2024年の年末から日本航空や三菱UFJ銀行、NTTドコモなどの企業が相次いでサイバー攻撃を受け、システムの不具合など大きな被害がでています。
日本は、1年間で6000億回のサイバー攻撃を受けています。
なぜ、日本が標的になるのでしょうか。
■航空・銀行・通信に相次ぐサイバー攻撃 誰が何の狙いで?
年末年始に起きたサイバー攻撃です。
12月26日、JALでネットワーク障害が発生し、欠航や遅延、荷物のチェックインができなくなるなどの影響が出ました。
DDoS(ディードス)攻撃とみられています。
そして、三菱UFJ銀行、りそな銀行、みずほ銀行などの大手銀行で、年末にインターネットバンキングがつながりにくい状態になりました。
これも、DDoS攻撃とみられています。
2025年に入っても、NTTドコモがDDoS攻撃を受け、情報ポータルサイトなど一部のサービスにアクセスしづらい状況になりました。
DDoS攻撃とは、複数のコンピューターやデバイスなどから大量のデータを送信して、攻撃対象のサーバーやネットワークを機能不全に陥らせるサイバー攻撃です。
「例えるなら、買い物しようとしているのに、大勢に妨害されてお店に入れないイメージ。どこが妨害しやすいか、調査する目的の可能性もある」といいます。
年末年始にDDoS攻撃の被害を受けた企業の多くは、国民生活や経済活動の基盤であり、支障が生じた場合に国や国民の安全を損なう恐れがある『特定社会基盤事業者』として政府から指定された事業者でした。
DDoS攻撃の狙いについて、2024年12月まで警察庁でサイバー捜査を担当していた、元警察庁サイバー捜査課長の棚瀬誠さんによると、
生活に欠かせない機関が狙われたことから、
●被害企業・団体の信頼を損なわせ、日本経済を混乱に陥れる、
●復旧にかかる時間や復旧の手段の脆弱性を見て、次の攻撃手段を模索している可能性がある、
といいます。
「外部の誰からでも攻撃できるため、『内部犯行』の可能性は低い。攻撃主体は明らかではないが、国家規模の関与が疑われる組織が公共交通機関や社会インフラをターゲットにしている可能性もある」としています。
「家庭で使用するWi‐Fiのルーターが、知らないうちにウイルスに感染して、知らないうちにDDoS攻撃に悪用されていた事例もある」ということです。
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■台湾発表 中国からサイバー攻撃 交通・金融機関に被害■台湾発表 中国からサイバー攻撃 交通・金融機関に被害
台湾も、DDoS攻撃による被害を発表しています。
台湾当局機関に対する2024年のサイバー攻撃は、1日平均240万回で、大半が中国のサイバー部隊による攻撃だということです。
台湾当局の報告書では、中国によるサイバー攻撃の一部は、台湾周辺での中国の軍事演習に合わせて行われ、台湾の交通機関や金融機関へDDoS攻撃などを仕掛けたとし、嫌がらせと軍事的威嚇を強化することが狙いだと主張しています。
■台湾有事 サイバー攻撃のシミュレーション 日本で何が起こる?
中国が台湾に軍事進攻した際のシミュレーションでは、サイバー攻撃についても想定されています。
『台湾海峡危機政策シミュレーション』というものがあります。
これは、日本のシンクタンクが主催するもので、中国が台湾侵攻した最悪の場合を想定して、日本への影響や対応などをシミュレーションしています。
これまでに4回開催され、国会議員や自衛隊幹部などが参加しています。
台湾との分断を企てるために、日本に対して中国からサイバー攻撃が行われた場合も想定しています。
シミュレーションを見ていきます。
サイバー攻撃の初期段階では、政府や報道機関のウェブサイトがサイバー攻撃によるシステム障害で停止し、正しい情報発信が困難になります。
サイバー攻撃が激化したときに考えられる被害です。
病院で、電子カルテのシステムが停止し、診察や手術ができない状態になります。
被害2つ目は、携帯電話です。
通信障害が発生し、電話がつながらなくなります。
被害3つ目は、金融機関です。
システム障害が発生し、オンライン決済などが利用できない状態になります。
被害4つ目は、放送局です。
放送システムが破壊され、復旧までの約1〜2カ月の間、放送が停止します。
「実際に、この2、3年で、重要インフラが様々なサイバー攻撃を受けて、一時的に止まってしまったケースは数多くあり、一部は有事を想定した攻撃の可能性も考えられる」といいます。
また、
「日本のサイバー防御については、人数的にも、技術的にも、法体制的にも、中国と相当な差がある」ということです。
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■日本へのサイバー攻撃 年6000億回 なぜ狙わせる?■日本へのサイバー攻撃 年6000億回 なぜ狙わせる?
日本へのサイバー攻撃は、1年間で約6000億回と言われています。
これは、情報通信分野の研究開発を行う国立の研究機関、NICTが観測した2023年の日本へのサイバー攻撃の数です。
世界の中で、日本はサイバー攻撃の標的になっています。
セキュリティソフトなどを扱う会社・ブラックベリージャパンの調査によると、2024年の4〜6月、日本は、新たなウイルスなどが検出された数が世界で2番目に多かったということです。
なぜ、日本はサイバー攻撃集団に狙われやすいのでしょうか。
「日本には盗みたくなる機密情報や、お金に換えやすい重要な情報が多い。また、日本では多くのシステムが使われているため、同時に、管理が行き届いていないシステムも増えてしまい、攻撃されるスキができてしまっているのではないか」と話しています。
「サイバー攻撃集団は、一度攻撃が成功すると、同じターゲットに何度も攻撃する傾向がある。日本の中の脆弱なシステムが、そういった形で狙われがち」だということです。
(「羽鳥慎一モーニングショー」2025年1月15日放送分より)