日米関税協議は大筋で決着した。「覚書」が交わされた80兆円の投資は、日本にとってメリットのある内容なのか?日米関税協議に関する大統領令がようやく発出され、一区切りついたことが石破茂総理大臣辞任の要因の1つにもなったという。
日米関税協議に「区切り」
日本時間5日、トランプ大統領は自動車関税の引き下げなどを含む日米関税に関する大統領令に署名し、赤沢亮正経済再生担当大臣はラトニック商務長官と「日米共同文書」に署名した。
ただ、医薬品や半導体分野に関しては大統領令が出ていないため、6日に帰国した赤沢大臣は「決着はついていない」と交渉継続に意欲を示し、午後5時ごろ、総理公邸を訪れて石破総理に報告した。
しかしその後、午後8時半ごろに菅義偉元総理と小泉進次郎農水大臣が石破総理と会談。翌7日、石破総理は辞任を表明。辞任を決断した理由の1つとして日米関税協議に「1つの区切りがついた」ということを挙げていた。
今後トランプ政権と向き合っていくことになるであろう、自民党の次期総裁は誰になるのか。
“ポスト石破”の有力候補とみられているのが5人の面々だ。まず、いち早く出馬を表明したのが、茂木敏充前幹事長だ。去年、決選投票で敗れた高市早苗前経済安保担当大臣は、週内にも出馬表明する方向で調整しているという。
また、林芳正官房長官と小林鷹之元経済安全保障担当大臣は、来週にも出馬表明をする予定だという。
そして、出馬が取りざたされている小泉農水大臣は現在まで態度を明らかにしていない。
自民党は党改革をどう進めるのか。自民党が2日にとりまとめた参院選を総括する報告書に「現金給付などの物価高対策が国民に刺さらなかった」「政治とカネを巡る不祥事により信頼を喪失した」などとあり、「党を一から作り直す覚悟で解党的出直しに取り組む」としている。
約80兆円 対米投資の行方
「覚書」が交わされた80兆円もの対米投資は、どのように進められるのか。関税協議の焦点となっていた自動車関税などがどうなっているか見ていく。
日米関税に関する大統領令では、日本からアメリカに輸出する自動車と自動車部品について、現在、合わせて27.5%かかっている関税を15%に引き下げるとしていて、これは今月16日までに適用されることになった。
また、その他の「相互関税」では、従来15%未満の関税率だった品目は一律15%、従来15%を超える関税率だった品目はその税率を維持するとされた。現在、大部分の品目で従来の関税に15%が上乗せされているが、先月7日までさかのぼって、こちらの税率が適用されることになる。
赤沢大臣の訪米中には、約80兆円の対米投資を巡っても「覚書」が結ばれた。
日米の投資に関する「覚書」では、約80兆円の対米投資を、トランプ大統領の任期が終わる2029年1月19日までに随時実施するとしている。
どういった形で投資先が決まるのか?まず、日本とアメリカのメンバーが参加する「協議委員会」と、アメリカのラトニック商務長官がトップを務めるアメリカの「投資委員会」が投資案件を協議して、「投資委員会」が投資先の「候補」をトランプ大統領に推薦する。
最終的にはトランプ大統領がその候補の中から投資先を選定するという流れになっている。
また、「覚書」には「日米両国の関係法令と矛盾してはならない」とあり、協議委員会の時点で、日本の法令に抵触する案件や日本の利益にならない案件は日本側が拒否して排除できるという。日本がこの「覚書」を誠実に履行している間、アメリカは関税を引き上げないとされているが、その一方で、日本が資金提供を行わない場合は大統領が関税を引き上げられるということも示されている。
日米が合意した約80兆円の対米投資について、その投資先を見ていく。
日米の「覚書」によると、主な投資先は、半導体、医薬品、人工知能=AI、エネルギーなどで、ロイター通信によると、ラトニック商務長官はアラスカ州の新たなパイプライン建設にも充てるとしている。
そして投資先が決まった後、アメリカが案件ごとに事業体を設立し、そこに日本が資金を提供することになる。
その資金については、政府系金融機関である「国際協力銀行(JBIC)」や「日本貿易保険(NEXI)」による出資や融資・融資保証によるもので、なかでも融資や融資保証が大半になるという。
また、そのプロジェクトで生じた利益の配分について、融資などが返済し終わっていない期間は、日本とアメリカで半分ずつとなっているが、利子を含めて完済した後は日本が1割、アメリカが9割になるという。
(「大下容子ワイド!スクランブル」2025年9月10日放送分より)