歯科医院の倒産や廃業などが、過去最多のペースです。
なぜ歯科医院の倒産が相次いでいるのでしょうか。
そして、歯科技工士が減っていて、入れ歯が手に入りにくい問題についてもみていきます。
■歯医者の倒産増加 背景に「高齢化」「供給過多」
歯科医院の倒産・休廃業・解散は、2024年に145件となり、過去最多を更新しました。
倒産や廃業が増えている背景の1つが高齢化です。
経営者の死亡や、高齢化で事業継承が困難となっています。
歯科医師の年代です。
2002年は、60代の歯科医師は8. 1%、70代以上は7. 8%でしたが、2022年には、60代が23. 1%、70代以上が12. 5%で、歯科医師の約35%が60代以上です。
金沢市の歯科医院のケースです。
2024年、理事長が亡くなった後、理事長以外に歯科治療を行う歯科医師が在籍せず、後継者も定まらなかったことから、事業の継続を断念しました。
歯科医の倒産や廃業が増えている背景2つめは、供給過多です。
日本にある歯科医院は、約6万6800施設。
コンビニエンスストアは、約5万5700店舗なので、コンビニよりも歯科医院の方がたくさんあります。
「歯科業界では、人口減少に伴う患者の奪い合いが激化していて、特に高齢の歯科医師が、現代の激しい広告競争に対応しきれていない現状があるのでは」ということです。
こんな影響もあります。
厚生労働省がまとめた虫歯の割合は、8歳の子どもの場合、1993年は91. 1%でしたが、2022年には22. 2%となっていました。
約30年で、虫歯が大幅に減ったことがわかります。
歯磨きの回数も変化しています。
歯磨きしない人は、1969年は8. 1%だったのに比べて、2022年は0. 5%にまで減少しています。
毎日1回みがく人は、62. 8%から18. 2%に、毎日2回以上みがく人は、16. 9%から79. 2%と増えています。
■技工士不足「時給600円」低収入も要因 入れ歯 入手困難に
今、歯科技工士が不足して、入れ歯が入手困難になっています。
日本で入れ歯を利用している人は、
●部分入れ歯が、15歳以上で約2200万人(20. 1%)、
●総入れ歯が、15歳以上で約960万人(8. 7%)です。
日本の15歳以上の人口の4人に1人が、入れ歯を使用していることになります。
年齢別の失っている歯の数です。
平均で、
35歳〜44歳は、0. 6本
45歳〜54歳は、1. 4本
55歳〜64歳は、3. 0本
65歳〜74歳は、6. 0本
75歳〜84歳は、11. 2本
85歳以上は、14. 1本と、
年齢を重ねるにつれて、増えています。
失った歯を補う入れ歯には、『保険診療』のものと『自由診療』のものがあります。
保険診療の入れ歯は、材質が主にプラスチック樹脂(レジン)で、部分入れ歯の場合は約5000円〜1万5000円、総入れ歯の場合は約1万円〜2万円です。
耐久年数は、2〜3年で汚れて、使い方によっては5年ほどで割れることもあります。
自由診療の入れ歯は、材質が特殊なプラスチック樹脂や、チタンなどの金属で、部分入れ歯・総入れ歯ともに約40万円から。
耐久年数は、5年以上となっていますが、種類によって、価格や耐久年数は異なります。
『入れ歯』ができるまでの全工程です。
1、 歯科医院から、患者の口の型やかみ合わせの記録が届きます。
2、届いた口の型を、かみ合わせの記録をもとに再現装置にセット。
3、歯ぐきを再現しながら、人工の歯を並べていきます。
4、ここで一度、歯科医院に送り、患者の口に合うか試します。
5、OKが出たら、ろうで作った義歯をレジンに置き換え研磨。仕上げを行います。
6、最終チェック後、歯科医院へ納品し、1つの『入れ歯』の全工程が終了します。
完成までの期間ですが、保険診療の場合、部分入れ歯の場合は2週間〜1カ月程度、総入れ歯の場合は1カ月〜1カ月半程度かかるということです。
そして、今、“入れ歯不足”の問題が起きています。
実際のケース1つ目、60代の男性です。
使っていた入れ歯が合わなくなり、歯科医師に相談すると、「作り直すと2カ月かかる」と言われたので、そのまま使用しました。
すると、体調が悪化し、『胃潰瘍』を発症してしまいました。
2つ目のケース、70代の女性です。
入れ歯が破損してしまったため、新しく作ろうとしましたが、1カ月半待ち。
かむことができないため、食事の大半が『おかゆ』となり、体重が約10kg減少して、体力も低下しました。
“入れ歯不足”の背景には、作り手の減少があります。
入れ歯や詰め物などを作る歯科技工士が、ピークだった2000年の約3万7000人から、減少傾向が続いています。
『歯科技工士』が減少している理由1つ目は、『歯科技工士』の高齢化です。
深刻な後継者不足の一因にもなっています。
歯科技工士の割合を年代別で見てみると、50代が23. 6%、60歳以上が32. 3%と、50代以上が半数以上です。
さらに、『歯科技工士』の国家試験の合格者数が、2024年度は684人、2015年度から4割減少しています。
『歯科技工士』が減少している理由2つ目は、『長時間労働と低収入』です。
「時給に換算すると、600円くらい」と話している人もいます。
さらに、「もっと安くできる技工士がいる」と歯医者さん側に言われると、技工士側は料金を下げざるを得ない状況になるということです。
■歯科医師へのギモン「良い医者とは?」「なぜ何日も治療?」
街のみなさんの『歯科医師へのギモン』です。
「良い歯科医師の判断方法は?」
「良い歯科医師は、患者の話をよく聞いて、納得のいく説明ができる医師」ということです。
「何度も通院するのが面倒で、1日で治療を完了することはできない?」
「歯の状態によっては、通院する回数や日数が変わってくるので、1日で完了できないことがある」
「歯科医師から自由診療を勧められることがあるが、保険診療ばかり選んでいると、医師は機嫌を損ねない?」
「機嫌を損ねる先生は、まずいないと思う。保険診療が嫌だったら、自由診療のみにしているはず」
(「羽鳥慎一モーニングショー」2025年12月5日放送分より)











