経済

モーニングショー

2025年5月15日 16:00

コメ高騰も農家倒産が過去最多 農家収入と店頭価格 差額どこへ 巨大組織・農協とは

2025年5月15日 16:00

広告
3

コメの価格高騰が続いている中、コメの大手卸売業者が好調な決算を発表しています。
コメ農家に農協などの集荷業者が支払う額と、スーパーなどの店頭価格は5kgで2700円ほどの差があります。この差額はどこにいったのでしょうか。

■コメ価格高騰なのに…農家倒産・休業が過去最多

スーパーでのコメの平均価格は、5月4日までの1週間で5kgあたり4214円、前の週を19円下回り、18週ぶりの値下がりとなりました。
ただ、前の年の同じ時期に比べて約2倍の価格です。

こうした中、倒産や休業、廃業するコメ農家が増えています。
調査を開始した2013年は21件でしたが、2024年は89件で、調査開始以来最多でした。

倒産・休業・廃業が増えている要因について、石川県のコメ農家の60代男性は、
「長く続いたコメ価格低迷が、経営余力を食いつぶし、近年の肥料高騰に加えて2023年、2024年の高温被害で作況が公表値より悪かったことが、トリガーになっている。人手不足で収量も伸びない状況。今のコメ価格高騰は、農家に十分転嫁されていない」と話しています。
広告

■農家収入と店頭価格 差額どこへ?大手卸売業者 好調決算のワケ

コメ農家に支払われるお金と販売価格の差です。

集荷業者が農家からおコメを買い取るときに、農家に支払う金額の平均は精米5kgあたり1528円、スーパーでの平均価格は5kg4214円、消費者の手元に届くまでに2686円増えています

なぜ、こうなるのでしょうか。
コメの主な流通経路です。

『2024年産の精米5kg』での試算です。
生産者が集荷業者に出荷するときは1528円です。
次に、集荷業者が卸売業者に出荷するときは741円増え、2269円になります。
この741円は、集荷業者にかかるコストは275円、集荷業者の利益は466円です。
ただ、この466円がまるまる集荷業者の利益ではなく、『追加払い』として農家に支払われる可能性もあります。

卸売業者とスーパーなどの小売業者の取引価格はわかっていませんが、スーパーなどの小売業者が消費者に販売する平均価格は、4214円です。

集荷業者の販売価格2269円から1945円増えています。これは、卸売業者と小売業者を合わせたコストが、482円、卸売業者と小売業者の合計の利益が、1463円という試算になります。

卸売業者の利益についてです。

コメ卸大手の『木徳神糧』です。
2025年1月〜3月期の売上高は、368億7100万円で、前年同期比で、23.1%増加
純利益は、12億9000万円で、前年同期比で約3.8倍です。

さらに、コメ卸大手の『ヤマタネ』です。
2025年3月期の売上高は、809億2200万円で、前期比で、25.4%増加しました。
純利益は、30億9100万円で、前期比で、24.3%増加しました。

卸売業者は、こうした利益上昇について、
コメが少ない中で、調達したコメを適正に価格転嫁して売ることで、利益が確保できている。販売先から何とかコメを調達してほしいという要望があり、多少原料が高いものであってもニーズが非常に高い。今は、スーパーの特売などもなく、割引した販売もないので過去に比べると、利益率が上がっている」としています。
集荷業者の利益について、農協の関係者は、
「卸売業者との取引価格のうち、農家への追加払い含むコストを差し引いた利益は、数パーセント」としています。
小売業者の利益について、小売業者のAさんは、
「仕入れ価格は、2024年と比べ2倍以上に上がっている。コメは高いと売れないため、売り上げも利益も例年に比べ3分の1に減った
小売業者のBさんは、
「コメ価格高騰で販売価格を上げているが、需要は高まっていて、売り上げは増えた
と話しています。
価格高騰の要因について、コメの生産や流通など、農業経営に詳しい、宮城大学の大泉一貫名誉教授です。
「価格高騰の要因の1つは、流通ルートの複雑化。すべてのコメの流通が、集荷業者から小売りまで一直線に行くわけではない。卸売りや小売業者は枝分かれしていて、それぞれ取引があるため、その分コストや利益分が価格に上乗せされていく
広告

■巨大組織『農協』の実態 組合員数1000万人超 組織の目的は?

『農協』という組織についてです。

農協は、農業協同組合(JA)で、1947年設立です。

協同組合は、同じ目的を持った個人などが集まり、お互いに助け合う組織のことです。

農協の重要な使命です。

・農業の生産力を高める
・農業所得を向上させる
・地域農業を発展させる

あくまでも、組合員の生活を守り、向上させることが目的で、利潤の追求ではないとされています。

農協の組合員数です。
正組合員と准組合員がいます。
2024年度の組合員数です。
正組合員は、農業を仕事にしている人や団体で、389万人。
准組合員は、地域に住む農業以外の仕事をしていて加入している人で、630万人です。
合計1019万人です。

農協の職員数の割合です。
信用(金融サービス)、共済(保険事業)の職員が、全体の約45%を占めています。

営農指導員は、農業の技術・経営など、農家の相談相手になり指導を行います。
『農協の顔』と言われ、農協と農家を結ぶパイプ役です。
2022年度は、約1万2000人で、全体の約7%です。
農業に携わる職員より、金融、保険事業に携わる職員が多くなっています。

コメの生産量に占める農協の出荷割合は、年々減少していて、2022年産米は39.1%と、4割を切っています。おコメを扱う量が減ってきています。

農協の信用事業、金融サービスです。
2023年度末の預貯金残高は、
農協は、108兆円
ゆうちょ銀行は、192兆円。
三菱UFJ銀行は、200兆円。
みずほ銀行は、154兆円。
三井住友銀行は、153兆円で、
農協の預貯金残高は、メガバンクに迫る額です。

農協の共済事業、保険事業です。
2023年度の生命保険事業の総資産は、
JA共済は、58兆円
日本生命は、83兆円。
第一生命は、35兆円。
住友生命は、38兆円。
明治安田生命は、47兆円と、
JA共済の生命保険事業は、大企業並みです。

農協の、1組合あたりの部門別損益です。

2022年度で、
信用事業が、4億3900万円の黒字。
共済事業が、2億1000万円の黒字。
一方で、農業にかかわる販売・購買事業などは、2億6200万円の赤字です。
合計は、3億8700万円で、農業にかかわる事業の赤字を金融や保険で補填している形です。

(「羽鳥慎一モーニングショー」2025年5月14日放送分より)

広告