物価高に苦しむ喫茶店の倒産が急増しています。50年近く地元に愛され続けてきた喫茶店の最後の日を取材しました。
「喫茶店」倒産 3年で急増
ここは地元の人たちの“憩い”の場。マスターの鈴木真樹さん(46)と、母親の美智子さん(80)が二人三脚で店を切り盛りしてきました。
「(Q.どれくらい前から来ている?)もう40年くらい。ついつい長居しちゃいます」
「昭和のレトロ感があって、令和っぽくなくて居心地がいい」
千葉県船橋市の喫茶店「かりん」。オープンは1977年。この日は最後の営業日でした。
「区切りの日です」
次々と訪れる常連客たち。
「今でも覚えてますよ。お父さんが朝、下掃除していたの」
「朝ね、掃除していましたね」
「何年前オープン?」
「48年前です」
「あと2年で」
「半世紀です」
こちらの親子は、涙ぐみながら思い出を振り返ります。
「さみしいですね」
「いつか再開してほしい」
「私はマスターより女将さん(美智子さん)と話した。『あそこの娘だよね』『あそこで働いていたよね』、覚えていてくださって。久々に来たが懐かしい。本当、久々に来たけど」
「なくなってほしくないよね」
これだけ常連客に愛されていながら、閉店の決断をした理由は。
「コメもそうだが、仕入れ原価も上がっている。やはり一番大きいのはコメよりコーヒー豆。コーヒー豆は(値段が)3倍くらいになっている」
鈴木さんの店ではコーヒー豆の仕入価格が3年前に比べ3倍近い値段に。常連客のことを考えると、価格に転嫁はしづらいといいます。
帝国データバンクによると、昨年度の「喫茶店」の倒産件数は70件ありました。材料などの高騰が原因で、ここ3年で倒産件数が急増しています。
人気店「プリンアラモード」材料が高騰
東京・蒲田の喫茶店「チェリー」では、フルーツたっぷりの「プリンアラモード」を提供。行列ができる日もあるといいます。
しかし「昭和レトロの代名詞」にも原材料費の高騰が直撃。それでも値上げはしない覚悟で営業を続けるといいます。
「円安でフルーツ(の値段)が一番のネック。それが上がってくると、(値段を)上げざるを得ない。でも、この辺で打ち止め。値上げはできない」
専門家はこう話しました。
「プリンアラモードだけではないが、コスト・人件費の高騰。手間がかかる。今エッグショックという状況。価格と見合わないコスト」
最後の瞬間 「感謝」で幕
閉店を決めた船橋市の「かりん」では、高齢化も理由の1つでした。
「父と母は80歳。ずっと『80歳になったら店を辞める』と。父親が80歳になる2、3カ月前に亡くなった」
鈴木さんの父・三郎さん(享年79)。元々美智子さんと80歳で店を閉めようと約束を交わしていましたが、80歳を前に去年末に亡くなりました。
鈴木さんは両親の「80歳の区切り」の意思を尊重し、閉店を決意しました。
営業終了の時間が、刻一刻と近付きます。
最後の客を見送り、48年の歴史に幕を下ろしました。
「これまで48年間、店に通い続けていただいたお客様には、本当に感謝しかない。最後のお客様が帰られて、寂しい部分もありますし、全うしたなという部分もある。勉強すること感謝することがいっぱいありました。ありがとうございます」
鈴木さんにとって最後の閉店作業。外で待っていたのは…。
「お疲れさまでした」
「最後のお客さんですから。一生ものです。ありがとうございます」
(「グッド!モーニング」2025年8月16日放送分より)