先月、日本を訪れた外国人観光客の数が389万人を超え、10月としては過去最多を更新しました。こうした外国人観光客の間で今、農園の作業を手伝いながら観光を楽しむというファームステイが人気となっています。
ブドウ狩り ツアー客で大にぎわい
ここまで過去最多ペースの訪日外国人客数。そんな外国人観光客たちの間で人気上昇中なのが、日本のフルーツ狩り。
山梨県笛吹市にある御坂農園では食べ放題のブドウ狩りが行われ、この日はベトナムからのツアー客で大にぎわい。
「オイシイデスネー。アマイ!」
写真を撮影したり、自分でとったブドウを食べたりと、すっかり満喫している様子。
「初めてブドウ狩りをしたけれど面白いし、とったブドウをそのまま食べられて満足よ」
「日本のブドウは大粒で甘くてジューシーだね」
売店でシャインマスカットを試食しているベトナムから来た女性は。
外国人が果物農園でファームステイ
一方、近隣の南アルプス市にある農園では…。
「がんばれ!」
「おいしー」
「すごいおいしいです」
大粒のシャインマスカットが食べ放題。多い時には一日1000人以上が訪れたといいます。
「ブドウ狩りをしたくて、きょう来ました」
「めちゃくちゃおいしかったです」
「めっちゃ甘い」
多くの日本人に混じって、ここにも外国人の姿が見られますが…。
実はこの方々、外国人の観光客ではなく、農園のスタッフ。
農園の作業を手伝いながら、日本に滞在する“ファームステイ”を利用し、一般の観光では味わえない日本の農家体験を楽しんでいます。
取材中、滞在していたのはスペインから来た20代カップルと、アメリカから来た50代女性、シンガポールから来た20代男性の4人。
「普通の観光じゃ物足りないんです。ここでファームステイすることで異なる経験ができ、日本の新たな一面を見ることができるんです」
「普通の観光旅行はつまらない。ただ買い物して、おいしいもの食べて、いわゆる景勝地を見て帰る。現地の日本人ともっと接して、日本をもっと深く知りたい、そういうニーズがあるわけです」
中込農園には1年で3000人もの外国人から応募が殺到。年間200人ほどがファームステイをしています。
この農園では週に4日、一日およそ6時間、住み込みで農作業の手伝いをしてもらい、代わりに宿と食事を農園が提供します。
農作業の始まりは朝8時15分。正午の休憩まで午前中はおよそ4時間手伝います。
「きょうはまずこのエリアの草刈りをやってください。どこからどこまでか細かく伝えします」
「まだ(木が)若いので、草刈り機を使ってもいいですが、近づきすぎないでください」
「ここらへんでストップするように。残りは手で(抜いてください)」
元々、英語教師だった中込さん。コミュニケーションは英語でとります。
この時期の主な作業は、東京ドーム2個分以上およそ10ヘクタールある農地の草刈り。
2週間前、アメリカから来たガブリエルさん(57)。軽トラックの荷台で何をしているのでしょうか?
「新しく(ファームステイに)来た人は小さな部品とかなくしちゃうことがある」
シンガポールから来たばかりのジュンさんにはファームステイの先輩たちが優しくお手伝い。新人のジュンさん、草刈りの感想は?
「慣れないから疲れました。日本の果樹栽培って手間暇をかけるよね」
「私は果物の木が育つ様子やすごく(長く)生えていた草を刈ってだんだん短くなっていくのが好きなんです」
午後は2時間ほど手伝って作業が終わると農園の宿舎へ。宿舎の個室は合わせて6部屋。空いている部屋に、やって来た順に入っていきます。2階の8畳の和室で寝泊まりしているガブリエルさんは…。
そんなガブリエルさんは2人の子どもがいますが、子育てが落ち着き、日本にやって来ました。一体なぜ単なる観光ではなく山梨県でのファームステイに参加したのでしょうか?
新人のジュンさんは…。
「元々、公共の医療機関で働いていたんだけど、次の目標を見つけるために仕事を辞めて来たんだ。30歳になる前に、やりたい生活をしてみようと思ってね」
スペインからやって来たアナさんとファンさん(27)。ファッションデザイナーとグラフィックデザイナーでしたが、2人とも仕事を辞めて来日したといいます。
「寝る場所はあるし、手伝いをした日は食事も出るし、水道代や光熱費、たくさんのお金を節約できるよね。前から日本に興味があって、実際のコミュニティーや文化など全部知りたかったんだ。ここは会社のために働いているって感じじゃないし、小さな村に僕たちが加わったようなところも最高だよね」
宿舎には中込さんが娘の友里ちゃん(1)を連れて遊びに来ることも…。その日あったことなどを話しているうちに一日が終わります。
過去にはマナー違反多発 トラブル防止に事前面談
農作業が休みの日、スペイン人カップルのファンさんとアナさんは、地元の野菜を使った料理が評判の古民家カフェ「ワインとむしパン 月晴れる」へ。
日本の野菜に興味津々の2人は、休みの日には日本各地のおいしい野菜料理を食べ歩きます。
「ここでは1週間に3日休みがあるので、新しい場所や新しい街を旅することができるんです」
「気の向くままに行けば良いんだよ。となり街に行って、何かを発見し、また別の場所で何かを見つけるのが楽しいんです」
このように、農園を拠点として各地を旅できるのもファームステイの魅力の一つ。
農園も訪れた外国人たちもそれぞれメリットがあるファームステイですが、ここまで来るのに苦労もあったといいます。
「以前は大きなマナー違反や頻繁にマナー違反を起こす人が2〜3割くらいいた。(ファームステイに)来て困るような人もかなり入ってきていた」
農園の代表・中込さんによると、過去には日本の文化やマナーを知らないためにトラブルを起こす外国人が少なからずいたといいます。そんなトラブルを避けるために始めたのが、ビデオ通話での事前面談。顔を見ながら話をすることで人柄が分かるといいます。
「ハロー。バスティアンですか?」
「はい、そうです」
「いくつですか?」
「26歳です」
デンマーク出身のバスティアンさんはおよそ2週間のファームステイを希望しました。
「農作業に関して質問があります。草刈り以外はどんなことをするんですか?」
「まちまちだよ。フルーツ農園はシーズンの終わりに差し掛かっている。鳥から農園を守るために通常つけているネットを取るのを手伝ってもらうかも。とにかく今は海外のボランティアが4人いて、みんな良い人だよ」
「そうなんですね。会うのが楽しみです」
ファームステイが決まったバスティアンさん。来る前に、日本の文化やマナーについて学んでおくと良いとアドバイスを受けました。
「彼らの側からすれば、普通の旅行に比べて日本を深く知り、日本人と深く接することができる。さらに旅行の経費、食事面や、ステイ代を節約できる。非常に“ウィンウィン”だと思いますね」
実際に参加している外国人たちはどう思っているのでしょうか?
「このファームステイ体験で私が一番気に入ったのは良い人たちと巡り合えたことです。中込さんとその家族も、他のボランティアの方々も本当に親切で良い人。とても幸運でした」
「まるで日本に家族ができたようです」
「ここに滞在することでいろいろな場所を知ることができますし、この村の一員だと感じることができます」
「この体験をしたらもう日本のどこへ行くのにも怖くありません。ファームステイが終わった後も絶対にここへ戻ってきますよ」
(「羽鳥慎一モーニングショー」2025年11月28日放送分より)






























