政府は29日、太陽光パネルの製造業者にリサイクルを義務付ける制度の導入を断念することを明らかにしました。この方針に、環境団体が反発しています。
太陽光パネルのリサイクル“断念”
29日、岩手県奥州市にある工場には、リサイクルに送られた大量の太陽光パネルが積み上げられていました。
「今週、入ってきた廃棄になる太陽光パネルになります」
「(Q.奥まで続いているけど、全部そう?)これは今週入ってきた分になります。今週、雪でつぶれちゃったパネルが入ってきていまして、ここにあるだけでだいたい2000枚程度」
冬に雪の重さなどで壊れてしまったパネル。故障の査定や取り外しなどに半年かかり、今週ようやく届いたばかりだといいます。中には、枠の部分のフレームが曲がってしまったものや表面のガラスが割れているものもあります。
パネルのリサイクル作業は、部品の解体・分別です。アルミの枠を外してアルミを取り出し、パネルのガラスを取り除きます。
次にガラスに混じっている不純物を取り除き、ガラスは細かく砕いて新しいガラスの材料などに回します。
こうした部品1つ1つを専用の特殊な機械を使って解体しています。1枚当たりのリサイクルコストはというと…。
「今現在、結構大きさが違うもの、一部手解体が必要で手間がかかるものもあるので、1枚3000円から4000円程度」
住宅からの撤去には、リサイクルまでにさまざまなコストがかかります。その総額は…。
「屋根の上ということであれば、足場を組む料金。あとは解体(撤去)する作業者の料金も別にかかってきますので、ざっくり30万円ぐらいはかかるんじゃないでしょうか」
コストに課題 費用負担は誰が
この太陽光パネルのリサイクル義務化に動いていた政府。しかし…。
「太陽光パネルの適正な廃棄・リサイクルの制度的対応については、制度案の見直しを視野に入れて検討作業を進めることとした」
環境省と経済産業省は、太陽光パネルのメーカーらにリサイクルを義務付ける法案を今国会に提出する予定でしたが、断念しました。
「太陽光パネルの埋め立て処分とリサイクル費用の差額が大きいなかで、自動車や家電等の他の製品と異なり、太陽光パネルのみ製造業者等に差額を負担させてリサイクルを義務化することに、現時点では合理的な説明が困難」
課題の一つが、リサイクル費用の負担者です。自動車や家電のリサイクルは所有者負担で、太陽光パネルだけ製造者負担とするのは合理的ではないと、新制度や法案の審議を行う、内閣法制局が判断を示したことです。
当初の案では、メーカーにリサイクル費用を負担させる方向で進められてきました。しかし、太陽光パネルは、自動車や家電製品よりも使用期間が長く、海外製品の場合、廃棄する際にメーカーが倒産しているケースもあります。
さらに内閣法制局は太陽光パネルの埋め立て処分とリサイクル費用の差額が大きいため、義務化し価格負担を強いることは難しいと判断しています。
取材したリサイクル会社によりますと、1枚のパネルのリサイクルはおよそ3000円。埋め立て費用はおよそ2000円です。パネル2000枚ではリサイクルが600万円。埋め立てが400万円。処理する数が増えれば増えるほど、差額が大きく開いてきます。
「再エネ拡大を阻害」懸念も
環境行政法の専門家、富山大学の神山智美教授はリサイクル義務化の必要性についてこう話します。
環境NGOなどは29日、リサイクルの義務化は必要だと訴える共同声明を発表しました。
環境省の関係者によりますと、来年度の予算でリサイクル技術の研究開発費などを盛り込み、リサイクルのコストダウンを図る案を検討するといいます。
「我々はフロンやアスベストや昨今話題のリチウムイオンも、便利さ故にスピーディーな導入を望んできてしまって、商品のライフサイクル全般を見渡すということを怠ってきたと思う。資源として再生利用とか再利用するまでのライフサイクルを検討しておく、そういう必要があると思う」
(「グッド!モーニング」2025年8月30日放送分より)