政府による備蓄米の放出が始まっていますが、スーパーのコメの価格の高騰は止まりません。
■備蓄米流通に偏り「すごく不平等」備蓄米入らず値上げ検討も
スーパーでのコメの平均価格は、5kgあたり4214円、14週連続の値上がりです。
前年の同じ時期と比べて2倍以上です。
4月14日、江藤農水大臣が卸業者や小売業者らと意見交換会を開きました。
業者側からは、備蓄米について、偏在(コメの放出先が偏っている)の問題や、継続的な放出を求める声があがりました。
「通常のコメは5kgで4000円だが、備蓄米は3000円台半ば。棚に陳列するそばから売れていく状況。ただ、地域や企業規模によって、まだ行き渡っていないのが現状」と話しています。
「店頭に並び始めるのは、4月10日ぐらい」
と話していましたが、意見交換会の後には、
「中小のスーパーの方々は、4月末とか、5月に入ってしまうかもしれない。ましてや遠隔地は輸送の手間もかかるので、私の発言よりも時間かかるのではという指摘も」あったと話しました。
備蓄米の入札条件には、同じ量・品質のコメを政府が原則1年以内に買い戻すと決められているので、買い戻しに対応しやすい大手集荷業者に備蓄米が集中します。
3月に行われた1回目の備蓄米の入札では、JA全農が全体の約94%を落札しました。
備蓄米が届いていない神奈川県内のスーパー『セルシオ』は、3社の問屋と契約していますが、備蓄米を落札した集荷業者と問屋が取引がないため、店舗に備蓄米が入っていません。
「5月からは値上げを検討している。今は、5kg4266円(税込み)で販売しているが、5000円以上(税込み)にする予定。備蓄米の恩恵という部分で、すごく不平等な状況だと感じる」と話しています。
「規模の大きいところだけではなく、町のお米屋さんも含めて、均等にいきわたる工夫をしなければいけない。3回目は、入札資格審査をもう一回やろうと思っている」と、入札に参加できる集荷業者の対象を見直す考えです。
■日米の関税交渉『コメ死守の歴史』最優先のワケ 今後どうなる
日本とアメリカのコメの関税についてです。
「我々は、日本の農産物市場へ、もっと多くの良いアクセスが持てるはずだ」と、農業分野を中心に市場開放を求める考えを強調しました。
「日米のコメの関税をめぐる交渉は、大きく分けてこれまで3回行われてきた。今回、アメリカはコメを『攻めの交渉カード』として使い、実際は牛肉・豚肉・小麦などで、実利を取りたいのではないか」といいます。
これまでに行われた、コメの関税をめぐる日米交渉です。
1993年には、市場開放を求めるアメリカの声に応じる形で、貿易自由化交渉『ガット・ウルグアイ・ラウンド』に合意して、『ミニマム・アクセス』を導入しました。
ミニマム・アクセスとは、ほとんど輸入を行っていなかった品目について、他国に最低限の輸出機会を提供するというものです。
コメについて、日本は、1995年以降、数量を決めて無関税で輸入開始。2000年以降は、年間77万トンを無関税で輸入しています。
「部分的とはいえ、お米の輸入に道を開くことは、断腸の思いの決断だった」と話しています。
2015年のTPPでの交渉です。
アメリカは、日本にコメの関税撤廃を要求、日本は関税撤廃を回避するため、さらに7万トンの無関税の特別輸入枠を設けることで、アメリカと合意しました。
その後、2017年、アメリカはオバマ政権からトランプ政権に変わりTPPを離脱、合意は放棄されました。
2019年の日米貿易協定では、アメリカは、牛肉・豚肉などの関税撤廃や引き下げのほか、TPP離脱で放棄したコメ7万トンの特別輸入枠を改めて要求しました。
それに対して、日本は、牛肉・豚肉の関税引き下げなどを受け入れる代わりに、コメの関税撤廃や7万トンの特別輸入枠を回避しました。
「コメは日本人の主食のため、一番重要な品目の位置づけ。海外が日本に食料を売ってくれなくなっても、コメなら100%自給できるという考えから、最優先で守ろうとしている」ということです。
■民間輸入激増 関税でも国産より割安 ベトナム産米 6倍輸出へ
外国産米の輸入が急増しています。
コメの輸入は、政府が輸入する分と、民間の商社や卸業者が輸入する分があります。
政府は、無関税で年77万トンを輸入し、それを商社や卸業者が購入。そこから小売業者や消費者へと届きます。
民間輸入は、商社や卸業者が1kg当たり341円の関税を支払い購入し、そこから小売業者や消費者へと届きます。
この政府輸入米の柔軟な活用が検討されています。
現在、政府輸入米の77万トンは、主食用が10万トン、飼料用などが67万トンと、固定されています。
それを、今後は主食枠を拡充し、輸入米を『国内需給の調整弁』にしていくというものです。
大手スーパーでも、輸入米が活用されています。
イオンでは、4月10日から、政府輸入のカリフォルニア産米8割、国産米2割のブレンド米『二穂の匠』が販売されています。
価格は4kgで税込3002円。5kg換算だと、約3750円で、国産より1割ほど安くなっています。
「一つ一つのコメの粒がはっきりしていて、かんでいくほどに甘みも出てきて、国産のコメと変わらなく感じる」ということです。
そして、コメの民間輸入が急増しています。
2023年度が368トンでしたが、2024年度は2月末の時点で1497トンです。
2025年2月だけで506トンと、ひと月で2023年度の年間量を上回っています。
神奈川の輸入食品業者では、政府輸入米を販売しています。
ベトナムジャポニカ米が5kg約3300円で、国産より2割程度安く、味も国産に近いということで、ほぼ売り切れ状態ということです。
追加で政府輸入米を仕入れようとしましたが、応募が多く購入できませんでした。
そこで、4月21日以降、関税のかかる『民間輸入』で、ベトナムジャポニカ米を販売予定です。
価格は5kg約4000円を予定しています。
1705円の関税をプラスしても国産より安くなっています。
「国産米と同じようなコメを求める客の問い合わせに対応するため、民間輸入でカバー。価格や量で満足してもらいたい」と話しています。
ベトナムの食品流通大手『タンロングループ』は、日本のきらぼし銀行と提携して、ベトナムジャポニカ米を前年の6倍の2万トン日本に輸出予定で、日本の複数のスーパーと輸入に向けた話し合いをしているということです。
タンロングループは、コメを日本向けにするため、契約農家に低農薬など日本の安全基準をクリアできる農業技術を指導しています。
「日本全国のスーパーから、『日本水準のベトナム米が欲しい』という問い合わせがきている。日本向けのコメの生産規模を拡大中」と話しています。
■コメ輸出拡大 閣議決定 5年後7.6倍に ひっ迫時には国内転用も
今後の日本の農業政策です。
『食糧・農業・農村基本計画』で、米粉などを含むコメの輸出拡大などを閣議決定しました。
2024年は4.6万トン、輸出額136億円でしたが、これを、5年後の2030年には約7.6倍の35.3万トン、輸出額を922億円に拡大するというものです。
輸出拡大に向けて、低コストで生産できる輸出向け産地を新たに育成したり、海外ニーズの高い有機米の作付け拡大をします。
さらに、輸出用に生産を増やした分を、国内需給がひっ迫した時に、国内向けに転用するということです。
「輸出を増やす方針には大賛成。しかし、実際は人手不足、生産コスト増などを考えると、生産量を増やせる状況にない。国内がコメ不足の今、まずは、農家が心置きなく生産できる体制づくりを進めてほしい」と話しています。
(「羽鳥慎一モーニングショー」2025年4月16日放送分より)