再び上がったコメの価格。備蓄米を放出したのに、なぜ安くならないのか。卸売業者の一日に密着すると、コメ高騰の要因が見えてきました。
■コメ卸売業者の1日に密着
深夜2時すぎ、辺りが静まり返った東京・渋谷区の一角です。人々が眠っている時間から、明かりが灯る精米店があります。飲食店などにコメを卸している「小池精米店」です。
時刻は午前2時半、毎日この時間から仕事を始めているという店主・小池理雄代表(53)です。
農家やJAから、玄米の状態で仕入れたコメを店内の機械で精米しています。精米機は1台のみ。従業員が出社する前から精米を始めないと、作業が追い付かないといいます。
新潟県産「コシヒカリ」や熊本県産「くまさんの輝き」など、全国のブランド米を取り扱っています。
午前3時、飲食店への配送のスケジュールを確認しながら、新たな仕入れの計画を立てます。ただ、確保できる在庫は日に日に少なくなっていると嘆きます。
午前7時半すぎ、出社した従業員が精米したコメを運び出します。30キロ入りの袋で、一日に合わせて1トンほどを飲食店に配達しています。
「(Q.1人で何軒回る?)30〜40軒くらい。多い時で40〜50軒」
都内のすし店や焼き肉店など、およそ200の飲食店にコメを卸しています。
午前8時すぎ、配達の車が出発します。
その3時間後の午前11時、30キロの玄米10袋が搬入されます。
コメの産地は様々、どこから運ばれてきたのでしょうか?
新米の時期に農家と年間契約を結んでいて、保管しきれない玄米は埼玉県の倉庫に置いているといいます。
コメは必要な時に卸売業者の「小池精米店」へ運搬され、店で精米した後、飲食店へ届けられる仕組みです。
その過程で、様々なコストがかかるといいます。
コメの価格は再び上昇しています。最新の調査では、全国のスーパーでのコメの平均価格は5キロあたり税込みで4268円。前週は18週ぶりに値下がりしたものの、54円値上がりして、またもや最高値を更新しました。
「(Q.コメ価格は?)下がらないんじゃないか。このまま4000円超で、ずっと推移していくのでは。前は2000円台だったのが、今は5000円近い。倍だから、元には戻らないんじゃないか」
「食べ盛りの子どもがいるので、いろんなスーパーを何軒もはしごして見ているが、全然安くならないので買えない。前はすごくいっぱい大量に買っていたが、2キロずつでしのいでいる」
「(Q.2キロを買う?)5キロ〜のものはすごく高くなってしまうので、短い期間だけしのぐため、少しでも安そうなところを」
「肥料や燃料など全部高くなっているので、妥当な値段といえば妥当な値段。農家にも今コメはない。市場には高くしか出回らない」
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■再びコメ高騰の原因は?■再びコメ高騰の原因は?
備蓄米の放出が進むなか、再びコメが高騰した原因は?
農林水産省は20日に、コメの相対取引価格を発表。JAなどの集荷業者と卸売業者の間で契約された4月の価格は、60キロあたり2万7102円です。再び上昇し、最高値を更新しています。
埼玉県のスーパーでは20日、茨城県産「コシヒカリ」や「あきたこまち」が5キロで税込み5174円まで値上がりしています。
特売品として、税込み4526円で売られているのは、国産ブレンド米です。
小澤清さん
「これは『ゆめぴりか』『コシヒカリ』『あきたこまち』いろいろなコメを混ぜて入れたのが複数玄米使用。安くなるとしたらブレンド米。多少でも安くなるのではと」
価格高騰が止まらない要因について、コメの政策に詳しい専門家は…。
三輪泰史氏
「備蓄米の価格そのものが高いので、平均価格を下げる効果が薄い。コメの価格全体が上がっていくところを備蓄米では食い止めることが十分にできなかったことが、今回大幅に50円以上平均価格が上がった理由になる」