街の中に自動で動く未来のモビリティ。トヨタ自動車が富士山の麓に築いた『ウーブン・シティ』で25日、新たな日常を生み出すための様々な実証実験が始まりました。
最新モビリティーは街全体が実験場
“実証実験都市”をイチから丸ごとつくる。壮大な構想が発表されてから5年以上の月日を要しました。それがとうとう。
「皆さん一緒に、笑顔でウーブン・シティのスタートを宣言したいと思います」
富士山のすそ野で始まった、未来への一歩。すでに数世帯の住民が暮らし始めているといいます。一体どういう場所なのでしょうか。
先駆けてオープンしたのは全体の20%以下ですが、完成すれば街の大きさは東京ドーム6個分になるといいます。
一見ただの住宅地のように見えますが、少し見渡すと、次世代の技術をそこら中で目にします。例えば、車の前にあるロボットは。
「後ろのシェアカーの動かし方、加減速、曲がり方、そういったものを“指令”をして、後ろの車はその通りに動く。この自動搬送システムでお客さまにシェアカーを渡して、ウーブン・シティの外に乗って行けるサービスの実証を考えています」
つまり、シェアカーを宅配するロボット。利用後は、車を持ち帰ってくれるといいます。
街ではインフラの実証実験も行うため、信号も特殊です。センサーなどで車の交通量や人流を計測し、それに応じて信号が切り替わるといいます。
道路は、歩道のすぐ隣に小型モビリティ専用、その隣が自動車専用と、それぞれモビリティによって区画が別れています。こうした独自仕様に設計できるのもウーブン・シティならでは。
企業20社と住人も実験に参加
ウーブンとは「織り込まれた」を意味し、機織機から始まったトヨタの歴史に由来しています。この街は人々の暮らし、社会に先進テクノロジーと情報を織り込み、紡ぎ合わせることが最大の目的。開発した技術を、実際に人々が生活している環境で実証実験する場です。そしてその実験はモビリティのみならず、多岐に渡ります。
大手空調機器メーカー『ダイキン工業』が手掛ける部屋では、気流だけでなく、香り・気温・音などをコントロールし、住民がどれだけリラックスできるか、どれだけ集中力を高められるかを実験するものです。
「ジャンク」と大きく書かれたハンバーガー。日清食品が開発した「最適化栄養食」というものです。
「カロリーが抑えられているということですが、普段食べているハンバーガーとあまり変わらない印象で、しっかりとした味付けがついています」
これを食した住民たちからデータを集め、健康寿命の延伸につながるかを調べる実証実験を目指しています。
豊田会長は「かけ算を起こす」
こうした他業種の実験が紡ぎ合うことで、より大きな技術革新につながる。そんな思いを強くしているのが、自身もこの街の“住民になる”予定で、町内会長を自称する豊田会長です。
「ウーブン・シティで起こしていくのは、かけ算です。かけ算は1社だけだと成り立ちません。1をかけても大きくならない。1じゃ駄目なんです。だけど2でいいんです。笑顔になるんです。みんなで笑顔の2をかけてまいりましょう」