人口減少問題に対応するため、政府は司令塔となる組織を新設する方針を固めました。
日本の人口減少が危機を迎えています。
世界はどう防いでいるのか、韓国、ハンガリー、アメリカ、ドイツで行われる注目の対策について見ていきます。
■日本の人口減少 官民で新組織 本格対策の狙いは?
まずは、日本の人口減少についてです。
こちらは、総務省が発表した日本の人口と、国立社会保障・人口問題研究所による将来の推計です。
人口は2008年に1億2808万人でピークとなり、その後、減少しています。
2025年は1億2321万人で、2024年と比べ、59万人以上、減少しています。
これは、1年間で鳥取県の人口を超える人数が減少したことになります。
2026年以降も人口が減少し、2070年には8699万人まで減少すると推計されています。
政府は人口減少に対応する組織を新たに作ります。
人口戦略本部という組織です。
人口減少問題に対応する司令塔の機能を持ち、総理をトップとして、閣僚で構成。
府省庁ごとに取り組んでいる政策を総括します。
「人口減少は日本の最大の問題」と発言していました。
民間の組織も新たにできました。
『未来を選択する会議』です。
経済界や労働界の有識者など100人で構成され、人口減少問題について、調査や研究、政府への提言などを行う組織です。
具体的には、研究成果などをまとめた『人口問題白書』を毎年発行します。
若い世代との対話や意識調査、韓国との共同研究などを踏まえて、具体的な政策提言を行います。
「人口減少に対する意識が変化したと感じるこれまでの『少子化を止める』から、『人口減少を前提として、どういう対応策が有効なのか』を見つける動きを官民ともに始めた」
■韓国 手厚い子育て支援も止まらぬ人口減少
各国の対策を見ていきます。
まずは、韓国です。少子化が急加速しています。
出生数は、2000年は約64万人でしたが、2024年は約24万人。62.5%減少しました。
2024年の合計特殊出生率は0.75で、1を下回るのはOECD加盟国で韓国だけです。
韓国政府の子育て支援策です。
子育て支援金は第一子誕生で、約21万円、第二子誕生で、約32万円が支給されます。
育児休業の拡大で両親が同時に育児休業を取ると、6カ月間、通常賃金の100%が支給されます。
中小企業への支援策として、産休、育休を取る従業員の代わりの人材を雇用したら、助成金が企業に出ます。
住宅支援をしている自治体もあります。
仁川市が行っているのは『100 円住宅』という住宅支援です。
マンションの家賃が、1日約106円。1カ月約3180円で住めます。
入居できる優先順位は、
1番が、新生児がいる世帯。
2番が、子どもがいる新婚夫婦。
3番が、子供がいない新婚夫婦。
期限は最長6年です。
少子化に明るい兆しです。
2024年は9年ぶりに前の年の出生数を上回り、8300人、増えました。
「政府政策の効果が一部反映されたと考えられるほか、新型コロナの影響で延期していた婚姻が増加傾向」と分析します。
しかし、出生が増えても、人口は減少しています。
年間の出生数から年間の死者数を引くと、マイナス12万人。
韓国政府の人口予測では、2025年は5168万人。
2072年は3622万人で、人口は約30%減少します。
「子育て支援の効果もあり、団塊ジュニア世代の結婚や30代後半の出産率の上昇で出生数は一時的に増加。しかし、出産可能な年齢の女性は絶対数が減っていくため、人口減少は止まらない」
■ハンガリー『異次元の出産支援』子ども2人で所得税免除
続いて、『異次元の出産支援』を行うハンガリーです。
ハンガリーは人口約960万人、 首都はブダペストです。
ハンガリーは少子化対策に、 国内総生産(GDP)の、約5%を、子どもがいる世帯への税額控除や低金利融資、 無料の体外受精治療などを含む家族形成を奨励する政策に投じています。
2011年から、ハンガリーでは、子どもの数に応じて税控除が受けられる新たな家族税制が導入されました。
2019年には、子どもを4人以上産んだ女性に対し、生涯にわたり所得税が免除されると発表。
2025年4月には、2人以上の子どもを持つ40歳未満の女性に所得税の免除を拡大する法案が可決されました。
出産ローンです。
2019年に、40歳未満の新婚女性に対し、約400万円の一括融資が申請可能となりました。
子どもを3人産めば、返済義務はなくなるというものです。
「これまでに受けた給付金や手当ては少なくとも約1100万円。ものすごく助けになっている」
ハンガリーの合計特殊出生率です。
2011年に、1.23でしたが、2021年に、1.61まで改善、その後、減少しました。
政府は2035年までに人口増加に転じる目安の2.1にすることを目標にしています。
「先進的な支援策で注目を集め、一時的に出生率は増えたが、その後は続かなかった。低出生率の中での経済的支援策には限界があることを証明した」
■人口増加続けるアメリカ カギは『移民』
続いて、人口が増え続けるアメリカについてです。
アメリカの人口推移です。
アメリカは1975年に2億1600万人でしたが、50年間で人口は3億4200万人まで増加。
右肩上がりが続いています。
増加の内訳です。
2023年から2024年の増加は330万人。
そのうちの8割にあたる280万人が移民でした。
アメリカのシンクタンク『外交問題評議会』は、2023年にはアメリカで合計3100万人の移民が働いていて、民間労働力の、約19%を占めたということです。
移民の流入をゼロにした場合、2100年には、2億2600万人程度になるという推計もあります。
■ドイツ 人口減少を前提『都市縮小』で再編成 住民を集約
続いて、ドイツです。
河合さんによると、旧東ドイツは、1989年の『ベルリンの壁』崩壊後、西ドイツへの移住が加速したこと、出生率の低下などで人口が減少しました。
人口の減少によって、創造的縮小政策というものが行われました。
都市が拡大する可能性がなく、縮小しているといった事実を認識し、再編成するというものです。
実例です。
集合住宅の整理・縮小と中心部への集約です。
ドイツが統一される前に建てられた旧市街地周辺の集合住宅の急速な空き家化に伴い、不法侵入や維持管理コストが増えることが懸念され、住民を一部の住宅に集約し、住宅を解体・一部撤去しました。
そして、生まれた空き地を、緑地や広場として再整備したということです。
(「羽鳥慎一モーニングショー」2025年11月17日放送分より)















