“福利厚生で手取り増”社員も企業もお得な「第3の賃上げ」食費半額や自宅借り上げも[2024/02/18 23:30]

連日、歴史的な株高を記録する中、春闘が始まっています。
大企業で賃上げムードが高まる中、焦点となっているのが中小企業。
「第3の賃上げ」という新たな取り組みも始まっています。

■「人材逃がしたくない」賃上げ巡る企業の本音

おととい16日、東京国際フォーラムで開かれたのは、町工場の見本市。技術自慢の74社が一堂に会しました。こちらは一見、ただの箱のようですが…
(ICOMA 生駒崇光 社長)「変形させていきますね」
広げること30秒。完成したのはなんと「原付バイク」。畳めば持ち運び可能で、家の中にも置くことができます。
出展する町工場がアピールするのは、日本が誇る匠の技。そんなモノづくりの経営者にことしの賃上げについて聞いてみると…
(金属の鋳造加工 エフビジュー 古田友幸 社長)「やっぱり難しいですよね。賃上げ賃上げしていったら、今まで10円(の単価)で頑張ってきたものを、11円、12円上げなくてはいけない。12円で見積もり出したら、お客様がこちらには振り向いてくれない」
Q.賃上げは?
(マコト バイオニクス 小西真 社長)「します。うちにも従業員がいまして、従業員は僕よりも優秀なやつなんで、逃がしたくないです」
番組で出展した60社に取材したところ、「賃上げする」と答えたのは22社、「賃上げしない」が12社、「検討中・未回答」が26社という結果でした。

■廃材活用し経費削減 賃上げ巡る企業の工夫

(佐々木一真アナウンサー)「見本市にも出展を行っていました、東京葛飾区にあります町工場です。こちらでは様々な企業努力をすることによって賃上げを実現しているといいます」
ゴムや樹脂などさまざまな素材の型抜き加工を行う創業63年の町工場。実際に製品を見せてもらうと…
(精工パッキング 平井秀明 社長)「これが実は世界で一番細い輪ゴムです。これちょっと腕に巻いてみますか。これぐらいの感触です」
(佐々木一真アナウンサー)「もう糸ですね。細い!」
細さはわずか0.3mm。今後、大腸ポリープの手術に使用される予定だといいます。しかし、賃上げの裏では…
(精工パッキング 平井秀明 社長)「電気代を少しでも抑えるようなブレーカーを入れてみようとか。ゴミを出す回数を減らしてちょっと経費を削減しようとか」
さらに…
(精工パッキング 平井秀明 社長)「今日はですね、新商品のズボラップ」
SNSで自社製品を積極的に発信。去年は9件の新規契約に繋がったといいます。
(精工パッキング 平井秀明 社長)「50年以上の付き合いのお客さんで、50年前の単価がそのまんまというものも中にはあるんですよね。でも新しいお客さんを獲得するとそこからの単価になるので」

一方こちらも、賃上げを決めた町工場の一つです。
(新越精機 藤塚敏之 社長)「これはナンバープレートですね。それを止めるための封緘(ふうかん)になる」
(佐々木一真アナウンサー)「確かにナンバープレートのところについてますね、この部品」
(新越精機 藤塚敏之 社長)「これの製品というよりはこれの金型ですね。 金型を作っています」
創業56年、1mmの1000分の1単位で部品を製造する高い技術力のある町工場です。
(新越精機 藤塚敏之 社長)「毎年少しでも頑張った人には上げていきたいと。(賃金を)上げるにしても原資はどこから持ってくるんだと。そこに関しては非常に頭が痛いです。節約とかももちろん大事なんですけれども、生産性を上げて1日でどれくらいできるのか」
そこで生産性向上のために補助金を利用して導入したのが…
(新越精機 藤塚敏之 社長)「こちらが複合研削盤というものですね」
これまで3つの機械で行っていた作業がこの機械1つで可能になり、時間も半分以下に短縮できるといいます。
(新越精機 藤塚敏之 社長)「日本のモノづくりは世界トップクラスって言われていましたけれども、やっぱり今危機であると思うんですよね。技術伝承も含めてですね。設備投資も含めてですけども、どんどんやってレベルを上げていきたいと思っています」

■食費半額を経費に 福利厚生で”手取り増”

さらに“新たな賃上げ”の動きも…
(エデンレッドジャパン 天野総太郎 社長)「第3の賃上げアクションは、実質手取りを増やすことができる」
「第3の賃上げ」とは、どのようなものなのでしょうか。
都内のIT企業で働く井上さん。中3と小5、2人の子を持つ父親です。
(アイシーティーリンク 井上桂さん(46))「値段がいろいろ上がっていて、ちょっと生活も苦しくなってきている印象はある」
そんな井上さんの強い味方となっているのが…
(井上桂さん)「会計はチケットレストランで」
取り出したのは、1枚のICカード。
(井上桂さん)「会社の福利厚生の1つで、配られているカードです」
井上さんの会社で利用しているのは、会社が従業員の飲食代の半分を負担してくれる「チケットレストラン」という福利厚生サービスです。
(アイシーティーリンク 吉野真吾 副社長)「チケットレストランのシステムを利用しますと食事補助という形を取る際に、経営側としてはこれを経費として計上することが可能です。満額本人の(実質)手取りになるというところが大きなメリットだと思います」
上限金額は、1カ月当たり7000円(税抜き)。こちらの会社では、賃金のベースアップとハイブリッドで、福利厚生も充実させたいといいます。

■自宅を借り上げ“社宅”に 1万円強の手取り増

食事補助以外に、こんな福利厚生も…
(YOUTRUST 西川菖さん(26))「こちらがいわゆるリビングスペースで…」
1Kで家賃8万9000円のこちらの部屋。元々、個人で契約していたのですが、いまは…
(YOUTRUST 西川菖さん(26))「勤めている会社が、借上げ社宅制度を使っていまして、会社が家賃を支払う形となっています」
この男性の会社で導入しているのが、「借上げ社宅サービス」。社員が借りている部屋を法人契約に切り替え、家賃の一部を会社が支払うことで、給与の額面が減ります。それによって社会保険料や所得税などが抑えられるため手取り額が増える仕組みです。
(YOUTRUST 西川菖さん(26))「昨年の12月から利用しているので、初年度ですと、住民税と所得税が反映されて、だいたい(年間)7万8千円分、翌年度になりますと、社会保険料の分も反映されるので、合計で(年間)16万3千円ほど手取りが増えるような計算になっています」
自分が住みたい部屋を選べるのもこのシステムの特徴です。
(YOUTRUST 西川菖さん(26))「(会社に)決められた物件ではなく、自分で住みたい家を選んで住むことができるのでその点すごく使いやすくていいなと思っています」


2月18日『サンデーステーション』より

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