多すぎる観光客で住民生活に影響 オーバーツーリズムの現状と対策は[2023/11/26 18:45]

 秋の観光シーズンがピークを迎えるなか、観光客の急激な増加が住民の生活などに悪影響を及ぼす「オーバーツーリズム」の問題が各地で起きています。現状と対策を取材しました。

■観光客急増 オーバーツーリズムの対策は

 観光客でごった返す、古都・鎌倉。駅前の小町通りは外国人の姿が目立ちます。コロナ前は海外からの観光客は3割ほどでしたが、今では半数を占めているといいます。

 オーストラリアからの観光客(41):「たくさん観光客がいますね」
 オーストラリアからの観光客(38):「海外からの観光客ですね。きょうはこの周辺を歩いて食べ物を食べたい」

 商店会では観光客の増加を歓迎する一方で、増え過ぎることで起きる弊害「オーバーツーリズム」に頭を悩ませています。

 鎌倉小町商店会 今雅史会長:「大きな問題だったのはマナーの問題。ゴミのポイ捨て、歩行者同士が(食べ物を)付けられたとトラブル。食べながら店に入ってしまう」

 実はコロナ前には、外国人客によるトラブルが続出。食べ歩きをした後、汚れた手で商品を触るなどの苦情も相次ぎました。26日、商店街では…。カレーパンを食べているのは、オーストラリアから日本に留学中の女性です。

 オーストラリアからの留学生(26):「食べるのは店内が良いと思う。だけど、人気のお店は中に入れないから店の前で食べるしかないのは問題だと思う」

 タイからの観光客(30代):「日本に来る前に日本のルールをYouTube動画を見て勉強してきた。日本では食べ歩きは禁止されていると知った」

 商店街では食べ歩きを禁止にはしていませんが、マナーを守ることを呼び掛けています。

 フランスからの観光客(31):「ルールに従います。ごみのポイ捨てはしないし、食べ歩きもしません」

 店側も、コロナ禍に準備を進めてきました。湘南のシラスが入った蒸したての玉子焼きがこの時期人気の店では、店内のイートインスペースを増やし、観光客の受け入れ体制を整えています。

 はんなりいなり鎌倉本店 露木悠店長:「イートインスペースは他のお客様を見て外国人客も流れてくるので、ゆっくり話しながら食べていく人が多い」

 海外から絶大な人気を誇る京都。紅葉が見頃を迎えている今、多くの外国人観光客たちが名所を訪れています。ただ、街の至る所でオーバーツーリズムの問題が深刻化しています。清水寺の最寄りのバス停では、ほとんどの人がバスに乗りきれません。京都市の路線バスは一日100便以上増やすなどの対策を取っていますが、追い付いていないのが現状です。

 航空・旅行アナリスト 鳥海高太朗さん:「京都市においても様々なオーバーツーリズム対策を始めているが、それ以上に多くの人が押し寄せている。“焼け石に水”が今の状況。今回、大きな問題としてはコロナ禍に対策をしっかり講じなかったことが大きな影響として挙げられる」

 世界遺産の厳島神社がある宮島。オーバーツーリズムの対応として、先月から「宮島訪問税」を徴収しています。船で宮島を訪れる観光客を対象に、一人100円を乗船料に上乗せして、受け入れ環境の整備などに充てます。

 26日も観光客であふれる、宮島の商店街。訪れる人の数はコロナ前を上回っています。ただ、地元の商店はコロナ禍での影響もあり、今、深刻な「人手不足」に陥っています。

 土産物店「鳥居屋」 佐々木健一社長:「我々の中で一番の問題は人手不足。多くの人が来ても対応しきれないところがある。従業員の数がホテルや土産物店ですごく減っている。本来なら100受けられるのが80しか受けられない。受け入れ態勢が整っていないのが大きな問題。これからの大きな課題はこの人手不足をどう解消していくか」

 人手不足を解消するための対策も始まっています。瀬戸内海に浮かぶ小豆島では、島の観光や移動手段として重要な役割を果たす船で、ある実証実験が。こちらは、無人航行システムを搭載した船です。

 小豆島・瀬戸内エリアマネジメント協会 船津宏樹理事:「船に自動運転の装置を搭載して、決まった航路を運航して自動で離岸、着岸ができる。船の自動運行で2つ解決できると思っている。人の担い手不足とオーバーツーリズムに対する対策」

 今後は小豆島内の充実を図るとともに、離島への移動でも自動航行を広げていきたいといいます。

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