高騰するコメの価格安定に向けた政府の備蓄米の放出を巡り、農林水産省の『新たなルール』が波紋を広げています。
与党内からは備蓄米で「国がもうけている」という指摘も出ています。
新たなルール『優先枠』でコメは安くなるのでしょうか。
■備蓄米 毎月10万トン放出へ 古古米が8割 品質は?安くなる?
備蓄米をさらに放出します。
政府は毎月10万トンの放出を決めました。
「4回目の入札を5月28日から30日にかけて行う」と発表しました。
これまで、3 月から、
1回目14万トン、
2回目7万トン、
3回目10万トンと放出。
さらに7月まで毎月10万トンずつ放出し、合計61万トンを放出します。
5月に放出される備蓄米10万トンの内訳です。
1万トンは新米、
1万トンは古米、
のこり8万トンは2022年産の古古米です。
古古米の品質について農水省は、低温倉庫で保管していて、新たに仕入れたものと遜色ないとしています。
「品質には全く問題ないが、22年産であることは間違いない。常識的に考えて前回より入札の落札価格は少し下に向かうのではと期待している」としています。
■備蓄米「国がもうけている」苦言も コメ価格下がらないワケ
備蓄米の価格が高い理由を見ていきます。
備蓄米の売り渡しは入札によって行われます。
集荷業者が入札して、最も高値を付けた業者が落札する仕組みです。
その結果、3回目の入札対象となった備蓄米は、政府が買い入れた時には60キロあたり1万2829円でしたが、落札価格は60キロあたり2万1926円。
その差額は9000円以上です。
「入札でやると、安いところに行くわけではない。高いところに行く。それなりのマージンを取るとさらに高くなる」と指摘しています。
苦言もでています。
「差額のお金は、国に入っている。『なんで国が儲けているんだよ』と。国民のために安いコメを出すためにやっているんじゃないのか」
「備蓄米は国有財産ですから、(放出する場合は)競争入札に付すのが大原則です。これはやはり曲げられなかった」としています。
「特別に安く売り渡すためには、新たに法整備をする必要があると考えているが、それには時間がかかる」と説明しています。
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■備蓄米入札に新ルール『優先枠』狙いは?現場の本音■備蓄米入札に新ルール『優先枠』狙いは?現場の本音
備蓄米の入札に新たなルール『優先枠』が設けられます。
優先される条件は、集荷業者の引き取りから小売りまで約1カ月を目安とした早期の販売計画を立てることです。
優先枠は 2 種類あります。
備蓄米は毎月10万トン放出されます。
そのうち6万トンが『優先枠』です。
4万トンは、集荷業者が卸売業者を通じてスーパーなどの小売店へ販売します。
2万トンは、集荷業者が直接町の米店などに販売します。
優先枠を設けた理由は、流通の停滞です。
JA全農が3月に落札した備蓄米約19万9000トンのうち、出荷したのは、5月15日時点で半分にも満たない41%でした。
「具体的な商談や、備蓄米を精米するための調整に時間がかかっている」
もう一つの理由は卸売り段階でのコストです。
備蓄米が、集荷業者から卸売業者にわたって、小売業者に届くまでの間にかかるコストを農林水産省が調べました。
その結果、2022年産の時の調査と比べて、卸売業者の経費や利益等が最大で約3.4倍になっていました。
集荷業者から、卸を通さずに町の米店にわたることで、コストが減る可能性があります。
「優先枠については、卸を通さないということになれば、その分の時間とコストは確実に削られる」としています。
コメの小売業者の団体の反応です。
「きょう、(発表当日)の朝聞いたばかり。相談が事前にあったわけでもなく驚いている。集荷業者から小売りというルートはあまりない。今週ルートの開拓を含めて相談してやっていきたい」
精米店の反応です。
「集荷業者と直でやり取りしていないので、ウチは違うのかなと思う。新しく取引するなら、新規の口座を作ったり、実務上かなり時間がかかる」と話しています。
「政府の想定通り流通すれば、時間とコストを削減できるが、集荷業者とつながりのある小売業の数は多くはない。また入札までに計画を作成する条件がネックとなり、入札が少なくなる可能性も」あるとしています。
■備蓄米 買い戻しルール変更 1年→5年以内に 不足分どうする?
備蓄米のルールの変更が注目されています。
『買い戻し』の期限です。
政府は備蓄米を落札した業者から、原則1年以内に同等同量のコメを買い戻す、というルールがありますが、原則1年以内というルールを、原則5年以内に延長します。
入札する業者は、1年以内に買い戻されるコメを集める負担が軽減され、多くの業者が入札に参加しやすくなると考えられます。
「放出する60万トンを1年で買い戻すのは物理的に無理。それをやったら確実に米価が上がる」
「25年産米については、今後の需要環境が大きく変化しない限り、備蓄米の買い入れを中止する」としています。
備蓄米の不足分はどうするのでしょうか。
備蓄米はもともと約91万トンありました。
放出すると残りは、約30万トンです。
「備蓄米に加えて、ミニマムアクセス米(無関税の輸入米)を使えば、これまで経験した災害であれば十二分に対応可能」
■輸入米拡大の動き コメ価格「今後は値下がり」の可能性も
コメを輸入する動きが広がっています。
大手スーパーの西友は、2024年11月から台湾産のジャポニカ米の取り扱いを開始しました。
牛丼チェーンなどを展開する、松屋フーズホールディングスは、4月には一部店舗でブレンド米から全てアメリカ産米に切り替えています。
コメの価格は今後どうなるのでしょうか。
「今後は値下がりして6月中旬には5キロ4000円程度まで下がる可能性がある。ただ、大幅に安くなるとは考えにくい。安くても5キロ3000円台後半ではないか」
(「羽鳥慎一モーニングショー」2025年5月19日放送分より)