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2025年9月25日 02:07

東京23区4カ月連続“1億円超”中古マンション高騰…賃貸物件の家賃にも影響か

東京23区4カ月連続“1億円超”中古マンション高騰…賃貸物件の家賃にも影響か
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不動産調査会社が24日に発表した、東京23区の“中古マンション”の平均価格は1億721万円でした。新築だけでなく中古でも、いわゆる“億ション化”が進んでいます。背景には、投機を目的とした外国人の取引も多いとみられ、自治体は対策に乗り出すなど危機感を募らせています。

東京23区 中古マンション“1億円超”

春には桜の名所としてにぎわう目黒川のほとり。面積は66.18平方メートルの2LDKで納戸付き、築9年の中古マンションです。家族で住むにも良さそうな物件ですが、お値段は。

コスモスイニシア流通事業部 小内るみなさん
コスモスイニシア流通事業部 小内るみなさん
「新築ではなく中古のマンションをリノベーションしたもの。1億7800万円になります。都心の好立地の物件の場合は珍しくない。(新築時の)3倍くらいになっている物件もあります」
東京23区 中古マンション価格

不動産調査会社『東京カンテイ』が発表した東京23区の中古マンションの8月の平均価格は、70平方メートル換算で1億721万円。4カ月連続で1億円を超えています。

コスモスイニシア流通事業部 小内るみなさん
コスモスイニシア流通事業部 小内るみなさん
「新築のマンションが少し高く、予算オーバーになって中古を検討するお客様が非常に増えている」
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「新幹線で90分」愛知にも需要

新築物件

とはいえ、高すぎる都心のマイホーム。そのため、都心から離れた場所の需要も。東京から約300キロ、新幹線も止まる愛知県豊橋駅から徒歩3分の好立地に建設中の新築物件です。価格は3790万〜7780万円(61〜96平方メートル)で、来年9月に完成予定だといいます。その契約者は。

長谷工アーベスト 岩田忠大主任
長谷工アーベスト 岩田忠大主任
「東京在住のお客様で、地元が東海圏。リモートワークが主流になっていた。その理由も重なり、本件の方が広くて安くて首都圏まで90分という理由からご契約に至りました。関東圏からの問い合わせは2割いかないくらい」

東京23区内で話を聞けば、その状況はよりリアルです。

一軒家に住む40代
一軒家に住む40代
「すごい値上がりです。私が買ってから1年で1000万円以上上がってます」
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高騰の背景に“転売”実態は…

この状況を専門家は。

東京カンテイ市場調査部 高橋雅之上席主任研究員
東京カンテイ市場調査部 高橋雅之上席主任研究員(※高=はしごだか)
「実際に住むという方だけではなくて、やはり運用しよう、購入・売却による差益を狙おうという方による購入というのも比較的多くはなってきている」

こうした状況に危機感をあらわにしたのが千代田区でした。

千代田区 樋口高顕区長
千代田区 樋口高顕区長
「投機目的のマンション取引が増えることで、住宅価格が過度に高騰しているのではないかと。住みたいけれども、もう住めなくなってしまってる」
東京・千代田区

千代田区は近年建ったマンションの登記を調査。すると、購入者の7割がそのマンションには住まず、別の場所に住んでいたということです。

千代田区 樋口高顕区長
千代田区 樋口高顕区長
「国内や海外から投機目的での販売・購入が一定数が行われていることもヒアリングから分かりました。衝撃的な数字だったと思います」
不動産協会

区は7月、「投機の抑制のため」として、購入から原則5年間は転売できないとする特約を付けるよう事業者に要請を出しました。これに対して、不動産協会は「価格高騰の大きな要因は建築資材費などの高騰だ」とする一方で「短期の転売ついては好ましくない」と対策を検討しているということです。

10億円以内

なかでも日本の不動産に熱視線を送っているのが中国。中国のSNSで「東京の不動産投資」と検索すると、関連する情報がずらりと出てきます。この中には東京の具体的な地名と共に「10億円以内で買える物件を探している」という書き込みもあります。

都内で中国人を含む外国人に不動産を販売する業者に話を聞くことができました。

外国人向けの不動産業者
外国人向けの不動産業者
「中国人に限らず、世界の投資マネーは日本にどんどん入ってくる。円安だし、投資するには非常にいい環境になっている。(日本は)近いし、文化も近いし、土地も買ったら自分のものになる。福利厚生も良くて安全だし、日本でのビジネス展開もしやすい」

一方で、都内の別の不動産業者は。

中国人向けの不動産業者
中国人向けの不動産業者
「短期的な転売を専門的にやっている不動産業者もいる。南向きのガラス張りの中国人が好みそうな部屋をおさえて、中国人に販売する。同じ業界の人間として良くないと思う」
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“高騰の波”賃貸マンションにも

専門家は、こうした現象は賃貸物件に住む人にも影響すると指摘します。

東京カンテイ市場調査部 高橋雅之上席主任研究員
東京カンテイ市場調査部 高橋雅之上席主任研究員
「これだけ新築・中古マンション価格が上ってくると、買うより賃貸を選ぶ人は一定数出てくる。賃貸物件のオーナーもそれに準じて『賃貸ニーズが高まるのであれば、家賃水準を上げてもいいのでは』と、ここ最近では上げる動きが出ている。物件価格の上昇に遅れて、家賃水準もジワジワと直近にかけて上がっている」

家賃の値上げはすでに。

賃貸マンションに住む40代(東京・墨田区)
賃貸マンションに住む40代(東京・墨田区)
「(金額は)詳しくは言えないが、契約更新の時に周りの相場と比較して値上げすると連絡がきた。これ以上厳しいなと」
賃貸マンションに住む30代(東京・墨田区)
賃貸マンションに住む30代(東京・墨田区)
「住めないなと思います。引っ越しを検討していて。出身が関西なので、もういっそ。東京は考えさせられますね」
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東京23区「異常な高騰」対策は

平均価格の推移

東京23区の中古マンションの平均価格の推移を見ると、数年前から緩やかに上昇してきましたが、ここ1年間で7500万円から1億円を超える水準にまで高騰しています。いったい何が起きているのでしょうか。

東京カンテイ市場調査部 高橋雅之上席主任研究員
東京カンテイ市場調査部 高橋雅之上席主任研究員
「建設コストの高騰と円安のダブルパンチが原因。ウクライナ侵攻後、建築資材費や輸送コストの高騰が加速。さらに、円安で海外投資家にとって日本の不動産が割安に見え、投機目的で購入。そこに国内の富裕層なども参入し、急激な上昇につながっている。新築マンションの高騰が中古マンションに波及し、現在の高値につながっている」

投機目的の売買や価格高騰について、一部の自治体では対策に乗り出しています。

東京・千代田区 神戸市

東京・千代田区ではすでに業界団体に投機目的のマンション取引の制限を要請。5年間転売不可の“特約”をつけたり、同じ物件で、同一名義人の複数所有禁止といったことを要請しています。

神戸市では、投機目的の購入を抑え、マンションを適正に管理するため、空き部屋の所有者への課税などを含めて検討しているということです。

こうした対策で、効果はどれほど見込めるのでしょうか。

東京カンテイ市場調査部 高橋雅之上席主任研究員
東京カンテイ市場調査部 高橋雅之上席主任研究員
「転売禁止の期間設定、“空室税”などの転売規制は一定の効果が見込めるが、自治体ごとに単独で実施する場合、投資ニーズが周辺地区に分散し、全体の転売抑制にはつながりにくい。そのため、国や都などの大きな単位で規制をかける必要がある。現役世代で住まいとして買いたい人にとっては異常な高騰で、抜本的な対策が求められる」
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