生向け賃貸のデザイナーズ住宅に。しかも、全長350メートル、最大109人が住める巨大高架下物件です。

シェアハウスタイプは、高架が上にあるため、地盤を掘り下げ、吹き抜けの開放感ある空間に。勉強や食事ができる共同スペースもあります。

広さはおよそ11平米。奥には洗面台とユニットシャワー、トイレを完備で賃料は5万円前後。周辺のワンルームの相場を調べると、およそ6万7000円で、2割程度、割安になっています。

すると、電車が通過しました。振動はないですが、音は少しします。

建物の外では、70デシベルを上回った騒音ですが、部屋の中はどうでしょうか?

通常時は平均で43デシベル。電車通過時は54デシベルまで上がり、すぐに43デシベル程度に。

一方、振動は…?部屋の中に、水を入れたグラスを置いてみます。電車が通過しても、水面はほとんど揺れません。ラッシュ時には数分に1本、電車が通る中央線ですが、果たして、実際の生活に影響は…?

学生:「よろしくお願いします」

2階に入居している3年生の男子大学生の部屋。

学生:「(Q.今ちょうど通ってる?)通ってますね」「(Q.しかも2階だから真上が線路ですよね?)数メートル上を電車が通ってると思う」「(Q.それでも気にならない?)ならないですね」「(Q.振動も?)感じたことないですね」

実は、高架下物件ならではのメリットもあります。

学生:「駅までずっと高架下なので、雨に濡れることなく大学に行ける」

駅までの道はすべて高架が屋根がわりになってるため、雨に濡れず一直線。街灯も多く、夜間も安心して歩けるといいます。

もちろん「駅近」で、買い物などの利便性も抜群。また、敷地内には、広々としたオープンテラスがあります。雨の日でも利用できるのが、高架下の魅力です。

そして、敷地の中心には、高架下の特徴を生かし、横長で広々と、全面ガラス張りで明るい空間の住人専用のカフェテリアもあります。

しかし、なぜ、高架下に住宅を作ることになったのでしょうか?

かつて、この付近には一日12時間も閉じているという「開かずの踏切」がありました。

通行人:「1時間も待ってんだよ」

全国的に鉄道の高架化が進むなか、三鷹駅から国分寺駅間でもおよそ6キロに及ぶ高架化が完了。その空間を有効活用し、高架下からの街づくりをしようと、商業施設やイベントスペース・保育園などが作られます。

一方、住居専用の用途地域も多く、店舗など住宅以外が建てにくい環境のため駐車場や空き地のままの土地も多かったのですが、そこを有効活用しようと…。

JR中央線コミュニティデザイン地域活性化部 久郷萌さん:「(住居専用の)用途地域の開発と、JR中央線の沿線には大学も多いことから、学生向けの住宅にした」

騒音対策の進歩もあり、住宅への試みが始まりました。

鉄道の立体交差事業によって、今後も注目される高架下物件。そこには様々な可能性がありました。

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