インターネット上に無断掲載された漫画の「タダ読み」による被害額が年間で8兆5000億円に上ることが分かった。日本の文化である漫画をどのようにして守るのか、番組では海賊版対策を行う団体を取材した。
海賊版被害額 年間8兆5000億円
「聞いているだけでも本当にビキビキとくるところですが、コンテンツ産業の成長、クリエーターが適正な利益を確保していくためには、海賊版対策は極めて重要な課題」
漫画などの日本のコンテンツを無断掲載している「タダ読み」の被害。自身もゲーム制作会社での勤務経験がある小野田大臣は、強い怒りをあらわにした。
日本の出版社やIT事業者などで構成される電子書籍の民間団体ABJが先月発表した調査によると、その被害額は年間で約8兆5000億円に上るという。
そのABJに実態を聞いた。
「基本的に全世界の人たち、日本も含めて全世界の人たちが読んでいるサイトは、いわゆるオンラインリーディング型サイト、ストリーミング型サイト。 ダウンロードする形じゃなくて、スマホとかタブレットでアクセスすると読めるサイトが主流になっています」
「タダ読み」ができる海賊版サイトは、単純な構造でできており、どんどん増えているという。さらにサイトに海賊版が上がる速度も…。
「日本の正規版の発売直後っていうケースもありますし、場合によっては、紙の雑誌の発売日より前にそういうケースもあります。(早売り店で)買ってそれをスキャンして海外にいるサイト運営者や翻訳チームに流していると推測されます」
その多くは、日本向け、海外向けどちらも中国やベトナム、インドネシアなど日本国外で運営されている。そのため、思うように摘発が進まないのだという。
海賊版サイトによる被害額は無視できないほど大きい。国内最大級の海賊版サイト「漫画村」は2019年に運営者が逮捕されたが…。
「漫画村がひどくアクセスされている最中、漫画村が終わった(閉鎖された)後で、15%ぐらい(売上が回復した)ということがあるので、非常に突出した海賊版サイトが出ると売り上げが15%ぐらい減る」
その後日本国内での海賊版サイトの運営は減ったというが、海外では一向に減らない。海外向けの海賊版が増える要因にはこんな背景もある。
「海外の読者たちは、英語に翻訳されてないからしょうがないから海賊版読んでるんだよと言い訳のように言います。海外に向けて翻訳、特に英語に翻訳する作品をどんどん増やしていかなきゃいけないっていうところは、非常に力を入れなきゃいけない」
英語など外国語版を正規で、日本語版と同じタイミングで出すことで課金モデルをしっかり構築していくことも、海賊版をなくしていくうえで重要だという。
「海賊版対策に特効薬なしで、できることをすべて積み上げる。他の出版社さんと連携したり、IT企業さんと連携したりと、やることをどんどん増やしていくしかない」
海賊版サイト どう取り締まる?
海外に多数あるという日本向けの海賊版サイトだが、閉鎖には多くの労力がかかるという。
2022年に、中国の違法サイト「漫画BANK」が経済産業省が支援する「CODA(コンテンツ海外流通促進機構)」の働きかけで、中国の警察当局によって摘発された。
大手出版社などで構成される団体「ABJ」の試算によると、「漫画バンク」でタダ読みされた被害額は2082億円に相当するということだが、運営者の男に科せられたのは、およそ60万円の罰金だったということだ。
CODAによると、違法サイトの摘発には、海外の裁判所に開示請求を行い、運営者を特定したうえで、現地の捜査当局に摘発を依頼する必要があるという。
ただ、ABJの伊東さんによると、「違法サイトが存在する現地警察に依頼したとしても、日本のために自国の税金や人材を投入することには消極的な場合が多く、協力が得られるケースは少ない」と話していた。
こうした状況に、日本側はどう対策を進めているのだろうか。
海賊版サイトについて伊東さんは「多くの人が閲覧しないことが最大の抑止力になる」と指摘している。正規にネット配信が許可されている漫画サイトには、「ABJマーク」が表示されているということだ。
違法にサイトにアップロードされた漫画と知りながら、反復・継続してダウンロードした場合は、2年以下の拘禁刑または200万円以下の罰金。またはその両方が科せられる。
摘発が難しい違法サイトの横行は、一時的な問題では済まないようだ。
日本漫画家協会の会長で漫画家の、ちばてつやさんは、「『海賊版サイト』の存在には、強い憤りを感じるのです。才能あふれる若い漫画家の皆さんが今、本当に苦しめられています」と、日本の漫画文化の将来への影響にも懸念を示している。
(「大下容子ワイド!スクランブル」2025年12月2日放送分より)











