経済

ABEMA NEWS

2025年10月26日 11:30

動画素人がAIで映画監督デビュー!わずか3カ月で70分の長編SF大作 驚きのクオリティで映画祭に招待「AIが庶民レベルまで下りてきた」「誰でもクリエイターになれる」

動画素人がAIで映画監督デビュー!わずか3カ月で70分の長編SF大作 驚きのクオリティで映画祭に招待「AIが庶民レベルまで下りてきた」「誰でもクリエイターになれる」
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 11月2、3日に「AI日本国際映画祭」が開催される。日本初となるAI作品の映画祭で、「シネマ」「アニメーション」「エクスペリメンタル」「ドキュメンタリー」の4ジャンルがあり、世界40カ国から約400作品(日本からは約70作品)の応募があった。この中で特別招待上映が決まっているのが、日本人による作品「マチルダ・悪魔の遺伝子」だ。

【映像】全てAIで制作!“動画素人”のSF超大作

 フルAIで70分という長編映画で、監督は遠藤久美子氏。驚くことに遠藤氏は、映像作品を手掛けることすら初めてで、もちろん映画も初監督。さらに「AIのソフトウェアをダウンロードしたのが今年。6月20日から始めて、3カ月ちょっとで完成した」という。加速度的に進化するAIによって、“動画素人”が3カ月で映画監督デビューできる新時代。どんな思いで作品を手掛けたのか、『ABEMA Prime』では遠藤氏本人に話を聞いた。

■素人が3カ月で大作を完成

遠藤久美子氏

 AIを活用して映画監督になった遠藤氏。「マチルダ」は本人とサポートしてくれた男性と2人で手掛けた。「この映画には誰一人、プロは入っていない。私も映像は全く初めてで、もう1人はサラリーマン。普通に1日10時間、会社で勤務した後に作っていた」。加速度的に進化するAIの登場によって、絶好の機会だと挑戦を決意。「(ベースとなる)小説も全く書いたことがなくて、たぶん(学生時代の)反省文以来の長文。伝えたいメッセージは20年ぐらい抱えていたけれど、漫画家でも小説家でもタレントでもない、映画業界にもいない。発信する術を持っていない中、AIが庶民レベルまで下りてきたところで、やっと映像にして表現ができると思った。これを逃したらチャンスはないと思って、命がけでやった」。

 制作費は「中古のフェラーリ1台分。『0』が2つ(万円)ではないくらい」と語るが、 作品の世界観と内容を考えれば、破格に安い。「映画で美術セットを作ろうと思ったら2億円では絶対無理だし『美術にお金がかかる映画だね』と言われるので、10億円から20億円ぐらいあれば、思った通りの美術で描けるかなというくらい」と、数十億円はかかるレベルのものをパソコンだけで作り上げてしまった。

 もちろんAIならではの苦労もある。70分=4200秒の映画だが、最新のAIモデルを使ったとしても、一度に生成できる動画は最長で10秒。その中の5秒が使えるとした場合、840コマの素材が必要となる。指示通りの動画が生まれないケースも多々あったため「1000、2000というコマの動画を作って、いいところだけ貼り付けた」。

 さらにAIは予想外の動きをいくつもする。NG動画には、バイクのような乗り物が逆走したり、タイヤの部分から火を噴いてしまうこともあった。また人間のキャラクターの表情も、本物の人間にはほど遠いものがあると遠藤氏は語る。「大変だったのは『人』。かっこよくはなるけれど、泣いてくれないし、怒ってくれない。『モデル』としてはいいけれど、演技をさせると『大根役者』にしかならない。全然思った通りにならないので、実写で撮りたいと思ったこともあった」。

■AIで作ったからこそわかる人間の価値

映画「マチルダ」

 またAIで作品を作ったからこそ、人間の役者が演じることの重要性も感じた。「AIで70分作ってみて、人が演技をしてくれたらとずっと思っていた。目で訴えるとか、魂の叫びとか、寒気がするような恐怖は、AIには表現ができない。たとえば怖そうにしているシーンでも、その人の奥から本当に滲み出るような恐怖だったり、実は悲しみがあったり。人間の感情は1つじゃない。いろいろな要素が合わさっているから面白い。複雑な感情が目の力に出るようなところは、人の演技の需要が上がると思う」と、AIが進化する中でも、人の演技の価値が高まる可能性を感じ取った。

 出来栄えには「95%」と及第点を出している。「最終的に言いたいことは言い切った。95%ぐらいはいけたと思う。重箱の隅をつつけば、主役が25歳設定なのに、振り向いたら50歳みたいとか、そういうミスはたくさん見つかると思う。ただし、私ともう一人のパートナー、全く映画業界とは関係ない2人だけで、長編映画でメッセージを伝えられたということは、満足感は95%以上」。

 今後、AIに期待すること、見えていることは何か。「AIは、自身の中にあるエネルギーやメッセージ、伝えたいことを最大限にして、人の心を動かすことができる。あくまでツールでしかないけれど、それがプロでなくてもある一定のレベルは、誰でもできるようになった。普通に歩いている人が急にクリエイターになる可能性があるし、役者だった人が映画監督になる。ありとあらゆる才能が爆誕していくのではないか」。 (『ABEMA Prime』より)

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