「サンマ丸ごと弁当600円」「生姜焼き定食350円」客も心配…“激安グルメ”維持の秘密[2023/10/15 11:00]

 いまや高級魚となったサンマが丸ごと1匹入ったお弁当が、なんと600円。

 常連客:「助かるんですけど…大丈夫かなって思う」

 思わず客も心配するほどの値段です。

 常連客:「いつもこんな感じで、ふたが閉まらない」

 一方、こちらの大衆食堂では、豚肉にしょうゆのタレが絡まった生姜焼き定食。これで何と350円?

 常連客:「利益が出ているのか心配ですよね」

 安さの陰には、店主の血のにじむ努力がありました。客が心配するほどの激安グルメの秘密を追跡しました。

■常連客も心配…全部“600円”超人気弁当店

 長い行列の先にあるのは、新橋駅から徒歩10分ほどの所にある「お弁当のかわの」。

 昼のみの営業で、1日およそ800食が売れる超人気店です。

 常連客:「日替弁当、600円です。コンビニでは食べられないものが食べられる」「大盛です。プラス100円でこのくらいになります」

 この日の日替弁当はアジフライがついた「鶏竜田揚」。魚弁当は「サンマ」が丸ごと一匹入った豪華なお弁当です。

 付け合わせの副菜も、全部手作り。このクオリティでお弁当はすべて600円です。

 常連客:「大丈夫かなって思う。もうちょっと高くても」「ありえない値段だから。今時ね。いつも心配しています」

 物価上昇のなか、思わず客も心配するほどの安さです。

 店主の井上康一さん(49)は一体どうやって、この安さを実現しているのか?その秘密は開店からおよそ10時間前にさかのぼります。

■争奪戦勃発も? “ワケあり品”でコスト削減

 午前0時すぎ。ここから、井上さんの一日は始まります。睡眠時間は3時間半程度…。人件費削減のため、深夜の仕込みを1人で行っていました。

 この日、仕入れたのはサンマ。1匹300円近くするスーパーもある今や高級魚です。600円のお弁当に使って大丈夫なのでしょうか?

 井上さん:「ここちょっと傷があって擦れている。こういうところです。B級品ですね」

 魚を捕る際に付いてしまったわずかな傷や、皮の擦れがある、いわゆる“B級品”。ですが、味は一級品です。

 さらに、仕込みの合間に向かったのは豊洲市場。そこで井上さんが見ていたのが、曲がりや傷があり、切り落としてある大根に、市場にあまり出ないナスなどの“ワケあり”の野菜です。

 井上さん:「まぁいいかな〜」
 青果仲卸 鷲尾商店 細川倫久さん:「むいちゃえば鮮度は全然問題ない。価格的には、(正規品の)半値まではいかないですけど、全然違ってきます」「(ワケあり品は)頼んで入る形ではないので」
 井上さん:「争奪戦」

 物価上昇でいまや“ワケあり品”の争奪戦も勃発。他の店に先駆け井上さんは深夜、仕入れに来ていたのです。

 形の悪いピーマンは乱切りに。ナスは傷を切り落としていきます。

 井上さん:「乱切りだと形が悪くても調整できる」

 野菜の状態に合わせて献立。この日の副菜は「炒め煮」です。

■弁当完売も…「悩んで悩んで汗も流して」

 午前7時を過ぎると、スタッフが合流。この日は魚弁当300食に日替弁当を400食。そして、丼ぶりなど100食を準備。売れ残りが出れば赤字必至。果たして…。

 常連客:「サンマは貴重なので。高級魚なので買いに来ました」「きょうはサンマ目当て。これ食べて午後また頑張ろうかなって」

 オープンから2時間後、300食のサンマ弁当が完売しました。

 そして、午後2時すぎ。目標の800食はすべて売れましたが、物価上昇のなか600円の価格維持は難しいといいます。

 井上さん:「(値段を)上げてしまうのは一番近道。悩んで悩んで、考えて汗も流して、できるとこまでは頑張りたいなと思っています」

■350円の激安朝定食「利益出ているか心配」

 所変わって千葉県市原市にある大衆食堂「じょんがら店」。

 午前8時半。客を引き付けていたのは、店主が奏でる津軽三味線とともに、思わず疑ってしまうほど。なんと350円の激安朝定食です。

 常連客:「(Q.値段いくら?)350円」「(Q.350円?)はい、おいしいですよ」

 初めて来た客:「350円でいいの?」「すごいね。いいの?」

 一番人気は、豚肉にしょうゆのタレが絡まった生姜焼き定食。サバ味噌煮定食だって、350円。身は分厚く、ふっくらとした仕上がりです。

 初めて来た客(60代):「年金生活者には優しい」

 「ありがたい価格」という一方で、やっぱり聞こえてきたのは、お客さんも心配になる激安定食です。

 常連客:「利益が出ているのか心配。原材料費だけで、350円いっているはず」
 初めて来た客:「ちょっと心配ですよね。大丈夫かなって。やりくりできているのかなとか…」

■お買い得品でコスト削減 だしにもこだわり

 一体、どうやりくりしているのでしょうか?

 じょんがら店の店主・松永卓さん(81)。料理人歴65年の大ベテランです。

 激安定食のこだわりメニューは、すべて手作り。料理に使うだしは昆布と煮干しにかつお節。3種類使うことでうま味が増すといいます。

 一日30食以上出る生姜焼き定食。豚肉の仕入れは、スーパーのお買い得品を購入することで安く提供しています。

 松永さん:「お買い得品って書いてあるでしょ」

 350円の新鮮な刺身定食。この日は、身が厚く歯ごたえもあるイナダです。安さを実現した秘密はスーパーで魚を丸ごと購入しコストダウン。自らさばいて調理します。

 松永さん:「鮮度最高だよ。柵(さく)にしたら手間賃とられているからね」

 激安の朝定食が生まれたのには、きっかけがありました。

■大誤算も…「笑顔見るのがうれしい」

 実は、同じメニューがランチでは500円。昼の宣伝として、朝定食を始めたといいますが、お昼の客が朝に流れてしまう大誤算。

 松永さん:「ところがそれがそうは行かない。安い時だけ来るんだ。アハハハハハ。当てが外れた」

 それでも、続ける理由は…。

 松永さん:「夜勤明けの人もいるよね。一人暮らしも多い。やっぱり、お客さんが『ありがとう』って笑顔で帰ってくれる顔を見るのがうれしい」

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