この時期に旬を迎える北海道のスルメイカ漁で今年の漁獲可能量を超えたとして、小型船による漁の停止を水産庁が命じました。漁師からは困惑の声が上がっています。
豊漁で異変 漁師「モチも食えない」
「もう少しで正月くるのに、モチも食えないんじゃないか」
本来、旬を迎えているはずの北海道のスルメイカ漁。今年は豊漁だったにもかかわらず、突然の休漁。港町では…。
川村政人代表取締役
「イカの移動販売で朝『イカ、イカ』っていう感じでマイクを使って言いながら、常連に売っていく」
「(Q.きょうは出られないんですか?)きょうはお休みでした。イカがなかったので。(スルメイカが)とれないって影響ですね」
函館市内でスルメイカの移動販売を行っていた業者は仕入れが減り、ほぼ稼働できず。
鮮魚店の店内にある巨大な水槽には普段およそ300杯のスルメイカが入っていますが、この日は仕入れがなく、空っぽに。
「ちょっと豊漁だなってなってきたんだけど、制限(休漁)かかってしまったので…」
異変が起こっていたのは、スルメイカだけではありません。
井川弘二郎組合長
「100羽くらいかな、あれが団体でバーッて入ってアユを食べちゃったりしちゃう」
アユ釣りの本場では、アユが激減。原因は、川でうごめく“黒い鳥”でした。
スルメイカ 突然の漁停止
日本一の水揚げ量を誇るイカの町、青森県・八戸。今年のイカ漁に、漁業関係者は次のように話しました。
「去年は小型イカ釣りの方があんまり芳しくなかったんですけど、今年に入ってから数量は去年の4倍」
去年のスルメイカの漁獲量は3147トンに対し、今年はこれまで7796トンと、豊漁に。
喜ばしいはずですが、とれすぎて予想外の事態が起きています。
「小型スルメイカ釣り漁業の漁獲量、これが(大臣管理漁獲)可能量というのは、これを超過したためにスルメイカの採捕を停止する命令を本日発出させていただきました」
先月31日、農水省は小型船によるスルメイカ漁を停止。資源管理のため、スルメイカの漁獲可能量は年間で決められていますが、今年初めて、その上限を超えたのです。
イカ料理を出す店は…。
「(Q.イカはお店に入ってくるんですか?)いや、入ってこないね」
いつもより早く漁が終わり、現在はイカが入荷しないことから、イカ料理の提供を中止。
さらに、港からおよそ100メートルのところにある揚げ物店では…。
「本来であれば、早い時間から完売する商品もあるんですけども、漁船員の方がね、岸壁にいませんからね。だから、こうやって商品の方もあまり動かないっていうのが続いてますね」
漁がなくなった影響で売り上げがおよそ2割落ちました。
今回の事態に市場関係者は…。
「安いイカがせっかく並んでいたところで休漁って形になったんで、船も大変だろうけども、水揚げしてもらう市場も大変だし、それに携わる運送やトラックの人たちも豊洲まで運ぶわけですよね。全部業界の人たちの痛手になっていると思いますけどね」
漁師苦悩 最盛期もイカ漁出られず
休漁の影響はさらに北の、北海道の漁師にも及んでいます。
「これからイカ見えてきたなって、そういう時期だったから、それがくじかれたからさ。(これからイカがたくさんとれる)兆しがあったのに、頭たたかれて、出るなって言われて」
函館のイカ釣り漁は、北上するイカをとるため、本州に比べて最盛期が遅く、これからが漁本番という中で突然の休漁に。
「もう少しで正月くるのに、モチも食えないんじゃないか」
この事態は国会でも取り上げられました。
「現行制度は、早くとれる地域が得をして漁期が遅くなってくる地域は損をするというような不公平が生じている。このまま、禁漁が解除されなければ 廃業、そしてまた加工、運送、様々な関連産業すら廃業してしまう」
その後、道内の一部漁港に漁の再開が認められましたが…。
「(Q.きょう水揚げする予定のスルメイカは何キロ?)きょうはね、15〜16キロ」
「(Q.例年と比べてどうですか?)ダメダメ。漁獲枠増やしたのはいいけど、イカいなくなっちまった、ちょうど休んでる時期に」
高級魚フグ 回転ずしに登場!?
冬の海の異変は、スルメイカだけではありません。
福島県相馬市の港で水揚げされていたのは、まるまると太った高級魚・トラフグです。
暖かい海を好むトラフグは、もともと西日本が主な漁場でしたが、6年ほど前から福島県沖でも水揚げされるようになりました。
「型を見ると全然痩せてもいないし、それなりの良いクオリティーのフグ」
魚の資源高騰や不足が問題となるなか、フグの漁獲量は、ここ10年ほど4000トンから6000トン台で安定しています。
漁獲量が安定したことで、高級魚・フグはこんな場所にも…。
「脂がのってておいしい」
「おいしい」
「なかなか(フグを)置いているお店少ないと思うので、食べられていい機会だったなと思います」
「(Q.値段はどう思います?)破格だと思います」
横浜市の回転ずしチェーンでは去年の冬からフグの提供を開始。
北海道産の真フグをあぶってレモンで味わう「真ふぐの炙り」は、旨味が口いっぱいに広がると好評。しかも、1皿374円です。「真ふぐの炙り」は今では1カ月に6000皿以上売り上げる人気商品に成長しました。
「フグは安定的に漁獲量がとれているので、値段も比較的安定して提供できている。(フグは)お客様の中で高いというイメージがあるので、このお値段で食べていただいて『フグってこんなにおいしいんだって』リピートして頼んでいただけるお客様もどんどん増えている」
川魚にも変化 アユ激減
一方、海の魚だけでなく川魚にも変化が起きています。網の中で勢いよく跳ねているのは、大量のアユ。
田中秀一主任研究員
「(今年の遡上(そじょう)は)300万匹を超えまして、一番悪い時は5000匹程度だったので比較すると600倍」
今年の6月、鳥取県の日野川ではアユフィーバー。
アユの豊漁に喜ぶ人たちがいる一方で、異変が起きている場所もありました。
アユ釣りで有名な静岡県狩野川。12月下旬まで子持ちのアユ・落ちアユが釣れるのですが…。
「あれ見てください。ちょうどいっぱい、100羽くらいかな。あれが団体でバーッて入ってアユを食べちゃう」
黒い大型の鳥・カワウがアユを食べつくし激減。
かつて、川に所狭しと並んでいた釣り人はアユが減ったことで、半分以下に減少。これにより、釣り人から得ていた遊漁料も減少しました。
それでも釣り人たちのため、今年もおよそ30万匹の稚魚を放流しましたが…。
稚魚が食べられたことなどによる漁業被害は、年間5000万円にも上るといいます。
なぜカワウが増えた?
影響は、こんな場所にも及んでいます。40年以上前から続く、アユ料理の専門店。
「めちゃめちゃおいしい。卵がたっぷりでさっぱりしてるかなと思うんですけど、コクがすごくありますね。濃厚なうまみが」
「うまみ強いよね」
こちらの店では、提供するアユのほとんどが天然ではなく養殖になってしまいました。
山本久子さん
「一時すごかったよ、天然アユ。当時(約40年前)は1軒で(アユを)50キロぐらい釣ってた」
「(Q.カワウの影響はある?)ちょっとありますね あんまりいない、天然のアユがね」
アユを食いつくすカワウ。なぜ狩野川でカワウが増えてしまったのでしょうか?
「(カワウは)人間に追いまくられて、次のところ次のところってどんどん場所を拡大していったら、その先にはまた新しい餌(えさ)があるんで、またそこで増えちゃってみたいな。色々な複合的な要因で増えていった」
(「羽鳥慎一 モーニングショー」2025年11月26放送分より)























