経済

ABEMA NEWS

2025年9月12日 11:01

外資による買収、そんなにダメ?根強い“外資アレルギー”に専門家が疑問符「日本もUSスチールを買収した。上場企業は覚悟が足りない」「日本の株式市場の3分の1は外国人投資家」

外資による買収、そんなにダメ?根強い“外資アレルギー”に専門家が疑問符「日本もUSスチールを買収した。上場企業は覚悟が足りない」「日本の株式市場の3分の1は外国人投資家」
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 外国企業による日本企業に対する買収提案数が急増している。2024年は193件と、1998年から記録が残るブルームバーグ調査で過去最多だった。しかし2025年は、すでに8月末までで157件と、昨年を上回るペースになっている。

【映像】あの企業も外資に?

 最近では、大手コンビニ「セブン・イレブン」を展開するセブン&アイホールディングスに対し、カナダのコンビニ大手が7兆円規模の買収を提案し、話題になった。7月に提案は撤回されたが、SNS上では外資による買収提案に賛否両論が出ている。

 「日本が培ってきた技術やノウハウが簡単に外国に買われるのは悲しい」といった意見もある中、『ABEMA Prime』では専門家に“外資アレルギー”の原因を聞き、買収によって起こることを整理した。

■進む外国企業の買収、なぜ日本人は嫌いがちに?

外資による買収提案件数

 IBコンサルティング代表の鈴木賢一郎氏は、相次ぐ買収提案について「円安に加え、2023年に経済産業省が公表した“企業買収における行動指針”が背景にある。買収提案が来てもすぐに断るのではなく、取締役会に付議して検討しなければならないという指針が出たのが追い風だ」と説明する。「加えて、取引先同士などが、安定株主対策として株を持ち合う関係性が崩れてきている。そこで『日本企業を買える』と考えた外資の攻勢が強まっている」。

 また、「安全保障上の観点からは、外為法で守ることができるが、買収防止のために発動されたのは1例しかない。上場会社同士が、株の持ち合いで互いに守ってきたのが、日本の実情だった」と振り返る。

 2ちゃんねる創設者のひろゆき氏は、「なぜ買いやすくなることが、悪く言われているのかわからない」と語る。「買われたくなければ上場しなければいい。もしくは、最初から50%以上を取られないように上場すればいい。買収防衛策を講じていればいいだけではないか」。

 これに鈴木氏は「買われたくなければ、きちっと株主構成を整備すればいい話だ。そもそも上場しているのであれば、買収も甘んじて受けなければいけない」と同意する。

 近畿大学情報学研究所所長の夏野剛氏は、「反対している人が勘違いしている点」を示す。「外資が来ればビジネスのあり方が変わる前提で話しているが、日本には1億人以上の人口があり、ビジネスはますます強化する。当たり前だが、買収すれば買収額以上に時価総額を持っていこうとする」。

   ただ、外資による買収後に、退職者を募るケースもある。鈴木氏は「いいリストラもあれば、株主の都合だけを考えたリストラもある。日本の買収防衛策は、時間と情報の確保が主目的だ。買収者の本音や、買収後の経営方針を確認・精査する手続きを踏んだ方が、ステークホルダーには望ましいだろう」と考えている。

 そして、「競争力の強化を考えれば、業種によっては外資を受け入れた方がいい面もある。日本の株式市場は現在、3分の1が外国人投資家だ。投資してもらうと考えれば、歓迎する見方もある」とした。

■上場企業が買収されることの意味

外資買収のメリデメ

 夏野氏は「なぜ日本のテレビメーカーがダメになったか。自分たちで統合しなかったからだ。どの国でも同じ産業には最大3社だが、日本には自動車メーカーが7社ある」と問題点を指摘する。「日本の経営者は極めてレベルが低い。理由は簡単で、1つの会社でしか育っていないから。経験値が低く、買収や経営統合に否定的になる。自分の会社だけで育つと、企業価値はどんどん下がる」。

 ひろゆき氏は「ソニーやキヤノンは、すでに外国人資本比率が50%を超えているが、“外資系”とは言われない。『外資系はマズい』と言っている人は、現実を知らないだけだ。ファンドが株主の場合、ファンドの外資比率までは出ていないため、外資系になる上場企業はもっと多いだろう。結果として『日本はほとんど外資系になったが、何も問題が起きていない』。だから『おばけが怖い』みたいな話だ」と考察する。

 外資による買収の成功例として、「カルロス・ゴーン氏は、借金2兆円の日産自動車を黒字にした。それは日産車をルノーが海外に出し、プロモーションも行い、海外で売れるようになったからだ。しかし、ゴーン氏を追い出し、ルノーの影響もなくなった今、つぶれそうな大赤字だ。外資系を追い出そうと経済産業省が頑張ると、会社がつぶれそうになる。『外資系がいた方がマシだった』と証明されている」と話す。

 今後の情勢はどうなるか。鈴木氏は「ダイナミックなことが起こる」と予想する。「日本製鉄がUSスチールを買収した。バイデン政権で一度断られたが、トランプ政権で買収劇が起きた。その逆も覚悟しないといけないが、日本の上場会社には覚悟が足りない。買収されたくなければ、株価を上げて、防衛策を検討しなければならない」。

 ひろゆき氏は、ひとつの提案をする。「外資に買われるのがよくないと思う日本人は、好きな会社を自分で買えばいい。そうすれば、株主として買収提案に『嫌だ』と言える。もし株価が上がって、利益が出れば、それでいい。だから『日本人は株を買いましょう、もしくは外資に売ってもうけましょう』という話だ」。 (『ABEMA Prime』より)

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