経済

ABEMA TIMES

2026年2月27日 17:15

80兆円の対米投資 なぜ「人工ダイヤ」が第1弾? 背景に「レアアース」と同じ状況?

80兆円の対米投資 なぜ「人工ダイヤ」が第1弾? 背景に「レアアース」と同じ状況?
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 日本政府がアメリカとの関税交渉において約束した80兆円規模の投資について、その第1弾となる3つのプロジェクトが発表された。天然ガスを使う火力発電所、原油輸出のインフラ整備と並んで選ばれたのが「人工ダイヤモンド」の製造だ。なぜこの分野に巨額の投資が必要なのか、テレビ朝日経済部の平山明秀記者が解説した。

【映像】人工ダイヤの指輪

 今回の対米投資の対象は、宝飾用ではなく工業用の人工ダイヤモンドだ。天然のダイヤは何億年もの年月をかけて作られるが、人工ダイヤはそのプロセスを実験室や工場で再現した物質的には「本物のダイヤ」である。平山記者はその製造環境の1つを「例えるなら、1500度に熱した空き缶の中に炭素を入れ、その上にエッフェル塔を逆さまにして押し当てる」ような高温高圧の状態を無理やり再現するものだと説明した。

 地球上の鉱物の中で最も硬い特性を持つ人工ダイヤは、ハイテク製品の製造に不可欠な存在となっている。砥粒や粉末が半導体ウエハーを磨いたり、スマートフォンの画面を仕上げたりするほか、鉄筋コンクリートやアスファルトの切断、自動車や航空機の高精密な部品加工など、「切る・削る・磨く」という工程で幅広く使われている。業界では「なくなると半導体も自動車も作れない」と言われるほど、世界の産業に不可欠な物質とされている。

 今回のプロジェクトに900億円が投じられる背景には、経済安全保障上の深刻な懸念がある。現在、工業用人工ダイヤの世界生産は、中国が9割以上のシェアを握っており、この実情はレアアースとも重なる。中国政府は昨年10月、人工ダイヤモンドの粉末などを対象にした輸出規制を始めると表明し、業界には「いよいよ来たか」と大きな衝撃が走ったという。その後、実施は1年間停止されている。

 中国製は政府の支援などにより極めて安価だが、日本で製造しようとすると「中国よりも100倍ぐらいコストがかかる」という指摘もある。平山記者は「中国から入ってこなくなると大変なことになる。調達先を分散できるという点でメリットがある」と述べ、日米で協力してサプライチェーンを作り上げることの重要性を強調した。一方で、アメリカから仕入れる際のコストは中国製に比べれば高くなる不安もあり、業界からは政府による補助金などの支援を期待する声も上がっている。

 一方で、人工ダイヤは宝飾用の市場でも広がりを見せている。専門の鑑定士でも肉眼では判別できないレベルまで輝きが増しており、アメリカでは結婚指輪を買うカップルの6割が、天然よりも安価な人工ダイヤを選んでいるという。業界関係者によると、日本でも人工の小売価格はグレードによって天然の10分の1以下に低下している。平山記者は、若い世代を中心に価値観が変化している現状を報告。工業用・宝飾用の両面で市場が拡大している人工ダイヤモンドが、今後の日米関係や産業戦略において重要な鍵を握ると分析した。

(ABEMA/ニュース企画)

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