高騰する海苔や乳製品に“代替食材”で挑む企業の最前線。その現場では、意外な原料から生まれた新しい「海苔」や「チーズ」が、次々と試作されています。
ジャガイモのデンプンが“海苔”に!?代替海苔開発
価格高騰している海苔の代替食材を開発したという情報をキャッチしたので、開発者を直撃しました。
「工藤さんが今回代替食品を開発された方なんですか?」
「はい、私が開発しました」
「おおお!」
2021年にカルビーに入社した今年28歳の工藤さん。約2年の歳月をかけて開発した代替食材というのが……。
「こちらになります。代替海苔になります」
「見た目は海苔ですよね!では、頂きます!ん、海苔だ!おいしい!すごくパリパリとしていておいしいです!お味が付いていますね」
「そうですね、今回お出ししたのはダシ醤油の味がしているものになります」
「これは、何からできているんですか?」
「これは、これからできています」
「小麦粉?」
「これはジャガイモのデンプンです」
「ええ!デンプン!?」
「実は、カルビーの商品を作る時にジャガイモのデンプンというのは、ジャガイモを洗う時に出てくる、それがこのジャガイモのデンプンになっています」
カルビーといえばポテトチップス。洗浄の際に出るデンプンは、いわば廃棄物です。工藤さんは、動物が食べる飼料として活用されるだけだったこのジャガイモのデンプンで、ここ数年高騰が続く海苔が作れるのでは、と考えました。
「これを作るためにはジャガイモのデンプンでなくてはいけなかったんですか?」
「ジャガイモのデンプンというのはオブラートを作る時にも使われている原料なので、シート状になる特性を強く持っている原料です」
シート状にする技術まではすでにありましたが、オブラートと海苔では食感に大きな違いがあります。そこで、工藤さんが発見したのは、とても身近な材料でした。
「ここで私が注目したのが、コンニャク粉でして、コンニャクの持っている成分が海苔と近い部分がありますので、これを入れることによって海苔に近い骨格を作れるという商品にしております。このデンプンに植物由来の色素で緑や黒の色を付けてカルビー独自製法で薄く焼き上げることでこの商品ができあがる」
ジャガイモのデンプン、コンニャク粉、植物由来の色素など、これらの材料でできた試作品を披露すると、試作品を口にした社長は「これ、海苔じゃん!」と驚き、3年目での企画採用となりました。
そもそも、代替海苔を作るきっかけは何だったのでしょうか。
「実は、入社する前から海苔というものは少し値段が高いところがあるなというのは思っておりました。それが入社3年目あたりでは、かなりニュースでも取り上げられるほどに高騰していましたので、そこで改めて考えなおすようになりました」
全国漁連のり事業推進協議会によると、漁連や漁協が販売する海苔1枚あたりの平均単価が、2020年度には10.48円だったところ、去年度は24.13円と2倍以上も高騰しました。
工藤さんが開発した代替海苔は、現状は手作業が多くコストがかかってしまうため、こうした課題をクリアしたいと意気込みます。
「ゆくゆくは海苔そのものと同じようなおいしさを持っていて、海苔よりも安い、そういった商品を大量に作ることができたら良いなと思っています」
大豆から“チーズのコク”を?植物性チーズの正体
続いては、高騰する乳製品の代替品です。向かったのは、以前、チョコレート代替品を見せてくれた不二製油です。なんと、これもまた高騰する食材、チーズを代替材料から作り出してしまったというんです。
「今度はチーズですか?」
「弊社が開発した植物性のチーズになっております。ご試食の程、お願い致します」
「植物性のチーズ!いただきます。おいしいです!もっちり感もありますし、チーズじゃないのに、チーズならではコクのようなものも感じられて。本当にコレ、チーズじゃないんですか?」
「チーズではないんです。乳製品は使っておりません」
代替チーズ、一体何から作られているのか気になりますよね。その正体は、アレから作れるの!と驚く食材だったんです。
「実際に、どんなものからできているんですか?」
「こちらからできております」
「豆ですか?」
「そうですね、大豆になります」
「大豆からできているんですか!」
「こちらからできておりまして、大豆から作った豆乳になっております」
「これ、豆乳なんですね?」
こちらは不二製油が開発した、大豆から低脂肪豆乳を取り出す技術で作られた豆乳です。
「こちらが発酵するために必要な乳酸菌になっています」
「乳酸菌ですか?」
本来のチーズ作りでは牛乳などに入れて発酵を促す乳酸菌を加え、1日寝かせると……。
「こちらが先ほどの豆乳を一晩寝かせた後のチーズになっております」
「しっかり固まりましたね!おいしいです、大豆というよりチーズの風味がかなり増していますよね」
「大豆はタンパク質が豊富な植物になっておりまして、乳酸菌で発酵させると、ちょうどいいうま味とかチーズのコクというところを作ってくれるということが分かりまして」
通常のチーズでは牛乳など、動物性のタンパク質を乳酸菌の働きで固めますが、これを植物性である大豆タンパク質で代替してしまおうという狙いです。タンパク質は酸を加えると固まる性質がありますが、大豆に含まれる量は豆の中でもトップクラス。この豊富な量を生かそうと研究を重ねた結果、動物性のチーズとそん色のないものを作り出せたといいます。
パティシエも太鼓判 新スイーツと“豆乳バター”の可能性
この代替チーズ、使い勝手はどうなのでしょうか。実際に活用している神奈川県にある洋菓子店「ラ・ブティック・ドゥ・ユキノシタ・カマクラ」に向かいました。
フランスの名門コンクールで準優勝の経験を持つ佐々木さんが、代替チーズを使って開発したというスイーツがこちらです。
「こちらが代替チーズを使ったベリーマージュになります」
「ベリーマージュですか?あら美しいですね!滑らかで、もっちりとしていますね。チーズの爽やかな風味、コクもありながらベリーがふわっと香るのがとってもおいしいです!」
「ありがとうございます」
「新しい食材は、どんな違いがあるんですか?」
「素材は植物性でできているクリームチーズの代替なので、従来の動物性のクリームチーズのものに比べると、食感ももっちりしますし、クリームチーズの代替というよりも新しいジャンルのチーズというイメージがあったので、そういった食感だとかを求めたお菓子を作る時は使っていきたいなと思っております」
不二製油では豆乳を原料に、もう一つの乳製品の代替品も作りだしました。それが……。
「豆乳の生クリームからバターが作れるんじゃないか、というところで、作ったのが、こちらのバターのタイプになっております。バターは、通常動物性の牛乳の脂肪をもとに作るんですけれども、今回のバターはですね、大豆などの脂に置き換えることによって、作っております」
大豆を原料にしたチーズやバターは、コスト面でもメリットがあります。
「大豆を原料にして作っているものになりますので、通常のチーズやバターと比べると数割ほどは安く作れるものになっている」
「価格が抑えられるのって良いですよね!」
















