25日、全国のスーパーのコメの平均価格が発表されました。前の週に比べ67円高い3804円となり、2週連続の値上がりとなっています。こうしたなかで、事実上の減反政策からコメの増産にかじを切った小泉進次郎農林水産大臣に、玉川徹氏が話を聞きました。
概算金↑でコメ価格高止まりも
いよいよ到来した新米シーズン。こちらの新米は、5キロの値段は去年よりおよそ1000円高い税込み4298円です。
「(コメ価格は)少し下がったなと思いますけど、やっぱり以前よりかは高いなというのはまだぬぐえない」
新米を購入した人からも…。
「高いなという感じです」
「(Q.どのくらいの価格だったら良い?)やっぱり3000円くらいだとうれしいですね」
「(新米は)想像していたよりは売れない。新米が安くなるかもしれないという話がちらちら出ていたので、どれだけお客さんも値段が下がって出てくるかという期待のなかで、結局4000円いっちゃうのかというところもあるので」
25日、農林水産省が発表したスーパーで販売されたコメの平均価格は、前の週に比べ67円高い3804円となり、2週連続の値上がりに。割高な新米が出回り始め、備蓄米の割合が低下したことなどが価格上昇の要因と考えられます。
さらに、コメの流通価格の指標になる「概算金」が軒並み引き上げられ、新潟県魚沼産の「コシヒカリ」が去年より1万3000円高い3万2500円、北海道の「ゆめぴりか」は1万2500円高い3万円に。今後、小売価格が高止まりする懸念も出ています。
「大離農時代」コメ増産へ転換
コメが買い求めやすい価格になるには、何が必要なのでしょうか?
「コメを作るなではなく、増産に前向きに取り組める支援に転換」
政府が歴史的な農業政策の大転換について言及したのは今月5日です。
「玄米ベースの生産量は足りているという認識で、流通実態の把握に消極的であり、さらなる価格高騰を招くことになったと考えています。今後は需給の変動に柔軟に対応ができるように増産にかじを切る政策へ移行していきます」
コメの生産量が足りていない実情を認め、事実上の「減反政策」から「増産」へかじを切る意向を示しました。
コメ農政大転換の狙いとは?
今回、小泉農水大臣にコメ農政大転換の狙いについて直撃しました。
「コメ農政のまさに大転換だと思うんですけども、大転換を行うかじを切った理由は何なんですか?」
「需要に応じた増産の方向へと転換をするのはなぜかと。今後の農業現場に起きる大離農時代という表現は強すぎるかもしれませんが、今がだいたいコメ農家さん55万人。毎年約6万人が年齢とか、さまざまな理由で農業から離れて、5年後2030年には30万人ぐらいになってしまうのではないか。今メッセージを届けないと間に合わない」
「今までの農政というのを見ていると、農家の数を守るという形になってたんじゃないかなと。むしろ国として守るべきは、農業生産じゃないかと」
「とにかく需要と供給をぴったり合わせて、そんなに価格が下がらない米価維持をずっと続けていきますよと。だから生産調整もやりますという形で続いていったら、行きつく先は縮小均衡なんですよね。今までの道ではない増産の方向性のなかで、課題をクリアしていくという方向に知恵を出せば、今まで切り開けなかった世界のマーケットから、そして耕作放棄地を食い止めることから。また若い農業者が俺もやってみたいと、そういうふうに思うような新たなコメ作りの技術。こっちの課題のほうが、私は希望と可能性を感じますね」
コメを適正な価格で流通させるため、増産への転換を示した政府が掲げているのが、生産コストの削減が期待できる新たな技術の導入です。
「コストを下げるための一つの手段に、まずは大規模化。この大規模化と集約化、一つのところにまとめて農地を形成する。そうすれば、より人手をかけずにできます。効率よくできます。農業の場合は、コメの生産コストは面積に比例する形で下がってきます。それに加えて新しい農業の、特にコメ作りの現場では、水田ではなくて乾いた田んぼに(種を)まいてコメを作る。乾田直播(かんでんちょくは)っていうんですね」
水を張らない乾いた田んぼに直接種をまき、芽が出た後も水を張らない節水型乾田直播栽培。去年8月、鳥取市で節水型乾田直播を行う農業法人を玉川氏が取材した。
「水がない、割れてる」
「水がないのに、コメができてる」
従来のコメ作りでは、水の管理や苗づくりにコストがかかり、田植えを行うにも専用の機械の購入が必要になります。
一方、乾田直播では水の管理や苗作り、田植えなどをする必要がなく、大幅なコスト削減が可能です。コメ1キロをつくるための生産費は全国平均でおよそ266円ですが…。
「1キロは我々換算でだいたい100円切ってくる。半分以下のコスト」
さらに、種もみの準備から収穫・管理までの労働時間も従来の田んぼのおよそ5分の1で済むといいます。
「今後、気候変動が年々深刻になるなかで、水を確保する困難さがこれからどんどん出てくるなかで、水田だけではない新たな手法、リスクヘッジでいくつかの選択肢があってしかるべきだと思うんですね。新しい乾田直播や節水型乾田直播に予算もつけますと」
生産コストの削減ができれば、競争力の強い産業として世界に打って出ることが可能になります。
「大事な柱の一つは、海外に展開をする。そして輸出の道を切り開くって大事なんですけど」
「実は私、2年前に農水省に行って官房長と話しをして。もっといっぱい(コメを)作って輸出して、もし日本が足りない時は輸出分を国内分にすればいいじゃないですかと言ったら、(短粒米は)中国とか韓国とか東アジアの一部と、あとはヨーロッパぐらいしか食べない。売り先がないので無理なんですって言われたんですよ」
「無理っていうよりも、そんなに簡単じゃないってことはその通りなんですよ。私もこれから輸出を抜本的に強化しますよと言ってますけども、日本で作って余ったら、それを外に出せば売れるなんて全然思ってません。ちゃんと、その国にローカライズされた需要に合ったコメっていうものを届けていかなきゃいけない。競争力を持たせなきゃいけない。これは簡単なことじゃない。じゃあ、それを諦めて日本のコメを守ること。人口が減るなかでも、それでできますかって言ったら、絶対海外のマーケットを取る方向にいかなかったら守れない」
需要拡大を見据える一方、コメ農家が危惧するのは、増産によってコメ価格が下がった場合、収入が下がるのではないかということです。
「全員に同じ所得補償をするとですね、例えば小規模で自分と親戚が食べる分ぐらいのコメを作っている方々にも所得補償をするということになると、農地が大規模なところにいくという方向にいかないのではないか」
「農地を持っているだけでお金をくれますよって、これで集約化進みますか。私、進むわけないと思いますね。とにかく農地を持っている方全部に同じ額を所得補償することは、私は考えられないですね。これは別に切り捨てじゃないし、小規模や棚田や中山間地のことだってちゃんと後押しをする。だけど同じやり方だったら絶対に人手も減るし、高齢化も深刻化するし、これからの離農が進む時代を見据えて共に変わっていくっていう話し合いをしっかりやりたいですね」
コメ増産「BtoCへの転換」
政府がコメ増産への方針を示すなか、自民党内からは反発の声も上がっています。
「今さら増産しろって言われたって。増産するにも種もみがないから、そんなに増やせないですという人もいました」
「いわゆる農水族っていう人たちが足を引っ張るんじゃないかと、僕からも不安があるんですけど、そこは大丈夫なんですか」
「党内からも、さまざまな声は届いてますよ。この大きな局面で、今回あまり言われてないことですけど石破総理は17年前に今回のことを言ってたんですよ」
当時、農水大臣を務めていた石破総理は次のように話していた。
「どうやって農地を確保するか、どうやって後を継ぐ人をつくるか。答えを出さないと、本当に日本から稲作がなくなる」
事実上の「減反政策」である生産調整を見直す姿勢を見せていましたが、農水族議員からの猛反発で道半ばに…実現はかないませんでした。
「農水省の中からも止められ、農水族からも止められ、史上最低の農水大臣だと言われたと。今でも石破総理よく言ってますよ」
「違うんですか、そのころと今は」
「環境変わりましたね。もう、この新しい方向性に行くなら今だろうという理解はいってありますし、増産自体に対してちゃんと需要に応じた増産なんだよな、このことが確認できて自民党の役員の了承を取ったんです。なので、そこは大丈夫です。コメをこれからは増産しますと。これを発出した会議で、メディアの皆さんが退出されて会議が終わった後に、隣に座っている総理に『総理、やりましたね』ってお声掛けをしたら『17年かかったな』と言ってました」
「世論調査を見ても、コメの増産についてあなたはどう思いますか?生産調整はやめるべきだ、そして増産の方向へ行くべきだという世論は大勢なんですよ。私は、これはある意味、自民党に求められていることと、いくつか重なる部分があるなと思っていて。世の中の声に耳を傾けて、国民と共に前に進む。こういうものを自民党に見たいって思ってると思うんですよね。自民党は基本的にビジネスモデルはBtoBなんですよ、今まで。対組織、対団体、対業界、これがBtoBですよ。それを見直さなければいけない時代が来てて」
「BtoCに?」
「BtoCに。この増産は、ある意味自民党のビジネスモデルの転換の一つなんですよ。私はそう捉えています」
(「羽鳥慎一 モーニングショー」2025年8月26日放送分より)






















