コメの価格高騰が続く中、政府の備蓄米の入札が3月10日から始まりました。
備蓄米の放出で、コメの価格は下がるのでしょうか。さらに、秋の新米が、作付け前にも関わらず、獲得競争が始まっています。
■備蓄米の入札開始 放出へ「政策効果なければ、さらに追加」
備蓄米の入札です。
政府は放出する備蓄米21万トンのうち、初回分の15万トンの入札を3月10日開始しました。
落札後は、政府から集荷業者に備蓄米が引き渡され、3月下旬ごろに、スーパーなどの店頭で販売される見込みです。
今回の入札に参加したJA熊本経済連は、県外産の備蓄米1000トン分を入札しました。
JA福井県は、福井県産の備蓄米『ハナエチゼン』と『あきさかり』を2400トン余りすべて買い入れる方針です。
入札額に関して、JA福井県は現在の取引価格並みの金額で入札したとみられています。
「入札なので価格の水準が分からない。現在の相場観を維持するようなかたちで入札しないと、今後の生産者の手取りにも影響してくる」と話しています。
放出予定の備蓄米は残り6万トンです。政府は早期に入札を実施する方針です。
「21万トンを出した以上は、政策効果がなければ、さらに追加する」としています。
■コメ価格 9週連続値上がり 備蓄米の放出で価格下がるのか?
備蓄米の放出で、コメの価格はどうなるのでしょうか。
スーパーでの平均価格は、2024年3月、5キロあたり2045円でしたが、2025年2月の第4週では、5キロあたり3952円と、2倍近くとなっています。
2025年に入って、9週連続で値上がりしています。
備蓄米の放出発表後も、値段は下がっていません。
埼玉県のスーパーマルサン越谷花田店の、3月9日時点でのコメの販売価格です。
▼茨城産『コシヒカリ』が5キロで4850円。
▼北海道産『ゆめぴりか』が5キロで5282円。
▼新潟県産『新之助』が5キロで5399円。
コメの価格高騰について、買い物客の声です。
「もち麦を混ぜたりして白米だけで炊く日を少なくしている。今の値段じゃ手が出ない」
「いつも10キロ単位でコメを買うが、(今後の値下がりに期待して)5キロで買った」
「(備蓄米が)早く出回るかどうか、不透明な部分はあるが、期待はしている」
「コメを扱う関係者は、先高観をもっていないし、下がるという見通しを持っているのではないか」との見解を示しました。
「一時的に(価格が)下がるかもしれないが、また新米が出るまでに足りなくなったら、相場的には、上がる前のような(安い)価格にはなるとは思えない」と話しています。
備蓄米放出について、首都圏のコメの仲卸業者や卸売り業者の見解です。
「業界の人間と話す限りは、備蓄米放出で価格が下がるとは思っていない」
「放出発言後にじわりじわりと価格はさがっているが、大きくは変わらないと思う」
向こう3か月の価格の見通しについて、コメの卸売り業者などでつくる米穀安定供給確保支援機構は、『コメの価格は備蓄米の放出で価格上昇の勢いが弱まるという見方も広がっているが、安くなるとは考えていない』としています。
1月末時点のコメの民間在庫量は、230万トンで、1年前と比べると、44万トン減っています。
これは2009年の調査開始以降、1月としては最少です。
「備蓄米放出の効果はより短期的で、すぐにコメがまた値上がりする可能性がある」としています。
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■すでに「完売状態」!?田植え前から新米の獲得競争■すでに「完売状態」!?田植え前から新米の獲得競争
2025年の秋の新米について、すでに獲得競争が起きています。
2025年の主食用米の生産量の目安を各都道府県が公表しました。
29道県が2024年の生産実績より増加の見込みです。
さらに、作付け面積も2024年の実績より約3万9000ヘクタール増加するということです。
「昨年の生産量と今の民間在庫量を合わせれば、そんなに買い急がなければいけない状況ではない」としています。
「まだ作付け前だが、大手外食チェーンや一般の方から2025年産米の先買いの連絡が続いている。もう完売と言っても差し支えない状況。 酒造用のコメの面積を減らして、 主食用に当てる対応をしていく」としています。
コメの確保の動きは他にもあります。
関係者によると、JA全農にいがたでは、生産者へ前金として支払う『借り渡し金(概算金)』の目安の提示を、例年の8月から2月末に前倒したということです。
さらに、コシヒカリの一等米で、2024年産の提示額から60キロあたり6000円(35%)引き上げの方針だということです。
なぜ目安の提示を前倒したのでしょうか。
JA全農にいがたの、2024年度の主食用米の集荷率は28%で、初めて3割を割り込みました。
そのため、早期に目安を示すことで生産者のJAへの出荷意欲を高め、在庫の確保につなげたいということです。
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■『消えたコメ21万トン』備蓄米放出で出てくる?正体は?■『消えたコメ21万トン』備蓄米放出で出てくる?正体は?
『消えた21万トン』のコメについてです。
「昨年からずっと言ってきたが、コメはある。コメは十分に供給されているのに、市場に出てこないのであれば、どこかにスタック(停滞)していると考えざるを得ない」と話していました。
そして、2月7日に備蓄米の放出を表明し、2月14日に正式に発表しました。
「卸売業者から大手スーパーに対して『お米あるけど買いませんか』という申し出がかなりの数出てきたという報告を受けた。流通市場は、動き出したと受け止めて良いのでは」と話しました。
『消えた21万トン』とは、2024年のコメの生産量は679万トンで、前の年より約18 万トン増えていますが、2024年の年末のJAなどの集荷業者が集めたコメの量は、215万トンと、前の年よりも約21万トン減りました。
この21万トンが『消えた21万トン』です。
これが1月末時点では、さらに2万トン拡大し、23万トン減ったと農水省が発表しました。
実際、備蓄米の放出発表後、流通量に変化はあったのでしょうか。
「目立った動きはない」
「変化は特にない」と話しています。
「(備蓄米放出発表 以降)特にここ1、2週間でよりコメが手に入らなくなった。(問屋の)出荷制限で欲しい数が入荷できない。『(5キロ袋を)50 袋、100袋ください』と言っても『10袋でお願いします』と言われる」と話しています。
「政府の動きをみて、投機狙いの業者が持っているとされる『消えた21万トン』が出てくる気配はない。投機目的はそもそも微少で、政府の『投機説』には疑問」
では、『消えた21万トン』はどういうことなのでしょうか。
座小田記者の取材です。
1つ目は、作況指数が過大である可能性です。
作況指数とは、生産量を推計するもとになるもので、コメの出来具合を表す指標です。2024年の全国の作況指数は『平年並み』でした。
2024年のコメの出来はどうだったか、コメ農家に取材しました。
「毎年同じぐらい作っているが、2024年は収穫量が約1割減った。豊作だったという感覚はない」
「例年の収穫量は10アールあたり約8俵半。2024年は7俵半で、1俵分も少なかった(約1割強少ない)」
なぜ作況指数と現場の実態と乖離が生まれるのでしょうか。
「作況指数は、コメ全体の出来具合を示す。そのうち我々が食べているのは1等米で、収穫量が猛暑で少なくなっている。農家によっては、例年より2割ほど(1等米の)収穫量が少ない。だから乖離があると感じる」
『消えた21万トン』の可能性2つ目は、消費者・飲食店などが在庫を多めに持とうとしているのではないか、ということです。
2024年の夏にコメが品薄になって『令和の米騒動』と言われましたが、そういった事態に備えて、消費者と飲食店が多めに備蓄しておこうとしているということです。
国民全体が2週間分の在庫を持とうとすると、約30万トンの需要が生じるということです。
SNS上の声です。
「安く手に入るうちに、コメを手元に置きたいという消費行動が起きている。最近でも、農家の直販サイトでは、売り切れて直販をやめるところも出ている」
(「羽鳥慎一モーニングショー」2025年3月11日放送分より)