現在、農作物被害額が200億円近くになっているのが、野生鳥獣による害獣問題です。その害獣問題が開店のきっかけになったというのが、東京・高田馬場にある「米とサーカス」です。
害獣問題から生まれた「米とサーカス」
「ちょっと、独特な雰囲気がありますね。え!獣出没注意、米とサーカスっていう看板も」
入り口からこわ〜い看板。一体、何のお店なのでしょうか?
「失礼します。こんにちは」
「いらっしゃいませ」
「紀と申します。今日はよろしくお願いします」
「よろしくお願いいたします」
「こちら何のお店なんですか?」
「うちはジビエと、昆虫食とか、変わったものを取り扱っているお店になります」
ジビエとは、狩猟によって捕獲された野生の鳥獣の肉です。そのジビエを、さまざまな料理で提供しているお店なんです。
「もともと鹿肉を社長が食べて、すごくおいしいと感動したんですけど、日本のその駆除された鹿肉はほとんど捨てられちゃっているんですよ」
「へえー」
「それにちょっとショックを受けて」
害獣問題で駆除せざるを得なかった動物を捨てるのではなく、おいしくいただき命を無駄にしないという思いから始めたそうなんです。
「きょうは、どんなものをいただけるんですか?」
「きょうは、この季節おすすめの鍋料理を提供しようと思っております」
「冬にぴったり」
「冬にぴったりです。温まります」
ということで、今回はお店オススメのジビエ鍋をいただいちゃいます。まずは……。
「一番人気の鍋です」
「一番人気。おお、赤身?」
こちらは去年最も話題になったあの動物を食材にした鍋。味噌味ベースの特製だしでいただきます。
「ちなみにアレルギーとかはございますか?」
「食べ物はないです」
「本当ですか。じゃあ、大丈夫です」
「では、お肉。味噌、味噌鍋」
「味噌鍋ですね」
「味噌鍋、いただきます。弾力のあるお肉ですね。臭みとかは全くないですね。 肉の旨味と、この味噌のちょっと、ほんのりとした甘さが合いますね」
「ありがとうございます」
「何肉ですか、これ?」
「こちらは熊肉です」
「熊肉!初めて食べました」
「ありがとうございます」
「おいしい!」
濃厚な旨味の赤身肉と甘みのある脂は体を芯から温めることで、寒〜い冬の熊鍋は大人気。去年は特にクマのニュースが多かったせいか、初めて熊鍋を食べるというお客さんも多かったそうなんです。
「ちょっと驚きました。もうちょっと独特の香りがするのかなと思っていたんですけれど、そういうのは全くなく、ジビエってどんな味なんだろうって、ちょっとドキドキしてる方も、これはおすすめできるかなと思います」
“幻の鳥”クジャクと、命を無駄にしないという発想
お店では熊肉以外にも……。
「それは?」
「シカです。おいしいです、めっちゃ歯応えある」
「何が好きですか?」
「アナグマですかね」
「アナグマ!?」
「まあ獣臭ちょっとしますけど。おいしいです」
他にもイノシシやダチョウ、ワニなど15〜20種類の肉を用意しています。中には、とても貴重な食材もあります。
その貴重な食材を使ったジビエ鍋がこちら。一見、普通の鶏鍋のように見えますが……。食材として入荷されるのは年に数回という幻の食材。きれいな羽が特徴のあの鳥ですよ。
「見た目は鶏肉ですね。普段見ている鶏肉と似てますね。何の鳥ですか?」
「こちらはクジャクのお肉になります」
「クジャク?クジャクって食べられるんですか?」
「はい」
なんとビックリ。鶏肉の正体はクジャクです。主に観賞用として持ち込まれたクジャクが野生化し、農作物に被害を与える問題が起きています。
沖縄県の宮古島や石垣島での被害が多く、2000羽以上生息していると考えられている地域もあるんです。
「宮古島から仕入れているんですか?」
「そうです。今は宮古島から仕入れてますね。結構、クジャクは強い鳥なんですよ。なので天敵がいなくて。宮古島の固有種を食べちゃって」
「食べちゃって?」
「少なくなっている」
「あー、そういうことなんですね」
害獣として扱われ駆除対象になっているクジャクを使った貴重な鍋。ニワトリの肉とは、どんな味の違いがあるんでしょうか?
「全然違う。あっさり上品な味だけれど、ニワトリよりもかみ応えがあって。香りも華やかなですね。見た目通りな気がします。見た目があんなに似ているのに、こんなに味が違うんですか?」
「そうなんですよ」
日本全国で問題になっている害獣。駆除せざるをえない動物たちを食材にすることについて、お店に来ていたお客はどう思っているのか聞いてみると……。
「肉をそのまま捨てちゃうのも、もったいないと思うので。こういうところで、お金を稼いで経済が回ってくれたら、いいのかなと思いますね」
「一番は、おいしいっていうところはありますね。今そういうふうに駆除されたりとかして、捨てるぐらいだったら、こういうふうに料理として提供すればいいんじゃないかなっていうのはあるんですけど」
「食べることで命を無駄にしない」。これも一つの解決方法なのかもしれませんね。ちなみに長年お店で働く石井さんは、お客のこんな発言がうれしかったそうで……。
「食べているっていう実感もあるし、いただきますをちゃんと言えましたと言われることも多いですね」
「あー、確かにそういう変化は」
ジビエ料理がきっかけで命の大切さに改めて気付いてくれることが、やりがいの一つでもあるそうなんです。
名前にクマがつくアライグマと、まだある仰天ジビエ唐揚げ
お店オススメのジビエ鍋、続いては……。脂身が多いのが特徴の肉を使ったこちらの鍋。これも珍しい食材らしいですよ。
「一応、クマです」
「え?別の?」
「そうですね、別のクマ。名前にクマがついている」
クマはクマでも普通のクマとはちょっと違う、珍しいジビエのようですが、早速いただいてみましょう。
「名前にクマがついて、貴重なお肉。では、いただきます。とっても柔らかくておいしいです」
「ありがとうございます」
「へえー、最後にふっと鼻から抜けてくる独特な香りがありますね」
「特に脂身の方がちょっと風味が強い」
「何グマですか?」
「こちらはアライグマ」
「えっ?アライグマ食べられるんですね」
「そうですよ、アライグマも」
農作物や家屋への被害を引き起こすことから「特定外来生物」に指定され、駆除対象になっているアライグマ。肉質は柔らかく、臭みではないジビエ独特の風味を味わえる珍しい食材として、注目が高まっているそうなんです。
「おいしい。脂身が想像よりもちょっとあっさりとした脂で、そんなに見た目よりも気にならないですね。しつこい感じは全くないです」
「シカとかイノシシとかは結構食べてきたけど、新しいジビエにチャレンジしたいって方は、こういうアライグマとか珍しいお肉を食べますね」
「確かにアライグマいただけるってかなり貴重ですよね」
「はい、貴重だと思います」
(2026年1月15日放送分より)














