【英航空トップに聞いてみた】ブリティッシュ・エアウェイズ ショーン・ドイルCEO[2023/09/11 22:55]

■ブリティッシュ・エアウェイズの「日本ーイギリス定期運行便」就航75周年で来日
 (Q.いつ到着した?)
 今朝(9月11日)の7時に着いた。このインタビューがあるから準備していたよ。
 (Q.日本の路線で運行するファーストクラスや新しいビジネスクラスの特徴は?)
 クラブスイートということでこの冬に導入を検討している。羽田便は10月からの対応になる。現在ヒースロー発の便では60%が既に対応済みだが、これを来年に向けて75%まで高めていきたいと思っている。フルクローズのプライバシースイートは、フルフラットになる座席であったりエンターテインメントであったり専用の出口があったりということで、日本市場にも導入できることを楽しみにしている。
 (Q.アジア路線は日本だけでなく中国などさまざま就航。日本路線の戦略的位置付けは?)
 日本市場はとても重要視している。パンデミック後の東アジア路線の就航再開ということで去年まず2つの市場で再開したが、それが香港と日本だった。羽田便に関しては一日2便、週に14便ということで来年の夏までに増便していく予定だ。すでにJALとフィンエアーとの共同運航便ということで週56便を欧州と日本の間を就航しているが、この取り組みもできるだけ早く戻していくことが重要だ。東京ーロンドン間は弊社のネットワークにとって非常に重要なものであると認識している。

■航空業界は再構築の期間 需要と供給のバランスがまだ落ち着いていない
 (Q.コロナ後の世界の渡航需要やトレンドはどうみているか。何か変化は?)
 パンデミック後の傾向としてはビジネスの需要よりもレジャーの需要が強いということで、それは弊社も他社も共通だと思う。まずレジャーの需要が回復して、皆さん友人や親戚に会いに行くという需要が高まっている
 (Q.物価高騰=インフレが起こった。燃料費の高騰に人手不足も。その辺りの対応はどうしているのか?元々金融アナリストということだがインフレの見通しは?)
 労働市場の人手不足の課題もあるが、弊社では1万人の採用を行った。うまく携わっていただけてうまくいっていると認識している。インフレも燃料価格の高騰もあるが、それは強い需要に下支えされている。友人であったり親戚であったりに会いに行くということ、世界でまた様々な経験をしたいという強い需要が下支えしている。現在は業界としてもまだ再構築の期間にあると思う。今は2023年から2024年になろうというところだが、まだまだ2019年迄のキャパシティには戻っていない。そういった意味では需要と供給のバランスが落ち着いていない状況。レジャーの客や友人・親戚に会いにいったり旅行に行ったりという需要が強く、ビジネスに関しても徐々に皆さんがオフィスに戻り働くようになって経済活動がまた活発になってきているのが来年に向けての状態だと思う

■次の10年の中ごろまでには水素を活用した航空機が見られる
 (Q.脱炭素の取組は現状どれぐらい進んでいる?)
 脱炭素の取り組みについては何年も前に着手している。IAG(インターナショナル・エアラインズ・グループ)では2050年までにカーボンゼロを目指すと掲げているが、その達成のためにやるべきことが沢山ある。まず機体そのものを燃費の良いもの、より効率的なものに置き換えていくということで、パンデミック中の取組みとしては古い機体(747)をリタイアさせて新しいものと置き換えるということを行ってきた。
 2つ目の取組としては、弊社ではコラボレートで脱炭素のプログラムを進めているが、炭素を相殺=オフセットするという活動を行っている。そしてSAF=持続可能な航空燃料を進んで採用する取組を進めているが、イギリスの航空会社としては初めてイギリスの工場からSAFの調達を行っている。2030年までに燃料の10%をSAFで賄えるようにする目標を打ち出している。投資も沢山のスタートアップに行っていて、「ゼロアビア」という水素を燃料として使う企業への投資もしている。長い時間を必要とするイノベーションだが、次の10年の中ごろまでには、炭素を出さない、水素で動く短距離用の航空機を見る事ができるだろう。一つの取組みで解決できる簡単なものではないが、さまざまな取組みを同時に進める事で、そしてまた途中で新しいソリューションも開発しながら取り組んでいきたいと思っている。

■イギリスにとっても中国からの観光客は重要 オーバーツーリズムは問題になっていない
 (Q.8月10日に中国が団体ビザでの旅行を解禁した。日本を訪れる観光客に占める中国人の割合は大きい。イギリスにとっては中国人の旅行客がどれぐらいの割合を占めているのか。今回の影響・回復の見込みは?)
 ちょうど中国路線はこの夏からの解禁ということで(注.上海線は4月、北京線は6月)まだコメントを申し上げるには時期尚早かと思う。イギリスにとってもやはり中国は重要な市場。最初に路線を再開したのが上海と北京であるということにも代表されているが、中国からの客というのも重要であると考えている。中国人観光客は日本へのインバウンドの需要としても重要だと考えているし、EU・UKからの観光客が日本を訪問することも日本の経済や旅行・航空業界にとって非常にエキサイティングなことだと捉えている。
 (Q.日本ではオーバーツーリズムの問題が出てきている。イギリスにはそうした課題はあるのか?)
 ツーリズムというものはイギリスの経済にとっても重要なものだと認識している。ビジネスにも観光客向けにもオープンしているし、ロンドンは中心地でグローバルシティということで、弊社としても関係各社や政府と協力して更に皆さんを惹きつけていきたいと思うし、問題であるとは思っていない。

聞き手:進藤潤耶(テレビ朝日・経済部)

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