コメの価格が過去3年で最大の値上げ幅となっています。備蓄米を放出したのになぜ今、急上昇しているのか、その理由を取材しました。
備蓄米が急上昇の原因?
埼玉県内にあるスーパーのコメ売り場に並ぶのは、収穫されたばかりの新米です。
「他で備蓄米があったので購入した。それも安かったけど、新米のほうがおいしいからどうしようかなって」
店頭価格は、宮崎県産のコシヒカリが4526円。茨城県産のあきたこまちは、4418円と4500円前後です。
「ちょっとまだ高い」
去年のチラシを確認すると、新米の茨城県産あきたこまちは5キロで3131円でした。今年の新米は1300円ほど値上がりしています。
「銘柄米の値段が4000円を超えている状況。その値段をひきずりながら、新米は今の値段になった」
最新のコメの平均価格は、5キロあたり3737円で前の週から195円値上がりしています。
農林水産省が集計を始めた2022年以降、最大の値上げ幅となっています。備蓄米を含むブレンド米の平均価格は、前の週から急上昇。191円値上がりしています。
全体の平均価格とほぼ変わらずに上がっているのが分かります。その訳を探るため、取材班は精米工場へ。
卸売会社の「ギフライス」です。
「こちらが当社の倉庫の現状」
6月に随意契約で2021年産の古古古米120トンを購入したといいます。
ところが、2カ月以上が経った今も…。
「当社が6月上旬に契約した120トンのコメ。現状ではまだ一粒も随意契約の備蓄米は入ってきていない」
そもそも随意契約の備蓄米は、JAなど集荷業者を介さずに、政府から卸売業者や小売業者に、直接届けられます。
「国の計画だと『8月末までに売り切れ』。まだ1粒もない状況で、どうやって売り切るのか大変難しい」
5月下旬に店頭販売が始まった随意契約の備蓄米。当初、大手小売店では長蛇の列ができ、大量に販売されていましたが…。
「まさか2カ月近く遅れてくるとは。しかも、まだ入ってきていない。小泉大臣が言っていた『スピーディー』とはかけ離れている」
すると、取材中にトラックが工場に到着します。荷台の中には大きなコメ袋が。契約した120トンのうち、19日に初めておよそ10トン分が届きました。
「残り110トンの契約も8月末では売り切れない。売ってはいけないというならキャンセルする。延長になるなら引き取って販売を続けていきたい。ただとにかく時間がかかり過ぎた」
随意契約の備蓄米はおよそ30万トンが放出されましたが、販売された量はおよそ10万7000トンにとどまっています。備蓄米の流通が販売開始当初に比べて滞っているなか、コメの平均価格の上昇に影響していると専門家は指摘します。
「コメの平均価格が値上がりした背景には、コメの全体の販売数量に占める銘柄米の割合増が大きな要因。一方、随意契約など割安な備蓄米の販売量が少なくなった」
備銘柄米“価格下落”兆しも
都内にあるディスカウントストアのコメ売り場には19日、随意契約の備蓄米が売られています。価格は10キロで4191円です。新米の販売も始まるなか、買い物客がコメを選ぶ基準は?
「値段かな。ちょっとまた値上がってきたから。私は値段。家族は味。だけど買うのは私だから安いのを買う」
安いコメを求める人も多いなか、新たな動きが。農林水産省は随意契約の備蓄米について、8月末の販売期限を延長する方向で検討を進めていることが19日に分かりました。
「それはありがたい。助かる」
今後、銘柄米を含む、コメの価格が安くなる可能性があるといいます。
「備蓄米の販売期限が延長されることで、新米も含めたコメの平均価格の下げ圧力になる可能性がある。予測としては5キロ3000円台半ばに落ち着く(可能性も)」