政府が5月に売り渡しを始めた、随意契約の備蓄米。全国の小売店などに対し、8月中に売り切ることを条件に放出を続けてきましたが、実際に販売された量は約30万トンのうち10万トン余りに留まっています。このため、農林水産省が販売期限の延長を検討していることが分かりました。
コメ価格 またも高値に
東京・目黒区にあるコメ店では18日から新米の販売が始まりました。
(Q.新米の価格は)
「上がっています」
入荷した新米は佐賀県産のコシヒカリで、価格は5キロあたり6750円。去年より5割ほど高いといいます。
「この値段では手が出ない方もいらっしゃいますよね」
異例の高値となっている要因の1つが『概算金』です。概算金とは、JAが農家に支払う“前払い金”にあたるもの。去年、十分な量のコメが集まらなかったことから、今年は60キロあたりの金額が1万円ほど値上がりしています。
「青田買いもどんどんあり、流通も少ない。少ないからこそ概算金を上げて取引しないといけない。皆さんの手元に届く時にはもっと上がってしまう。ちょっとビックリするような値段設定でしたから安売りできない」
新米価格に引っ張られるように、スーパーでの販売価格も異常な値動きとなっています。18日に発表された5キロあたりの平均価格は3737円。前の週より195円値上がりし、集計を始めて以来、最大の上げ幅となりました。コメの品薄感が減るにつれ、備蓄米放出による“値下げ効果”も少なくなっているようです。
「今も買い続けてもう10回以上。本当にお安くて、とても経済的にも助かりますし、悪くないのでできれば買い続けたい」
ヘビーユーザーがいる一方で。
「やっぱり食感が…母も高齢者なので、お米はなるべくつやがある、とれたてを食べさせたいなと」
備蓄米 販売期限を延長へ
備蓄米をめぐっては、販売店の頭を悩ませる問題も出ています。岩手県盛岡市のコメ店では、5月末に申請した備蓄米が2カ月後の先月25日にようやく届きました。
「1列目2列目3列目の上から2段目までが備蓄米。大量に送ってもらったが時期が時期だったので」
政府は8月末までに売り切ることを条件としていましたが、その期限まで10日ほどしか残されていません。
「(計画では)7トンくらいは売れているはず。まだ1トン弱くらい。ちょっと遅かった。遅すぎましたね。何とかして売り切らないといけないと思っているが、物理的には厳しいんじゃないか」
随意契約による備蓄米の総量は約30万トンありますが、出庫作業や精米などが追い付かずに配送が遅れ、実際に販売された量は10万トンあまりにとどまっています。小売店から販売期限の延長を求める声が相次ぐ中、農水省は今月末の期限を延長する方向で最終調整していることが分かりました。コメ店からは安堵の声が聞かれた一方で。
(Q.延長で売り切れるか)
「正直ちょっと厳しいかなというところもある。ブレンドしてもいいとか業務用に販売してもいいのであれば販売量が増える気がする」
どうなる今後のコメ価格
現在市場に流通しているコメは大きく分けて4種類。『新米』『銘柄米』『競争入札による備蓄米』『随意契約による備蓄米』で、それぞれ価格帯も異なります。目黒区の店では、安い備蓄米より高い銘柄米の方が売れているといいます。
(Q.備蓄米はどこに)
「色んな産地(のコメ)がある中で、ここの見えない所に。他のコメ、銘柄米が売れていく中で、どうしても流通の少ない、売れ行きの悪いものが奥にいってしまっている」
(Q.全然発注がない)
「1日1件か2件の悲しい現状です」
新米が出回ることでコメの流通量は増えるものの、高いコメと安いコメに“2極化”するだけではないかといいます。
「備蓄米があふれていても新米が安くなる方に今は行っていない。銘柄米の値段が上がっていることで、上にくる新米、もっと付加価値のあるものが一緒に上がっていっている。現状の中では下がる予定は見えていない」