経済

ABEMA TIMES

2026年1月17日 17:30

ヒトの命を救う「AI医療機器」開発できても…導入できない?背景に“診療報酬制度の壁”

ヒトの命を救う「AI医療機器」開発できても…導入できない?背景に“診療報酬制度の壁”
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 スタンフォード大学が成功した「“AI搭載”網膜インプラントで失った視力が回復」の実験が世界中で話題に。様々な分野で実用化が進むAIは、医療現場でも力を発揮している。

【映像】AIが“早期がん”を発見する様子(実際の映像)

 その波は、日本でもガンの見逃しをゼロに近づける「AI内視鏡」や、数時間の作業を3分に短縮する「AI心電図解析」など、AIが人間を救う時代が到来している。

 そんな中、実は日本は「AI医療機器後進国」。その承認数が圧倒的に少ない。AIを推進している今の日本に何が足りないのか。『ABEMA Prime』では、医療現場でAIを活用している開発医師とともに考えた。

■ がんの見逃しを防ぐ「AI内視鏡」

多田智裕氏

 AI内視鏡「gestroAI」を開発したAIメディカルサービス代表・多田智裕氏。実際の早期胃がんなどの動画データ、約20万本を医療現場から集め、完成させた。がんの疑いがある粘膜の色の違いやわずかな膨らみなどをAIがリアルタイムで検出できるという。

 AI導入の動機について、「消化管のがんは死亡数のトップだが、早期胃がんの診断は非常に難しい。内視鏡検査中に最大20%程度の早期がんが見逃されているという現実がある」からだ。

 実際に導入した医療機関からは「がんの発見率が倍増した」との声が上がっているという。医師の負担についても、多田智裕氏は「専門医が使う限りでは、時間は短くなるし負担もなく使える。人間は一箇所に集中しがちだが、AIがアラートを出すことで他の部位への注意を促す効果もある」と説明した。

 性能評価試験では、AIの精度は人間の専門医を上回り、「内視鏡医が一生かかっても覚えられない膨大なデータを学習している」。

■ 数時間の解析を3分に短縮する「AI心電図」

田村雄一氏

 心臓専門医である田村雄一氏が開発したのは、AIによる心電図解析システム「SmartRobin AI」。開発前の環境について、「研修医の頃から仕組みがほとんど変わっておらず、医師や検査技師が長時間モニターをスクロールして不整脈を探していた」と振り返る。

 また、「長時間見れば見るほど不整脈などの発見頻度は高くなるが、検査時間が長くなればなるほど、医師や検査技師の負担は膨大になる」。

 しかし、AIを活用することで「これまで数時間かかっていた解析がわずか3分で可能になった。見逃しがないように精度を調整しており、人間はAIが提示した結果を確認するだけで済む。これにより、検査技師が他の業務に時間を割けるようになり、病院全体の費用対効果も高まる」という。

■ なぜ日本の医療AI普及は遅れているのか?

なぜ日本の医療AI普及は遅れているのか?

 世界的に見て、日本の医療AI導入は遅れを取っている。その大きな要因として挙げられたのが、日本の「診療報酬制度」だ。多田氏は「日本は保険点数が決まっているため、AI医療機器を導入しても病院が患者からもらえるお金は変わらない。医療機関の9割が赤字と言われる中、導入コストをかける余裕がない」と指摘した。

 田村氏は制度設計の難しさについて、「厚生労働省も承認プロセスには力を入れているが、開発段階で保険診療の見通しが立ちにくい。米国ではマーケットが大きく民間保険も強いため、まずは米国で挑戦しようという流れになりやすい」と述べた。

 AIが普及することで医師の仕事がなくなるのではないかという懸念に対して、多田氏は「最終診断は医師が行う『診断支援』であり、責任の所在は法律上も明確に医師にある」。田村氏も「AIが出したものを正しく判断するのが医師の役割。AIを使えない医師は仕事がなくなるかもしれないが、AIが医師の仕事を奪うわけではない」との見方を示した。

(『ABEMA Prime』より)

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