経済

ABEMA NEWS

2025年9月9日 14:45

デジタル赤字は悪?平将明氏「レイヤーごとの勝ち負けじゃなくて、縦軸で見るべき」「アナログの価値を最大化する方向に活用すれば、日本は圧倒的に強い」

デジタル赤字は悪?平将明氏「レイヤーごとの勝ち負けじゃなくて、縦軸で見るべき」「アナログの価値を最大化する方向に活用すれば、日本は圧倒的に強い」
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 まもなく正式発表されるとみられる「iPhone17」に注目が集まるなか、Xでは「デジタル赤字を考えて国産スマホに変えようと思うけど、微妙」「国産スマホもう少し頑張って」「気がつけばスマホ、YouTube、ネトフリとか全部海外に持ってかれている」といった声が見られる。

【映像】iPhone17の“注目ポイント”(詳細)

 日本でDX化が進んだとはいえ、動画配信やクラウド、ネット広告など、デジタル関連のサービスは、アップルやグーグルなど海外のIT企業に依存しており、国内企業は後れを取っている状況だ。サービスを利用すればするほど、日本のお金が海外に流れていくのが、“デジタル赤字”の問題だ。

 日本のデジタル産業はどうなるのか。『ABEMA Prime』では、平将明デジタル大臣と考えた。

■デジタル赤字とは?

日本の「デジタル赤字」が拡大

 デジタル赤字とは、OSやアプリケーションのライセンス料(Microsoft、Appleなど)、放映権料などの「著作権等使用料」、クラウド(Amazon、Googleなど)やソフトウエアの委託開発、ゲームなどのサブスク契約などの「通信・コンピュータ・情報サービス」、ウェブサイトの広告スペース取引(Google、Metaなど)やコンサルティングサービスの「専門・経営コンサルティングサービス」の分野で生じている。

 平氏は「勝てないところに政府がゴリ押ししても勝てない。iPhoneの機種そのものよりは、そこに乗るサービスや、GAFAMなどのプラットフォーマー、Netflix、クラウドなどの議論になる」と指摘しつつ、「意外と多いのが、外資系コンサルタントへの支出だ。政府などは自分で調査・研究できるようにすれば、外資系を使わなくてもいい。デジタル庁が作っている“ガバメント(政府)AI”が発展すれば、デジタル赤字も多少改善するだろう」と語る。

 しかし現状では、AWS(Amazon Web Services、Amazonが提供するクラウドサービス)を使用しているといい、「さくらインターネットと国産に向けて頑張っているが、政府のクラウドは安全性重視で、国際基準のISMAPを取らないと導入できない。そのため、安全性が担保できるクラウドは、現状でAWSやGoogleになってしまう」と説明する。

■「レイヤーごとの勝ち負けじゃなくて、縦軸で見るべき」

【写真・画像】 3枚目

 こうした背景がある一方、日本に商機がある分野もあるという。「半導体やクラウド、データセンター、AIの大規模言語モデルなどは厳しいが、その上で動くアプリケーションやコンテンツ、ゲームは強い。畑を借りる“地代”を払っても、その上で付加価値の高いものを作れば、収支は黒字になる。レイヤーごとの勝ち負けじゃなくて、縦軸で見るべきだ」。

 加えて、「ブロックチェーンも日本には大きな会社が少ないが、コンテンツのレイヤーでは、コンテンツ所有者の取り分が増える構造になっている。Web2.0を『縦軸』で見る。もしくはWeb2.0から(ブロックチェーンを活用する)Web3に移行すれば、日本の強みは最大化できる」との見通しを示す。

 政府として一番やってはいけないのは、「無理筋なものを『ここを頑張るんだ』と音頭を取ること」だという。「うまくいったためしがない。諦めてはおらず、勝機があれば応援するが、なかなか……」。

■「アナログの価値を最大化する方向にデジタルを活用すれば、日本は圧倒的に強い」

Apple税、Google税

 デジタル赤字に関係して、スマホソフトウェア競争促進法(スマホ新法)が12月18日に施行される予定だ。スマホアプリ市場の独占を規制する法律で、主にAppleとGoogleを対象に、「他社アプリストアなどへの差別的取り扱いを禁止」「他の課金システム利用の妨害禁止」「OS機能の開放を義務化」「ブラウザを複数表示して利用者が選べるよう義務化」などを盛り込んでいる。

 新法による影響については、「AppleもOpenAIも、オープンではなく、囲い込んでいる。AppleではApp Storeしか使えないが、これを他のアプリストアも使えるようにして、ユーザーが選ぶことで、競争が働くようにする法改正だ。ここで気をつけるべきは、サイバーセキュリティーを守らないといけないこと。信用できるアプリストアしか載せられない立て付けになっていて、広く開放されるわけではない」と話す。

 これによるデジタル赤字への影響としては、「国産アプリのスタートアップ企業が、Appleが手数料を決めるApp Storeにしか載せられない。競争が働けば、手数料が下がる」といった利点を挙げた。

 そして、「強いところを、もっと最大化すればいい」と説く。「日本はアナログが強い。コンテンツや観光、食、伝統文化が強いのに、それをタダや安価で提供している。なんでもデジタル化するのではなく、世界が真似できないアナログの価値を最大化する方向にデジタルを活用すれば、日本は圧倒的に強い」。

(『ABEMA Prime』より)

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