経済

モーニングショー

2025年6月11日 16:00

コメ高騰 消費税4.4%増と同じ!? “二極化”するコメ卸 利益増の一方で廃業も

2025年6月11日 16:00

広告
4

コメの平均価格が5キロ4000円台で推移する中で、この状況が半年続くと、消費税が4.4%になったのと同じくらいの負担になるという試算が出ています。

また、コメの値上がりで『二極化』する、コメ卸業者の現状についても見ていきます。

■ コメ4000円台続く カレー店 弁当店 倒産最多 コメ高騰の影響

スーパーのコメ平均価格です。

5月26日〜6月1日までの1週間は、5キロ4223円で、前の週から37円値下がりしました。
2週連続の値下がりですが、高値が続いています。

今回の価格に、随意契約による備蓄米の販売は含まれていません

現在のコメの価格帯が続いた場合について、三菱総合研究所の試算です。

2024年5キロ2000円だったコメが、現在のように、5キロ4000円の状態が半年続いた場合、国民全体の支出は、食料品の消費税が8%から12.4%になった、4.4%増税したのと同じ負担となるということです。

試算を行った、三菱総合研究所の稲垣公雄研究理事は、
「消費減税の声も上がる中、すでに消費税が上がっているような状況。減税の前に、コメ価格対策こそが喫緊の課題」と指摘しています。

コメの価格高騰の影響です。

帝国データバンクによると、2024年度のカレー店の倒産は13件となり、2年連続で、過去最多を更新しました。
これまで安定的に安く入手できたコメの高騰などが、中小のカレー店に大きな影響を与えたということです。

都内のカレー店『エチオピア』の担当者は、
「年始ぐらいに、60円〜100円値上げした。コメ以外の原価をなるべく抑えているが、この価格が続いたら、再値上げの可能性もある」と話しています。

さらに、2025年1月〜5月の弁当店の倒産は、22件となり、過去最多ペースとなっています。
2024年からのコメ高騰が経営を圧迫し、事業を諦めるケースが目立ち始めています。

現在のコメの価格について、大規模農家らで構成している『日本農業法人協会』が、生産者に調査しました。

「高すぎる価格で流通している」が、53.7%
「高いが適切価格で流通している」が、30.9%

価格については生産者も、消費者と同じ危機感を持っていることが分かりました。

■ 小泉大臣「利益500%」指摘に大手コメ卸業者は…

コメの卸売業者についてです。

小泉農水大臣は、
「卸大手のある会社は、営業利益が前年比500%くらい。ほかの大手卸も250%超えている」と発言しました。

コメの大手卸売2社の営業利益です。

A社は、2025年1〜3月の3カ月の営業利益が、約19億2900万円
前の年の同じ時期が、約3億9600万円なので、約4. 9倍です。

B社は、2024年度1年の営業利益が、約23億5100万円
前の年が1年で、約6億3600万円なので、約3. 7倍です。
どちらも大幅に増えています。

なぜ、これほど営業利益が増えているのでしょうか。

A社に聞きました。
「コメが余っていたころ(品薄になる前)は、大量仕入れ大量販売の薄利多売のビジネスでやってきた。これまで非常に低い利益率だった。コメが品薄になり、(価格より)モノを供給してほしいという中で、今まで削っていた利益の部分を削ることなく、値上げがスムーズにいった
利益が増えた理由について、B社は、
「量販店などで棚からコメがなくなったことがあった。そういった状況を危惧して、今は価格競争より安定的に供給することが一番求められている。少し高くても買ってもらえる状況なので、適正に利益を乗せられた」と話しています。

この2社の営業 利益率です。

A社は、
2023年度の1〜3月が、1.4%
2024年度の1〜3月が、5%

B社は、
2023年度が、1.9%
2024年度が、4.7%です。

東証に上場している全産業の営業利益率の平均は約6.72%なので、2社は、それよりは低くなっています。

小泉農水大臣の発言について、A社は、
「確かに営業利益は、前年比5倍だが、利益率は5%程度。他の企業と比べても、暴利をむさぼっている状況ではないと思う。今まで低い利益率で、赤字になったこともあった。今回もうかったことで、『コメでもうけるのは悪』みたいな言い方をされると憤りを感じる」としています。
B社は、小泉農水大臣の発言について、
「食料安全保障上の問題があることは承知しているが、一方で自由経済の市場でもある。適正な利潤を確保した上で、価格転嫁を進めている。あまりに高い価格転嫁をしているわけではない。その点をご理解いただきたい」と話しています。
宮城大学の大泉一貫名誉教授です。
「もうけることは悪いことではないが、もうけが一部の人だけに集中して、生産者に届いていないのであれば、『健全な仕組み』とは言えない。『全体として健全か』を見ていく必要がある」

■“二極化”するコメ卸業者 利益大幅増の一方で相次ぐ廃業も

大手卸の利益が増えている一方で、廃業も相次いでいます。

栃木県宇都宮市のコメ卸売業者が自己破産しました。

●1907年 創業。創業110年を超える老舗です。
●主に、栃木県内で採れる米をスーパーやドラッグストアへ卸していました。
●2004年のピーク時には、売上高が40億円ありましたが、2025年2月、約6億7500万円の負債を抱えて、自己破産申請しました。

なぜ、破産に至ったのでしょうか。

代理人弁護士は、
「コメ価格の急速な高まりや、需要増加を受けて、コメが確保できなくなった。仕入れ値の高騰分を価格転嫁できなかった」と話しています。
また、
「2月に政府備蓄米の放出が決まったが、具体案がなく、『これでは価格は下がらない。頑張ってきたがもう無理』と判断した」ということです。

2024年度の卸売や販売を手がける『コメ店』の廃業は88件で、過去5年間で最多となりました。

また、前年度から減益となったコメ店が、25. 2%
赤字に転落したのが、22. 4%
あわせると約半数のコメ店が『業績が悪化』しているという結果です。

大泉名誉教授です。
コメ卸は、元々利幅の少ない業態。営業利益を上げるには、規模を大きくするか、高価格米を扱うしかない。規模の経済を得られない、町のコメ店などを相手にする小さい卸は経営苦に陥る

■コメ輸入 民間で拡大 政府は?農家「今年のコメ足りるはず」

コメの輸入についてです。

6月9日の国会では、立憲民主党の横沢議員が、
「小泉大臣はコメの輸入へと舵を切ると発言されました」と指摘しました。
これに対し、石破総理は、
「政府といたしまして、輸入に舵を切ったという事実はございません」と否定しました。
小泉農水大臣も、
「(コメの)輸入に政府が舵を切ったという事実はない
民間が輸入に舵を切っている。価格高騰を抑えなければ、むしろ(店の)棚は、もっと外国産が増えてくる」と答えました。

大手スーパーの『イオン』では、4月に、輸入米と国産米のブレンド米を発売したところ、消費者に好評だったため、関税を支払う『民間輸入』で、約1万4000トンの輸入米を確保しました。

イオンで販売される輸入米は、アメリカ・カリフォルニア産のカルローズ米を100%使用した商品です。
6月6日から順次販売が開始されていて、4キロで税込み2894円。5キロ換算だと税込み3618円です。
今後、東北を除く都市部を中心に、約600店舗で販売する予定です。

イオンの担当者は、
「新米が出るまでの間に需要が上がった場合、店頭の在庫がひっ迫するため、輸入に踏み切った」としています。

民間でコメを輸入した場合、1キロあたり341円という高い関税がかかります。

2024年1年間で、1008トンだった輸入量が、2025年4月の1カ月だけで、約6800トンになっています。1カ月で1年間の約7倍です。

民間輸入に対して、政府が輸入するコメが、ミニマムアクセス米です。
これは、政府が海外から関税ゼロで最低限輸入するコメです。
ミニマムアクセス米は、年間約77万トンを輸入していますが、最大約10万トンが主食用です。
2024年度は、その上限いっぱい輸入しました。

ミニマムアクセス米の入札時期は、例年、9月以降ですが、小泉農水大臣は、入札時期の前倒しを検討する可能性を示唆しています。

6月9日、小泉農水大臣は、
「(輸入拡大に)慎重論が出ていると承知していない。価格の高騰を抑えるために、必要なことはなんでもやる」と発言しています。
輸入について、新潟県のコメ農家の宮内賢一さんは、
「今年は飼料米を主食用米のほうに回してくれと言われている。今年のコメは足りるはずだから、輸入を本当は考えなくていいはず」だと話しています。
秋田のコメ農家の涌井徹さんは、
「日本の農業が、国民の必要とする供給ができなければ輸入は当然だが、国内で安定供給するためにどうするべきかを議論していない」と指摘しています。
宮城大学の大泉名誉教授です。
「コメは国内で、ほぼ自給できる唯一の主食。コメの輸入拡大は、米価を高止まりさせた農政の失策によるもので、輸入に頼るのか、食料安全保障の点でも大きな岐路に立っている

(「羽鳥慎一モーニングショー」2025年6月10日放送分より)