AI技術の急速な進化によって、真偽不明の情報がネット上で溢れかえっている。「ABEMA Prime」では、情報の正確性を検証する「ファクトチェック」の最前線について議論が行われた。番組には日本ファクトチェックセンター(JFC)編集長・古田大輔氏が出演し、実態と課題、そして未来の展望を探った。
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◆膨大な「AIの汚泥」に立ち向かうファクトチェックの現状

現在、情報の真偽を見極める現場は、生成AIの普及により未曾有の事態に直面している。古田氏は、現代のネット空間を「AIスロップ(AIでできた汚泥)」という言葉を用いて表現した。
「AIは本当に厄介。2022年にウクライナにロシアが侵略した時、ゼレンスキー大統領のディープフェイクがあった。今見たらおもちゃみたいなもので、一瞬でフェイクとわかる。ただ今は、僕らプロが見ても、人間の目ではもう(真偽の)見分けがつかない。AIで作ったディープフェイク画像や動画はとても多い。AI画像が山ほどありすぎて、どれを検証すればいいのかすら、わからないような状態になっている」。
古田氏によれば、こうした状況は子どもたちの環境にも影響を与えており、オーストラリアでは16歳未満のSNS禁止が議論されるほど、ネット空間は「未成年に酒をいっぱい飲ませているような」危険な状態にあるという。
◆判定を下すことの難しさと、絶えないクレーム

ファクトチェックという営みは、単に「正解」を提示するだけではなく、激しい感情のぶつかり合いを伴う。古田氏は、検証結果を公表したあとに寄せられる反応の厳しさを明かした。
「我々はだいたい3年間で1000本のファクトチェックをやってきた。そのうち全てに関して『何か私が言われた』とか、『私が信じてるものに言われた』という人から、クレームが来なかったことはない」。
こうした反発が起きる背景には、受け手の「バイアス」がある。人は自分の価値観に近い情報を、根拠がなくとも正しいと思い込む傾向があり、それをSNSのアルゴリズムが強化している。古田氏は、自らの立ち位置を「まるで口うるさい学級委員みたいに見られる」と語りつつも、ファクトチェックの本質を次のように強調した。
「僕らはもうただ単に、ある情報が拡散していて世の中に影響を持った時、その情報が間違っているのであれば『ここが間違っています』と淡々とやる。単に情報を追加してるだけ。ただし見え方としては、自分が否定されたとか、自分が信じる情報が否定されたみたいに気分を害する人がいるのは間違いない」。
◆ファクトチェックとメディアリテラシー

偽情報がリバイバル(再浮上)し続ける現代において、古田氏は活動の継続性を重視している。一度検証結果を出しておけば、数カ月後に同じデマが流れた際に、別のユーザーが「これは検証済みだ」と拡散を防いでくれる「自浄作用」が生まれるからだ。また、ファクトチェック団体は単なる検証機関に留まらず、メディアリテラシーの教育団体としての役割も強めている。
「自分の価値観に近いと、根拠を見ないうちから『これは正しい』と思ってしまう。しかもソーシャルメディアではアルゴリズムがどんどん強化され、この人はこのタイプの言論が好きだからと、たくさん情報が流れる。それによってその人のバイアスはさらに強化されている」。
このアルゴリズムによる情報の偏りが、単なる意見の相違を超え、「それによって今の分断からさらに対立に深まることが加速している」と危機感を示した。 (『ABEMA Prime』より)