猛暑で秋の味覚に異変が相次いでいます。この時期しか食べられない旬の「戻りガツオ」はどうなのか、水揚げ量1位の街を取材しました。
「戻りガツオ」 水揚げ量1位の街は
16日、都内の海鮮居酒屋に運び込まれたのは…。
嵯峨完さん
「鹿児島産のカツオです」
新鮮なカツオを、定番のタタキで。ランチは食べ放題です。
「(Q.味はどう?)冷えてて柔らかくて」
「柔らかい、とろっとして」
「おいしいしか言えない」
そして、今この時期にだけ食べられるのが戻りガツオ。暖かい海域を好むカツオは、春から初夏にかけ、黒潮に乗って太平洋を上り、北の海でたっぷりと脂をたくわえた後、今度は南下していくため、戻りガツオと言われています。
栄養を蓄えた戻りガツオは、脂がのっていて、濃厚でこってりとした味わいが楽しめるのが特徴です。
しかし、その戻りガツオ、今年はある異変が起きているんです。
16日朝に入ったカツオをさばいてみると…。
「やっぱり脂があんまりのっていない。戻りガツオなら、まっすぐ脂がのる」
白い部分が少なく、戻りガツオとしては脂のりがいまいち…。さらに、入ってくる数も少ないと言います。
「どうも、量が少なくて。気仙沼であまりとれない」
カツオの水揚げ量が28年連続1位の気仙沼。その記録が今、ピンチになっています。
シーズン前半は勝浦港がリードし、夏ごろから気仙沼港が逆転するというのがいつものパターンですが、今年はいまだ勝浦に次ぐ2位となっています。
「例年に比べると少ない。少しカツオの群れが見え出したけど、範囲が狭いので今のところ水揚げは少ない」
逆転に向け、戻りガツオは戻ってきているのか…。16日朝、気仙沼の漁港に行ってみました。朝日に照らされた気仙沼港には、続々とカツオが。
両手にカツオをつかみ、バケツリレーならぬ「カツオリレー」。
そして、レーンをすべって、次々とカゴの中へ。みるみるうちに埋まっていきます。なかにはぷっくりと太った、なかなかのサイズのカツオも。
水揚げ直後に行われる入札に、新鮮で脂ののったカツオを求めて、多くの仲買人が訪れます。
16日入札した、気仙沼の鮮魚店にも…。
小野寺浩之事業部長
「まん丸いの」
「(Q.こんなに大きいカツオ初めて見た)これは特大1号のカツオです。4キロ〜6キロのもの」
例年、大きく脂がのったカツオがとれるこの時期。しかし見た目のにぎわいとは反して、今年はサイズが小さく、水揚げ量も去年と比べて10分の1程度に落ち込んでいます。
「今年ぐらいカツオのサイズがバラバラなのも珍しい。1キロ未満の小さなカツオ=幼魚。異常に今年は多い」
「去年は脂のりのいいカツオがバンバン入った。量もあった。去年から比べたら(戻りガツオは)ゼロに近い感じ」
一体、戻りガツオはどこへ行ったのか…。
専門家に聞くと、脂がのったカツオが食べられる時期が見えてきました。
地元の人も期待をよせる気仙沼の戻りガツオ。飲食店にも、新鮮で旬なカツオを求めて、多くの人が訪れています。
「すごくおいしい。とろけるくらい、おいしい。カツオ独特のクセが全然ない。マグロって言われても分からない」
ただ、その戻りガツオが今年は記録的な不漁に…。
臼井靖参事
「本来であれば北上する時期に、カツオが北上していない」
一体、カツオはどこへ行ったのか。今年はカツオのサイズによって回遊する場所が違っているといいます。専門家は…。
富川なす美副主任研究員
「今年は大きいサイズと小さいサイズ、極端に分かれている。北は非常に小さいもの。(南の)千葉で水揚げされたのは非常に大きいもの。真ん中のサイズがスポッと抜けた」
今年は、去年に比べ暖流の黒潮が北に延びず、大きなカツオが暖かい南の海域にとどまったままに。反対に今北上しているのが、餌(えさ)を求める小さなカツオだけだといいます。
期待が持てるのは、なんと来年…。ただ、地元はまだ望みを捨てていません。
「これからまだ2カ月ありますから。9月、10月、11月の初めまで水揚げはあるので」