経済

グッド!モーニング

2025年9月29日 12:23

「1泊2食付き」なくし「夕食は外で」 栃木・鬼怒川の温泉宿で新たな取り組み

「1泊2食付き」なくし「夕食は外で」 栃木・鬼怒川の温泉宿で新たな取り組み
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 全国各地の温泉宿で1泊2食付きの定番スタイルが今、曲がり角を迎えています。夕食を調理して運ぶ人材の確保が難しいなか、旅館に代わって宿泊客に食事を提供する「泊食分離」のプロジェクトが動き出しました。

「夕食は外で食べて」温泉宿

 栃木県の鬼怒川温泉にある旅館。2016年にリニューアルした渓谷沿いにたたずむ宿です。26日から、ある新しい取り組みを始めました。

七重八重 奥村徳三郎社長
「通常は『1泊2食付き』のプランしかなくて、初めて『1泊夕食なし』というプランを販売しています」
温泉旅館は「1泊2食付き」が定番だが…
温泉旅館は「1泊2食付き」が定番だが…

 温泉旅館といえば「1泊2食付き」が定番ですが、今回「夕食なし」のプランを導入した理由は…。

「夕食はこういう個室のお食事処を用意しています。旅館で一番人手がかかるのが 『料理をつくる』という部分」
「泊食分離」の考え
「泊食分離」の考え

 観光地でも人手不足は深刻になっています。中には夕食担当のスタッフが確保できず、空室があっても予約を断らざるを得ないケースもあるといいます。

 そこで考えたのが、旅館は「泊まる」だけにして「食事」はそれ以外の場所で済ませてもらう「泊食分離」です。

街で使える2000円分食事券付き
街で使える2000円分食事券付き

 この旅館では「夕食なし」プランにすると、宿泊費が2万1000円から1万5000円に安くなるうえ、街で使える2000円分の食事券も付いてきます。

「着くのが遅くなっても、温泉を楽しんで、自分の好きな時間帯に街に出て食事ができる」
近くの飲食店は閉店
近くの飲食店は閉店

 ただ問題は、周囲に夜遅くまでやっている飲食店が少ないことです。

そば店の従業員
「ほとんどもう…昼を過ぎたら閉まっちゃいます」
「(Q.ここは夜はやってない?)やってないです。ホテルに皆さん入っちゃうから、夜は人通りが少ない」
ラーメン店の店主
「せいぜい夕方4時ごろまで。(客が)出てこなければ、人件費も家賃も大変ですから」

 宿泊客の多くがホテルや旅館で夕食をとるため、近くの飲食店は夜の営業をやめたり、閉店したりしていました。

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8000円お得 駅前に臨時夜市

 そこで、鬼怒川温泉が一体となって動き出しています。

駅前広場にキッチンカー
駅前広場にキッチンカー

 東武線の駅前にある広場に続々と入ってきたのは、さまざまな種類のキッチンカーです。栃木県内で営業している人気の店が期間限定で集まりました。声を掛けたのは、旅行会社のJTBです。

JTB宇都宮支店 鹿野英克支店長
「鬼怒川温泉の夜がまだまだ寂しいってことで、1年ぐらい地元の皆さんと議論をしてきて、夜にもっと店が開いていたら人が来るんじゃないかと。『泊食分離』っていうことで『夜は外で食べる』ということを少し定着させて、人手不足の問題(解決)や、夜のにぎわいを創出する」
期間限定の「ナイトマルシェ」開始
期間限定の「ナイトマルシェ」開始

 夕方5時。初日の「ナイトマルシェ」がスタートしました。すると早速、お客さんたちの姿がありました。次から次へと注文が入り、料理を提供していきます。

千葉県からの宿泊客(20代)
「ホテルの近くでやっているというのを知って(来た)」
「いいと思います。“出かける”きっかけになる」
地元から食べに来た人も
地元から食べに来た人も

 中には、地元から食べに来た人もいました。

地元住民(20代)
「こんなに集まると思ってなくて、これだけにぎわっているのはうれしいです」

 このイベントには、鬼怒川の飲食店も参加しています。にぎわっている様子を見て、夜の営業を前向きに考えてもらうのが狙いです。

地元の飲食店
「ホテルから出ない人もいるけど、10人のうち1人とか、夜に屋台があったり、飲み屋があった方が楽しい。泊まった人も地元の人と飲みたい人もいるし、街の雰囲気を味わいたい人もたくさんいると思うので。夜が楽しめれば鬼怒川ももっと勢いがつく」
「夕食なし」にすれば6000円〜8000円安く
「夕食なし」にすれば6000円〜8000円安く

 宿泊客にとっても「夕食なし」にすれば、「1泊2食付き」の時より6000円から8000円ほど安くなり、食事の選択肢も広がります。

「夕食なし」の宿泊客(30代)
「面白いと思う」
「好きな量を好きなもの食べられていい。『お得だな』と思って。2000円のクーポンも付くし、『これでいいじゃん』みたいな」
まずは10日間の期間限定
まずは10日間の期間限定

 まずは10日間の期間限定ですが、何かが変わるきっかけになることが期待されています。

鹿野支店長
「それぞれの皆さんにとって、価値のある取り組み。鬼怒川だけじゃなくて、全国の観光地でも旅館の人手不足という課題に対応できて、外に出て街が活性化する一石二鳥なところもあるので。ここが何か起点になったらいい」

(「グッド!モーニング」2025年9月29日放送分より)

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