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2025年11月17日 18:39

コメ農家も困惑「高すぎ」 在庫山積み、それでも価格高騰 集荷競争の現実

コメ農家も困惑「高すぎ」 在庫山積み、それでも価格高騰 集荷競争の現実
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 スーパーのコメの平均価格は、5キロ4316円で最高値を更新しました。新米が流通した後もなぜコメの価格が上がり続けるのか、コメ農家や卸業者を取材しました。

5キロ5000円超 売れ行きに“変化”

 コメの平均価格は5キロあたり、前の週よりも81円高い4316円で最高値を更新。10週連続で4000円台と高値が続いています。

 都内のスーパーでは、5キロ4000円台のものもありますが、ほとんどのコメが5000円を超えてしまっています。

「全体的な売り上げが良くない」
「全体的な売り上げが良くない」
スーパーマルセイ 牧田公義社長
「これ4キロなんですけれども、5キロですと税込みで5000円超えちゃいますんで。この4キロというのが売れていますね。全体的な売り上げが良くない」

 仕入れを担当する社長は、去年と同じ時期の新米の価格より、3割以上も高くなったと言います。

「仕入れ値で200〜300円上がっている。5キロでですね。なので今は仕入れていない」

 価格が高騰しているため売れ行きが鈍く、仕入れを控えているといいます。

 東京・江東区のコメ店。店頭に新米がずらりと並んでいます。

三河屋精米店 鈴木康夫代表
「(今年の新米は)結構物は良くて、味も良くて、お客様には新米おいしいですよって勧めています。おコメ高いよね、安くなんないのかねっていうのはよく言われますね」
新米の中で最も安い
新米の中で最も安い

 新米の中で最も安いのが、埼玉県産のコシヒカリ5キロで税込み4300円。

「今はもうすべて新米に切り替わったんですけれども、普段だと古米よりも新米がちょっと高い程度で、どんどん新米が出るんですけども。ちょっと普段の年よりは新米の出が鈍いかなという気がします」

 やはりこちらのコメ店でも、価格の高止まりによって、新米の売れ行きは良くないといいます。

 店主の鈴木さんによると、9月ごろから新米を入荷し始めましたが、価格の安い去年収穫されたコメや備蓄米から売れていったといいます。

150人の長い列
150人の長い列

 新米が安く手に入るコメのすくいどりイベントには、150人の長い列ができていました。1回200円で300グラム以上と相場の半額で新米が手に入るとあって大盛り上がり。

コメ約1キロを獲得した親子
「大変助かりますね。少しでも安く手に入れたい」

農家明かすJAvs民間業者

 新米価格の高止まりの原因は一体どこにあるのか。生産者の農家を訪ねてみると…。

にいはりアグリ 滝田賢治さん
「今、主食のおコメが終わって、その後に続いてやっているのが飼料用米の稲を刈っているところです」
今年の主食用の新米はすべて収穫済み
今年の主食用の新米はすべて収穫済み

 飼料用のコメの収穫を見守るのは、茨城県土浦市のコメ農家・滝田さん。今年の主食用の新米はすべて収穫済みということで冷蔵庫を見せてもらうと、積みあがるおよそ300袋のコシヒカリの新米。

 ここに保存されている主食用のコメはすべて売り先が決まっていて、飲食店などに出荷されるといいます。

 JAがコメを集荷する際に、農家に支払う前払い金の「概算金」をまとめたメモを見せてもらうと…。

「2021年が一番安くて、(値段が)徐々に上がってきて24年〜25年にこれだけ高騰した」
「概算金」をまとめたメモ
「概算金」をまとめたメモ

 2021年は60キロあたり9500円と1万円を切っていますが、今年の概算金はおよそ3.7倍となる3万5000円。

「業者さんのほうで(60キロ)3万4000円の値を付けてきたんで。農協(JA)さん3万5000円だった。さらに他の業者さんが3万6000円で買い取りますよっていう話が来て、じゃあ1000円でも高ければ3万6000円の業者さんに流したほうが良かったんじゃないかなと思って流しました」

 JAとその他の業者の集荷競争により、コメの買い取り価格が高騰したといいます。

 滝田さんは去年、収穫したコメの8割をJAに出荷していましたが、今年は逆転し、高く買い取ってくれる集荷業者におよそ8割を出荷しました。

「安かった時代が長く続いた」ため…
「安かった時代が長く続いた」ため…
「よく言われるのが『もうかっていいね』『農家さんもうかっていいね』って。でもやっぱり安かった時代が長く続いた。もうかっているんじゃなくて、それを穴埋めしなくちゃいけない」

 滝田さんは今まで赤字だった部分に、今年の売り上げを充てなければならないといいます。

「生産者と消費者の間で見えない部分があるから、お互い不安なんでしょうね。適正な価格っていうものをちょっと国で提示してもらいたい。基盤的な金額を出してもらいたいなっていうのはありますよね」
エコファーム大谷 大谷広城さん
「こちらはですね、コメを刈った後の乾燥施設になります」

 水戸市でコメ農家を営む大谷さん。

「業者さんも自分のところに(コメが)ほしいので、農協も自分のところに(コメが)ほしいので、いたちごっこになっちゃって、どんどん(概算金が)上がっていっちゃう」
JAとそれ以外の業者の集荷競争
JAとそれ以外の業者の集荷競争

 大谷さんも、JAとそれ以外の業者の集荷競争によってコメの価格が上昇したと話します。当初、JAが提示した概算金は60キロ2万8500円でしたが…。

「(最終JAは)コシヒカリで言うと、ここでは3万3000円。業者さんは平均すると3万3000円〜5000円くらい。売り先は、割合で言ったらJAさんが8割。2割が業者さん」

 最終的に、大谷さんは低い価格を提示したJAに出荷しました。その理由は?

「最終的に全部が売りきれた時に、プラスアルファで(お金が)入ってくる感じ。業者は一回買い取りで終わってしまうので、私はどちらかというとJAのほうが好き」
JA
JA

 JAは集荷の際に前払いの「概算金」を農家に支払いますが、想定よりもコメが高く売れた場合は、農家に追加でお金が支払われます。

 ただ、今までにない価格に大谷さんは困惑しています。

「自分たち農家からみても(コメの値段は)高すぎます。それだけは言いたいかなと思います。消費者の人たちが確かに大変なんで。そこはちゃんと国のほうで、ある程度の安定した金額っていうのを設定するか、そんな感じでやっていかないと。消費者もダメ、生産者もダメになっちゃうんじゃないかなって思う」
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新米の在庫「今後は損しても…」

 では、集荷されたコメは現在、どのような状況になっているのでしょうか。

 集荷と卸を行う岐阜県の業者。倉庫の天井に迫るほど積まれた大量の袋。これらのほとんどが今年の新米。

 また、別の倉庫では…。

集荷と卸を行う岐阜県の業者
集荷と卸を行う岐阜県の業者
ギフライス 恩田喜弘社長
「このように通路までいっぱい玄米を積んでおります」

 本来、機械が奥まで通れるほどの通路ですが、新米を積む場所がなく、仕方なく置いているといいます。

「積み切れないので、通路にも並べて、今、コメを保管している状況です。去年から比べると在庫は1万俵ぐらい増えていると思います。600トンくらいは多い」
6つの倉庫が満杯
6つの倉庫が満杯

 こちらの業者では、この倉庫を含めて全部で6つの倉庫が満杯の状態。去年の同じ時期に比べると、600トンほど売れ残っているといいます。

「売れ行きも悪いし、販売も落ち込んでいますし、今以上消費がなければ、仕入れる量を減らさなきゃいけないなと」

 すでに高額で買い取った新米も、このまま売れ残ってしまう恐れがあり、どこかで損をしてでも販売する可能性があるといいます。

「もう絶対今年は(令和)7年産は残したくないので、差損を出してでも、売っていくしかない」

(「羽鳥慎一 モーニングショー」2025年11月17日放送分より)

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