これから出回る2種類の備蓄米。価格の差はどうなるのでしょうか。
■随意契約の詳細公表
「このまま販売するしかないかどうかは、今決めかねている」
備蓄米を販売するスーパーから聞こえる困惑の声。その訳は、これまでとは価格が違う備蓄米が今後出回ることにありました。
政府備蓄米の「随意契約」について、26日に小泉進次郎農水大臣(44)は具体的な内容を発表。
備蓄米については、これまで「競争入札」が行われ、最も高い価格を提示した集荷業者に売り渡されていました。
今後は、「随意契約」に変更し、国が備蓄米の売り渡し価格を決めたうえで、年間1万トン以上の取扱数量がある大手小売店を対象に、30万トンを売り渡すことが発表されました。
30万トンの内訳は、3年前に収穫された2022年産、いわゆる“古古米”が20万トン。4年前の2021年産が10万トンです。買い戻しは求めないことを決めました。
「随意契約の方法は、国が提示した定価で毎日販売します」
米穀小売業者が会員となって組織する全国団体「日米連」に、「随意契約」の対象が大手小売店に絞られたことについて聞くと…。
「1万トン以上取り扱っている小売店はなかなか…。中にはいるかもしれないが、ないかなと。備蓄米の供給ということであれば、街の小売店が入っていけるような流れもほしかったというのが率直な意見」
■備蓄米5キロ2160円?
23日に小泉大臣が視察に訪れた、大手スーパー「ライフ」は、随意契約を結ぶことを検討しているといいます。
「販売価格については60キロあたり平均で税抜き1万700円。一般的なマージンを踏まえて試算すれば、小売価格では5キロあたり2000円程度となる水準。早ければ6月上旬にも店頭に並べることができると考えている」
備蓄米の売り渡し価格は、2022年産が60キロあたり税抜きで1万1010円。2021年産が1万80円。平均すると1万700円です。
集荷業者や卸売業者を通さずに、直接大手小売店に売り渡すことで、店頭に並ぶ備蓄米の価格は5キロあたり、税込み2160円程度になるとしています。
「大手小売店の皆様に直接備蓄米を売り渡すことで、国民の皆様が早く安定した価格で、これ以上のコメ離れを防げるよう、しっかりと取り組んでいく」
すでに入札によって売り渡された備蓄米が流通しているなか、今後、随意契約によって2000円程度の備蓄米が出回ることになります。
備蓄米を販売しているスーパーからは、困惑の声が。
「2000円台、言っていることは分かるが、安すぎるかなと思う。個人的に」
JAグループとして全国でおよそ550店舗を展開する「Aコープ」です。JA福井県が落札した備蓄米「ハナエチゼン」を販売しています。
5キロの価格は、税込みで3434円です。今後、2000円程度の備蓄米が大手スーパーなどで販売された場合、どうするのでしょうか?
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■備蓄米に“2つの価格”対応は?■備蓄米に“2つの価格”対応は?
これまでの競争入札での価格は、3回目の入札で放出された2023年産米の場合、集荷業者に売り渡された平均金額は60キロあたり2万1926円です。
今後、随意契約では、大手小売業者に2022年産米と2021年産米が平均価格1万1556円で売り渡されます。つまり、備蓄米の仕入れ値は1万円以上の差があります。
備蓄米を販売する「Aコープ」の場合、これまでの流通は、JA福井県が落札した備蓄米を、JAグループの卸売業者「福井パールライス」を通して定期的に仕入れています。
「次回の(備蓄米の)入荷が木曜日にある。その時にまた5キロ200袋を入荷する予定」
これから仕入れる備蓄米は、店頭価格を値下げするのでしょうか?
農林水産省は、コメの価格の安定化をはかるため、26日、「コメ対策集中対応チーム」を立ち上げました。
備蓄米の店頭価格が、「競争入札」と「随意契約」の違いによって差が出ることについて、小泉大臣は。
今後、放出される備蓄米が、古古米かさらに古いコメになることについて、スーパーからは不安の声も。
「(令和)3年産、4年産のコメが売り場にあったとして、それを(客が)買うかは不透明なので、当店としても取り扱うかどうか考えるところ」
買い物客は。
「あんまり古いとちょっと気になるけど。安ければ多分買うんじゃないか」
「炊きあがった時の香りと味がどんなかなと。安い方を買うけど、味的に不安があったら普通のコメに戻す」
早ければ6月上旬にも、2000円ほどの備蓄米が出回ることで、今後、コメの平均価格は下がるのでしょうか?
コメの流通に詳しい専門家は。
「一般銘柄は高止まりすると思う。2025年産の新米と備蓄米、2022年産、2021年産のコメでは市場的なニーズも価値も違う。今年(新米は)増産の傾向なので、多少、全体(の価格)が下がる。ただ、前払いの概算金。(農家から)いくらで買うかも出ているので、少し下がる可能性はあったとしても、高止まりする見通し」