記録的な暑さとなった今年の夏。9月に入っても暑い日が続きました。命を守るため、欠かせないのがエアコンですが、環境面であるリスクが…。そこで今注目される“地球にやさしい冷やし方”を取材しました。(9月20日OA「サタデーステーション」)
■脱フロン “地球にやさしい冷やし方”とは
エアコンなどで使われている、人工的な物質「フロン」。熱を運び、空気を冷やしたり暖めたりする「冷媒」として主に使われます。便利な化学物質ですが…こんな一面も。
「非常に温室効果が高いガスですので、エアコンや冷凍冷蔵機器の経年劣化や、廃棄時に適切な回収がされないと大気に放出されてしまう」
適切な管理がされず、フロンが大気中に排出されると、地球温暖化を加速させてしまうのです。かつて広く使われていた「特定フロン」は、太陽からの有害な紫外線を防ぐオゾン層を破壊します。その代わりに普及したのが「代替フロン」です。ただし強力な温室効果があり、国際的に段階的な削減が進められています。そのため、適切な処理が求められ、クリエイトでは、フロンの無害化やリサイクルなどを行っています。東日本を中心に業務用エアコンなどの代替フロンが集まるといいます。
「大体1日に200本くらい。ここにあるのはごく一部です」
日本で大気中に排出された、冷媒の代替フロンの量は2023年でおよそ2850万トン。その中でも、エアコンからの排出量は、業務用と家庭用あわせて7割近くになります。
■巨大球場を冷やす“自然の力” エスコンの裏側潜入
フロンにかわる冷媒はないのでしょうか。注目されているのが、自然の力です。連日熱戦が繰り広げられている話題の場所でも…
報告・若林奈織ディレクター
「こちらの巨大な球場では、冷暖房にある自然の力が使われています」
プロ野球日本ハムの本拠地で、おととしオープンした「エスコンフィールドHOKKAIDO」です。球場の裏側に潜入しました。
球場の冷暖房を担う、空調の機械室です。地下2階、地上6階建てで、およそ3万5千人が入る巨大な球場。球場内のホテルやレストランなども、冷やしたり暖めたりしています。最大の特徴はー
「フロンを使わないで水を自然冷媒として使用している」
水などもともと自然界に存在している物質を使った自然冷媒。フロンよりも環境負荷の少ない冷媒です。
「温暖化の傾向や厳冬期に関しても対応能力はあるような状況になっております」
どうやって、水を、巨大な施設を冷やす力に変えているのでしょうか。
■水を冷やす力にどう変える?世界で広がる“自然冷媒”
番組が訪れたのは、この空調を作っているパナソニック群馬工場。この工場では、水を冷媒に使った空調を年間500台ほど製造・出荷。スポーツ施設のほか病院、オフィスビルなど、全国で1万台以上が使われています。
使用しているのは、不純物を含まない「水」。カギとなるのは、“気化熱”という働きです。水が蒸発するときに周りの熱を奪う現象で、暑い日の打ち水と同じ原理です。この仕組みを使い、気圧を下げた機械の中で水を蒸発させやすくし、パイプを通る水を冷やして、室内に冷たい空気を送っています。
実は、このメーカーで水を冷媒に使った空調が最初に発売されたのは1971年。誕生から50年以上が経ちー
「オゾンホールが見つかって以来、温暖化に対する環境の意識も高まって、自然冷媒、水を使っておりますので。環境負荷というのを気にせずに一般的な廃棄ができるという点も含め だんだん注目されている」
一方で、家庭用への展開にはハードルがあるといいます。
「自然の動作を活用した装置ですので、大きめになりがちなところがあります。小型化させるところが 技術的な課題だと思っています」
水以外の自然冷媒も注目されています。ほかに代表的なのは、アンモニア、空気、二酸化炭素、そしてプロパンなどの炭化水素です。
自然冷媒に詳しい専門家は、日本での普及についてー
「世界的に見ると、環境に厳しいヨーロッパなどはかなりの部分が自然冷媒に転換するという方向を大きく打ち出しているところです。温室効果が非常に低い冷媒なので、今後は自然冷媒に転換していくということが一つのキーになっていくかなと」